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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

邂逅の旅

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衝撃的だった。
ハイダグアイの旅の最終地はクーナ。ここもハイダ族が住んでいた聖地だが、星野さんが亡くなってからも一日、一日、大自然は彼らの祈りと想いを呑み込んでいた。
森に倒れたシダーウッドのトーテムポールに幸運なスプルース(トウヒ)の種子が落ち、まるで根を抱くようにして天へ伸びていた。背後には今にも倒れそうな風食された3本のトーテムポール。今、この瞬間だけを見つめると、風景は止まっているように見えるが、自然は決して留まることがない。少しずつ母胎から養分を吸い、やがてそれを糧に巨木へと成長していくのだ。僕はこの愛の風景を前に、ぼんやりと座り込んでしまった。
すべての生命は流転し、果てのない旅の途上にいる。だからこそ、この地球で生かさせてもらっている間だけは、人生を妥協せず、体と心と魂を大切にして燃焼させ続けないと。
星野さんの亡くなった年齢(43歳)を越えたら、真っ先に憧れのハイダグアイに行く。それは正に愛する師との邂逅の旅だった。
              ノムラテツヤ拝
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ラストカット

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写真家・星野道夫が亡くなったのは1996年8月8日。
今からもう23年も前になる。
最後の遺作となったのが、家庭画報(世界文化社)で連載していたものを纏めた「森と氷河と鯨」だ。
物語は原住民のアサバスカン族やハイダ族の先住民が心にずっと抱いてきた「ワタリガラスの神話」。そこを幹として、枝葉が紡がれる見事な一冊となるはずだった。しかし、想い半ばで師はこの世を旅立ち、残された僕らは未完のままの本を、虚無感に襲われながら何度も読み返した。
編集者からの話によれば、星野さんはこの本を紡ぐにあたって、最後の写真を決めていた。それはハイダグアイ(その頃はクイーンシャーロット島)で撮った豊穣な海。干潮になったときに現れるナマコやヒトデが、まばゆい命の光を放ったカットだった。
絶景温泉に浸かっていると、遥か彼方に見える山並みに胸がざわめいた。あの何度も繰り返し見た、豊饒な海の写真。その背景と妙に似ているのだ。
慌てて服を着替え、一目散で海べりへ下りた。長靴を履いたまま、静かに水面を揺らしていくと、そこには赤や橙色のヒトデ、そして小さな蟹たちが歩き回っている。腰をかがめてファインダーを覗くと、それは星野さんが最後に撮影した写真と重なった。シャッターをきった瞬間、星野さんの存在を目の前に感じた。
「よくここまで来たな!」
あの優しい笑顔に、僕は一瞬で包まれた。
生きる者と死する者、有機物と無機物の差は、一体どこにあるのだろう? 本当は境そのものが無いのかもしれない。すべては見えないだけで、皆が繋がっている。命も、そして想いも・・・。
              ノムラテツヤ拝
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絶景温泉

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ハイダグアイには、海岸に沸く段々の温泉がある。
温度は40度とちょうど良い。水着を着て、、、なんて嫌っ。やっぱりこんな開放的な温泉は素っ裸で感じないと。皆が来る前に、存分にこの絶景風呂を堪能させてもらう。口に含むとしょっぱい。上質なナトリウム塩泉だった。
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「最高だぁ~」と海へ向かって叫ぶと、対岸の山の形に見覚え
が。まさか・・・、ここがあのラストを飾る場所だったなんて。僕はこの地で、師の想いに触れることになる。
           ノムラテツヤ拝
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手釣り

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紺碧の空の下、ハイダグアイ島の最南端で一本釣り。
まずはガイドのブライアンが手釣りの手本を見せ、あっという間に50センチ級のタラを。次は俺とばかりに82歳のジョーが、今度は1m以上のキンムツを釣り上げた。
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これで今晩のメインディッシュは決まり。それにしてもなんて豊穣な海なのだろう。
僕はこの地を訪れるまで、大きな勘違いをしていた。原住民であるハイダ族やアサバスカン族は、どうして辺鄙な南東アラスカから西部カナダの島々に定住したのだろうかと。
でも、来てみたから分かることがある。ここは辺鄙ではなく、特別に豊かな海。つまり彼らは、最高の聖地に住むエリート集団だったのだ。
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最後の晩餐も話題が尽きることなく、皆でワイワイと楽しく命を頂いた。自分の五感で感じないと分からない真実がある。僕はこれからもそれを大切にしながら生きたいと想う。
         ノムラテツヤ拝
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ピエロ

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海のピエロ「パフィン」。和名はツノメドリやエトピリカと呼ばれる。
今日は、この夏一番の快晴となり、鳥たちも太陽光を貪るように浴びている。でも、同時に子育ての季節。親はのんびりとなんてしていられない。
巣から海へ狩りへ出る。そしてシラスのような小さなタラを口に沢山くわえて我が子の元へと運ぶ。
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これだけの海鳥が生きていけるのも、この豊穣な海のお陰。海へ手を入れると、色は黒く、まるでプランクトンのスープだった。
            ノムラテツヤ拝
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