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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

爪事件

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「てっちゃん、てっちゃん、これ、見てくれよ」
同室のひろちゃんが、なんだか心細い声でつぶやく。
指された場所を見ると、なんと爪が勃起していた。
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思い起こせば。2日前の夜、ひろちゃんはお酒で良い気持ちになり、夜中、足を船内の角でぶつけてしまう。
真っ暗だったから、気づかなかったが、部屋に戻ったとき、痛みに我に返った。
足から血が流れている。それもお酒を飲んでいるから止まらない。
あわててティッシュで血をふき、そのまま寝た。
翌朝起きた僕は、トイレのゴミ箱に赤いティッシュを見る。
「ひろちゃん、ひょっとして生理か?」
な~んて馬鹿なことを想いながら、また寝た。
そして今朝の言葉。
「ちょっと、見てくれよ、コレ」
昨日まではテープで縛っておいたけれど、きっと爪の方が剥がれたがっているのだろう。爪は見事90度にそそり立っていた。
「これ、抜いた方が良いですね」
「って、お前、他人事だから言えるけれど、俺、何度かトライしたけれど、あまりの痛さに断念したよ」
「抜きましょうか?」
「いや、いい」
「抜きましょうか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「抜きましょうか?」
「うん、優しくしてね」
患部を見ると、もう下から爪が生えてきている。
勃起した爪を握って抜こうとした瞬間、ひろちゃんからの声。
「まった、まった、まだ気持ちの準備が出来てない」
「・・・・・・・・・・・・・」
「そんな顔で見るなよ」
「だって、あまりに小さいから」
「誰が?」
「あなたが」
「・・・・・・・・・・」
「いきますよ」
「わ、わかった」
ひろちゃんは、親指上の末端神経を押さえ、出来るだけ痛みが走らないように努力していた。こめかみに青白い血管が浮き出ているのを確認してから、えいやっと引っ張った。
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「いだだだだ」
あら、結構肉が付いているのか、爪が剥がれない。
「もう一度行きますよ」
「あが、あが、あが、ぎゃっ」
ひろしの爪は、見事、僕の手の内に転がった。
「あは、あは、あは・・・・」
「ほら、取れましたよ」
「よ、よし、それを粉にして、みんなに売りつけよう。法力が出るって言って」
「いくらで?」
「一袋、一万円」
「前から思ってましたけれど、ほんと人間のカスですね、あなた」
「もっと言って、もっと!」
二人ともその後、吹き出し、爆笑したのは言うまでもない。
                    ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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コメント

こんにちは。
(いつもROM専門ですが)内容のあまりの痛さ(面白さ?)に
ついつい書き込みさせていただきます。
こちらも思わず身を固くしながら読ませていただきました。

しかし、阪根さんとてっちゃんのやりとりは
いつもいつも楽しいですね~(^_^.)
遠い国からの素敵なエントリーも楽しみにしています。
2011-12-26 Mon 08:57 | URL | srx [ 編集 ]
srxさんへ
どうも有難うございます。本当に見事な爪でした。
後日談があって、帰国後ひろちゃんは、抜かれた爪をマジマジと見て、あまりの薄っぺらさにショックを受けたそうです。 お互い、爪に感謝して生きましょうね!
             のむらてつや
2011-12-26 Mon 14:37 | URL | [ 編集 ]

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