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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

満月の力

オソルノ山夕照(c)

シーンと静まり返った夜。
オリオン座は北を照らし、南十字星は天上から南を照らす。
空を覆う満天の星々。
星ひとつひとつにも色があり、赤、黄、青、橙色に明滅を繰り返している。
山の端から満月が昇ってきた。
まんまるの、ほんと、どこから見ても、球体の満ちた月。
森は少しずつシルエットになり、オソルノ山は月光に照らされて、ぼんやりと浮かぶ。
この満月は、ほんの少し前は、日本を照らしていた。
そう想うと何だか感謝の気持ちが沸きあがってくる。
日本に朝日が昇ると同時に、僕たちの住むチリへ満月のバトンが渡される。
まわる地球、そして全てを包み込むように、地球の半分を常に照らす月。
太陽とお月さまがちょうど半々に輝く日、それが満月の日なのだ。
満月光(c)

南半球には、南十字星よりも、もっと大きく立派な偽十字星がある。それらはちょうど南十字星に寄り添うようにある。でも、なぜ立派な方が南十字星にならずに、全天88星座の中で最も小さい星座が「南十字星」と命名されたのか?
それは、きっと大昔から、この星が指針となることを人々は知っていたから。
大航海時代、艦長はこの星を頼りに幾度となく正しい方角を教えてもらったのだろう。
僕たち北半球で生まれ育ったものには、やはり北極星・ポラリスが指針となる。
北極星の位置が真北となり、見える角度が観測点の緯度と重なる。
対して南半球には、真南に存在する目立った星はない。
天の南極と呼ばれる場所には闇しかないのだ。
そこでこの天の南極を見つけるために、使われたのが南十字星だった。
まず南十字星は、ベクルックス、アクルックス、ガクルックス、デクルックスの4つの星で構成される。
十字架に見立てると、左がベクルックス、右がデクルックス、上がカクルックス、下がアクルックスとなり、十字の横線よりも縦線の方が長くなる。つまり縦線はカクルックスとアクルックスとなる。その2星の間隔をアクルックスに向けて約4.5倍すると、そこが真南の天の南極となるのだ。
宮沢賢治の銀河鉄道の夜に出てくる有名な石炭袋・コールサック星雲はベクルックスとアクルックスの間に見える。
ただ、これはここ数千年の話。
あと1万年もすれば、北極星は少しずれ、天の北極は、闇にとって代わられるという。
反対に南半球には、指針となる星が、天の南極に定まるのかもしれない。
星はいつも大切なことを教えてくれる。
同じ星空は、一度としてないこと。
そして地球は、宇宙は凄いスピードで廻り、留まることなく巡ってゆくことを。
今、この一瞬に、今日の満月を見られる幸せを想う。
ありがとう。
今日、ここにいさせてもらえて。
目を細めると、満月の光が線となって自分の体へ飛び込んでくる。
月が、生命あるものを照らし、その一つずつに、大切な何かパワーのようなものを残してゆく。
それは細やかな、上質な、深遠な力。
満月が、少しずつ角度を上げてゆく。
星は見えにくくなってくるが、こんなときは満月の光を感じながら瞼を閉じてみよう。
瞼の向こうには、きっと無限の銀河が広がっているから。
                             ノムラテツヤ拝

夜中の競演(c)
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真夏の一日

新緑の森(c)

信じられないくらいの好天が続いている。
パタゴニアの夏が猛威をふるっている。
気温は朝夕10度台だが、昼は30度を超える真夏日になることもしばしば。
「こんなこと、近年にはないよ。少なくとも自分の人生で最も暑い年だと思う」と地元民。
パタゴニアにも、地球温暖化の波が押し寄せてきているのだろうか?
温暖化・・・一人一人が自分の出来ることから取り組んでいかなければならない問題が、着実にヒタヒタと近づきつつある。
こんな暑い日は、やっぱり冷やし中華に限る。中華めんなるものは、チリに皆無なので、生パスタで代用する。普段はアンチ・マヨネーズ&ケチャップ派だけど、やっぱり冷やし中華には、マヨが必要だった。
昔から食べ慣れている味って、本当に味覚を刺激してくれるからタマラナイ。
そして最寄りの町、プエルト・バラスの高校に申請していた撮影許可がおりたので、屋上から絶景の町並みを撮影させてもらう。澄み渡ったある日、右手にカルブコ火山、左手にオソルノ火山が青空バックに悠然と浮かんだ。
そして数日前、パタゴニアの新緑を撮りに、マイカーのアンデス号でカサブランカ火山へ出かけた。
うちの周りには正確に言うと7つの火山がある。そのひとつがカサブランカ火山。意味はカサ(家)、ブランカ(白)だから、日本で言うところの白山にあたるのだろう。
あまりに尖ったプンティアグード山が天を突き、風露(フウロ)の花が風に揺れる。
家からオフロードを20キロ走ってカスカーダ村へ。舗装露を10キロ走り、また未舗装露を40キロゆく、
温泉地で有名なプジェウエに到着。ここからさらに砂利の山道を20キロ上ると、カサブランカ火山直下に出るのだ。火山らしい大きなクレーターをまずは撮影し、新緑に輝く森へファインダーを向ける。
足元には手まりのような花が、線香花火色に彩づいている。
そしてカサブランカ火山の頂上付近まで登ると展望が一気に開ける。
カサブランカ、トルナドール、プンティアグード、オソルノと4つの火山がぐるりと囲んでいた。いつも見慣れているオソルノのすぐ脇にプンティが。こんなに近くに両方の火山が見える場所を僕は知らない。
新鮮な光景に我を忘れ、ひたすら登る。
直射日光が肌を焼き、たちまち黒くなってゆく。
すぐ脇の雪渓で、喉をうるおし、ここぞという場所で腰を下ろす。風が体のまわりをクルクルと周り、今日も優しく包み込んでくれる。まさに至福のときだった。数時間そこにいて、そのまま来た道を戻った。
オソルノとプンティ(c)

そして昨日、新たな事件が2つ起きた。
ひとつはこの夏の暑さのせいか、うちに巣をかけていた雛たちが無事に巣立ったこと。
そしてもうひとつは、初体験だった。
我が家の冷蔵庫は小さいので、外に置いてあるクーラーボックスの中に使わない野菜などを入れておく。
冬は寒かったから問題なかったが、最近の暑さを計算にいれてなかったので、ナスを取り出そうとしたら、なんとアフロになっていた。
昔、電子ジャーに入れたお米が緑色に変色していたのに驚いた事はあったが、まさかナスにこんな見事なアフロなカビが付いてしまうとは。
恐るべき、パタゴニアの夏・・・・・
                                  ノムラテツヤ拝

アフロナスビ(c)
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