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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

まさかの結末

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4頭のトナカイが、岩場から雪原まで降りてきた。
その先には、睡眠中のシロクマが。500、400、300、200mになったところで、シロクマがふっと鼻を上げた。風上のトナカイのにおいを嗅ぎつけたのだろう。
どうやってシロクマはトナカイを襲うのか? アラスカで一度だけトナカイの子供を仕留めたヒグマを見たことがあったが、その時は草むらから一気だった。
さらに距離が縮まってくる。シロクマは忍び足で雪の斜面を登り、待ち構える。
ドクドク。緊張で自分の拍動音が、外側から響いてくる。
距離は10mをきった。
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さぁ、今だ、行けっ!!!
その瞬間、シロクマは急斜面を登り始めた。
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そしてあっという間に、雪の狭間に身をねじ込み、首を伸ばして眼下を見つめた。
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まさか・・・? 
こわい・・・?
やがて、トナカイが通り過ぎると、ホッとしたように斜面を降りてくる。緊張の糸がほどけたのか、足を滑らせて滑落。ヘッドスライディングで転がった。
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一体なんなんだ、このシロクマは。
僕らに見られて恥ずかしかったのかな?
そのまま両足で立ち上がり、頭を雪へ埋めた。
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穴があったら、入りたい・・・。
        ノムラテツヤ拝
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現実という面白さ

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「事実は小説よりも奇なり」。
それは、北極で体験した摩訶不思議な一日だった。
久しぶりに晴れ上がった朝、僕たちを乗せた船は大分南へ下がってきた。
山肌の雪も溶けかかり、そこに一頭のシロクマが出現。北で見ていたものよりも、毛に土が付いているため茶色っぽい。超望遠レンズで拡大すると、顔の周りが血で染まっていた。アザラシでも仕留めたのだろう。
背後には、壮大な山並みが続き、僕が最も好きなシチュエーション。写真は、背景が全てを決める。一頭のシロクマが生きていける、大自然。それらを一枚に封じ込めることが出来た。
そんなシロクマに船内が沸く中、リーダーのウディが「ゾディアックを使って更に近づきます」とアナウンス。エンジン付きボートに乗り込んで、シロクマを追った。
太陽光が雲間から差し込み、毛が黄金色に。
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そして歩みを止めたかと思えば、まさかの正座。そして瞑想するような顔をこちらに向ける。
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これはリアルか? 
あまりの非現実さに、自分のほっぺをつねってみる。そうこうしていると、今度は氷河の年輪が刻まれた下で、それらをじっと見つめる。
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やがて、満腹になったのか、少し疲れたのか、雪の中にどっかりと腰を落ろし眠り始めた。
ここからが見もの。何も知らないトナカイの群れが、その眠るシロクマへ向かって、一直線で歩き始めたのだ。
満腹のシロクマ対トナカイの群れ。まるで小説のワンシーンが、これから繰り広げられようとしている。その結果に、僕は腰を抜かすことになるのだが。
       ノムラテツヤ拝
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極北の力

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北極の海を泳ぐシロクマを見つけた。
器用に頭を持ち上げ、悠々と泳いでいく姿は、まさに動物界のアスリート。歩くのも早ければ、泳ぐのも得意なのだ。
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40分くらい追ったところで、姿を見失う。皆、デッキから夕食へと降りていくが、さらに粘ることにした。
僕は北極に食事にしに来ているわけではない。憧れの彼らと出来るだけ人生の時間を重ねたいと思い、今、ここにいる。
20分ほど経っただろうか・・・。シロクマの研究者BJが、低く通る声で、「見つけた。11時の方向、あの雪の上だ」。
焦点を合わせると、シロクマはローリングしたり、雪をかぶったりしている。長距離遊泳のため、体がほてってクールダウンしているかと思っていたら、どうやら違うらしい。BJ曰く「海の塩が付いたままだと、体が冷えてしまうんだ」。
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お腹、背中、足、腕、そして顔。まるでネコが毛づくろいするように、丁寧に落としていくというのだ。
足を上げたり、ヨガのようなポーズをとったり、雪のボールを持って、顔をゴシゴシと拭いてみたり。それらを見ているだけで、激しく抱きしめたくなってしまう。
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世界126ケ国の自然や動物を撮影してきたが、ここまでユーモアのある愛らしい生き物は、未だかつて会ったことがなかった。
これから命を結ぶその日まで、目を閉じれば、いつでもこのシロクマを感じることが出来る。それは何と豊かなことだろう。
極北(Far North)の旅は、今までの自分を激変させる不思議な力を持っていた。
          ノムラテツヤ拝
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時代のちから

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動物写真の時代が変わった。
北極の旅で、しみじみとそう感じた。
15歳の時、北アルプスの涸沢で見た紅葉の眩しさに心を打たれ、写真というものに興味を覚えた。それから一気にのめり込み、20歳の時、写真家の星野道夫さんと出逢うことで、人生の道が明確に決まった。
「写真で生きていく」。
フィルムの時代は、夜は勿論、朝方、夕方は必ず三脚が必須。ISOが50~100と低感度なので、どうしてもシャッタースピードが遅くなりブレてしまう。
だから、熊の島(カトマイ)で撮影している時も、夕闇が迫る頃には皆、撮影を終えて、夜は寝た。
しかし、デジタルになると、高感度が一気に上がる。フィルム時代では1600が最高だったものが、今は常用で2万。最大では50万まで上げることだって可能だ。となると、真夜中の撮影でも手持ち撮影が可能となり、動物や風景写真で撮れない時間帯はもうない。つまり「写真家は寝るな!」ということ(笑)。
白夜でも曇ると暗くなる。遥か彼方に親子熊の姿が。
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お母さん熊に小熊が2頭。それらをギリギリのシャッタースピードで追う。昔なら絶対に撮れなかった写真が、今は技術の進歩のお陰で追うことが出来るのだ。
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海辺に現れた別の熊は、蒼き棚氷の前に現れては、また霧の中へ去っていく。
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連日連夜のシロクマデー。僕はいつまでもシャッターを切り続けた。
        ノムラテツヤ拝
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セイウチの島

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北極と南極の違い、それは動物相の希薄さだと思う。
南極はあそこに行けばペンギンが見られる、アザラシが寝ていると大体の予想がつくが、北極は動物自体の密度が薄い。何も会えない日が続くなんてのはザラだ。
だからこそ、エクスペディションチームの力が試される。それもリーダーの経験値と先見性が。
セイウチだってそう。
あそこの湾に行けば必ず見られるというものではなく、シロクマ同様に、流氷と共に移動していく。春になると、その氷は一気に溶けて北上したりするから、潮の流れ、気温、風の向きを総動員して想像することになる。
それらが、ピタリと当たった日、僕は100頭ほどのセイウチの群れに囲まれることになる。
海が鏡のように凪ぎ、氷塊が入って来る。その上で休息するセイウチたち。
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彼らは2~3日眠ることもザラで、いつも起きると「ここは何処だ?」とキョロキョロ頭を動かしている。

ひと際大きな雄の前を一群が通り過ぎていく。
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頭が上がったり、下がったり、まるでモグラ叩きのよう。
会いたかったヒゲアザラシも登場。
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オゥッ、オゥッ、オウッ。北極のしじまを破る、セイウチたちの協奏曲に酔いしれた。
               ノムラテツヤ拝
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