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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

憧れの動物

友人Yくんの所へ車で向かった。
Yくんは、バルディビアのアウストラル大学で獣医学を学んでいる学生さん。
数日前、彼から送られてきた一枚の写真に、一目ぼれしてしまったのだ。
森のキャビンからバルディビアまでは、約3時間ほどのドライブ。ここは以前、テツヤ通信にも書かせてもらった、クンスマンビールを作っている町だ。
パン・アメリカンハイウェイを北上し、お昼前にYくんと学生寮の前で落ち合った。
久々の握手を交わし、さっそく獣医学部の中へお邪魔する。
牛や羊が悠々とあるき、鳥たちが森の中をさえずる。ポプラ並木の長い道もあり、気分は北海道大学だ。「青年よ大志を抱けっ」。
Yくんは、動物病院脇の、真っ白な建物へ入ってゆく。中には、美人のチリ学生と白衣を着た教授、その助手のおばさんがいた。
Yくんがキョロキョロとあたりを見渡し、ほら、と僕に合図する。
棚の中から、何かが動いていた。
えっ、檻の中に保護されているんじゃないんだ・・・・・。
そこには、憧れの動物が、僕をじっと凝視していた。
南米大陸最強の動物のひとつ、ピューマ。
その赤ちゃんが保護されているのだ。
ぬいぐるみのような柔らかそうな産毛に、クリンクリンの瞳。
僕は早速、教授に質問をなげかけてみた。
「普通、ピューマは茶色の瞳だと思いますけれど」
「成獣になるにつれて、茶色に変わるんだよ」
驚きを隠せなかった。なんと目の前にいるピューマの赤ちゃんは、青い瞳なのだ。
Yくんから送られてきた写真に、まずビックリしたのが、ココだった。
赤ちゃんピューマはみんな、青い瞳らしいのだ。
最初は緊張していたピューマ赤ちゃんも、徐々に慣れてきたのが、カメラを構える僕の脇を通り過ぎたり、カメラザックを噛んだり、とやんちゃになってきた。僕はあまりの可愛さに衝動を抑えきれず、背中や尻尾を触ってみた。
なんてきめ細やかな肌触り、そして暖かな体温なんだろう。
美人なチリ学生が、今、このピューマのお母さん代わりをしているようで、やんちゃなピューマは、時折、彼女に甘えていた。
が、先生から肉を与えられ、かぶりつく様は、まさに野生。眼力は一段と強くなった。
写真を何枚か撮らせてもらいながら気づいたのは、瞳の色はブルーというよりもラピスラズリ色。薄い藍色なのだ。
それから、敷地内で治療中のコンドルや、プドゥと呼ばれる鹿も見せてもらった。僕は、それらの動物を間近で見ながら、動物の多様性について考えていた。
「多様なものが、多様なままで生きられる世界」
その美しさから人間とは何かが、浮かび上がってくるのだろう。
この世から一種類でも動物が絶滅すれば、自分たちが誰なのか、という命題の答えをひとつずつ失っていくことになるのだ。
                                 ノムラテツヤ拝

ピューマの住みか(c)

ピューマの赤ちゃん(c)
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モラの季節

森のキャビンから一番近い町・プエルトバラスまでは50キロほどある。
キャビンから6キロほどオフロードを行くと、アスファルトの道へ出て、途中エンセナーダ村を通過し、ジャンキウエ湖畔の道がプエルトバラスまで続く。
夏のある時期から、エンセナーダ村付近の道路脇に、おばちゃんが立ち始める。
来たばかりの頃は、何が何だか不明だったけれど、今ならそれがモラ売りだと分かる。
「モラ」
日本だとブラックベリー、バラ科キイチゴ属にあたる。
それらが、旬の季節を迎えると、一斉に実をつける。毎日取っても、取っても、決して尽きることない無数のモラが、道路脇や森の中で収穫される。その収穫するおばちゃんたちが、バケツ一杯にしたところで道路脇に立ち、観光客や行きかう車に格安で売りつけてゆくのだ。
おばちゃんも無料で摘み、観光客も格安で買える。両方ともハッピーな関係が育まれてゆく。
数日前からおばちゃんが立っているのを横目で見ながら、今日は第一陣のモラ摘みに出かけた。
うちの森にも沢山あるけれど、去年の経験から言えば、実をつけるのは秋になりかけの頃、今は道路脇や日当たりの良い場所のモラが、最初に実をつけているのだ。
ラルンという村へ行く道すがらに、モラのブッシュが沢山ある。うちから車で約10分の距離、強烈な直射日光の下、モラは光り輝いていた。
モラは先端から黒く熟し始めるので、まずはそこに手を差し出す。
心の中で「あなたの生命(いのち)を頂きます。有難うございます」と呟いて、少し実を揺すると、準備の出来たモラは自然に掌に落ちてくる。準備出来ていないモラはしっかり房についたままだ。
無理に摘んだ実は美味しくないから、僕はまた別のモラを触って、揺する。
てのひらに落ちるモラを食べてみると、完熟、味は甘酸っぱい。
揺すり摘んでは食べ、揺すり摘んでは食べ、その繰り返し。
いつのまにか、僕の右手はモラの果汁の紫色に染まっていた。
40分後、バケツ一杯になったところで終了。
まだまだ無尽蔵にあるけれど、また次回。
家に帰ってからは、ブラックベリーのスムージーを飲み、モラのムース作り。
明日の朝は、パンケーキの中に入れてみようかな。
残りは甘くないフレッシュなジャムにして、保存しておこう。
夏から秋にかけて、時間を見つけては、モラ摘みに出かける日々が続きそうだ。
                               ノムラテツヤ拝

モラ摘み(c)

モラの収穫(c)
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手巻納豆

僕の不動の大好物といえば、納豆、うなぎ、甲殻類。
基本的にエビもカニもシャコも甲乙つけがたいので、甲殻類を1つとして括らせてもらう。
その中でも、やはりトップは納豆じゃないかしら?
1月中旬から2月頭までパタゴニアの旅をアテンドさせてもらった時に、参加者の一人からお菓子を頂いた。
う~ん、嬉しいっ! 
チリに長く住んでいると、日本のお菓子は輝いて見えてしまうのだ。
飴の種類の多さ、煎餅のバリエーションの高さ、日本で売られているどのお菓子にも共通しているのが繊細さと上品さを兼ね備えている点だった。
Sさんが手渡してくれた袋には「手巻納豆」と書かれている。
“手巻寿司風に巻いた海苔の中に糸引き納豆とあられをつめた納豆通の逸品です”と説明書きもされている。そして赤く四角い判子で「成城石井特選菓子」と押されていた。成城石井をこよなく愛する僕としては、いやが上にも気分が盛り上がってくる。
ドキドキしながら袋を開けると、やっぱり日本。ひとつひとつの手巻納豆が綺麗に包装されている。この辺りの細やかさは、残念ながら南米には皆無だった。
そして一つを手巻納豆なるものを破ると、黄色い納豆の中にネギまで入れられている。
うぅぅ、涙ぐましい努力に、心が揺さぶられる。
そして一口食べると、僕はベットに倒れこんでしまった。
触感はフリーズドライ製法にしてあるためか、サクサクチョコレートのような感じだけれど、後からしっかり納豆の味が津波のように押し寄せてくるのだ。そして心憎いばかりの海苔の力が、口内襲う。
美味い。
美味すぎる・・・・・
JALの乾燥納豆や、他の納豆のお菓子を、これまで幾度となく試してきた。
けれど、いつも一つの疑問が沸きあがってしまうのだ。
「これだったら、本物の納豆を食べた方が美味しいじゃん」
チリでは、納豆なるものが皆無なので、僕は自分で納豆を作っている。
大豆を圧力鍋で茹でて、納豆菌をかけて、そして40度~42度で温度管理をすること18時間、納豆は健気にも完璧に出来上がる。それらを小分けしアルミホイルで包み、一度冷凍庫にいれる。そうすると翌日には更に味は整い、臭い納豆が出来上がる。
「いつも手元にある納豆を食べた方が、どんな納豆お菓子よりも美味しいのでは?」
けれど、この成城石井特選、手巻納豆は、納豆そのものとは別次元で、納豆の味を作り上げていた。
なんたる豊潤な味、またもうひとつ食べたくなる後味も、素晴らしいの言葉に尽きる。
で、気になる値段をググッて調べたところ、驚くなかれ200g(45本入り)で1460円。
たかっ。
でも、美味しいんだよなぁ~
成城石井で働く友人のMくん、もう少し安くなりませんかねぇ?
もしも、御縁があったら、ぜひとも食べてみて下さい。
まったくもって、衝撃の味でした。
                                  ノムラテツヤ拝

手巻納豆(c)

手巻納豆2(c)

手巻納豆3(c)
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