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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

風の生まれる場所

ネパール三兄弟(c)

デッキに寝転び、大空を見る。
太陽の光が粒となり、肌の細胞ひとつ一つにじんわりと浸みこんでゆく。
陽光に映し出された影が、デッキ上を揺れ、一陣の風が吹くと、生きもののように森全体が動く。
耳を澄ませると、ミツバチがウルモの花に集まる低音、葉っぱが擦れ合わさる音、そして遠くで風が生まれる波のような音が聞こえてくる。
オソルノ山が雲に隠れ、今日の森の主役は“風”だった。
以前、自分のフォトエッセーの中に『風の生まれる場所』という話を書いた事がある。
以下に添付する。

「風が好きだ」
小さい頃から一番好きなものは、常に「風」だった。
風をきる、というのが何よりも快感なのだ。
風をきり、目を瞑って耳を澄ます。風はまずおでこや鼻に触れ、まぶたやほっぺやくちびるへ流れ、耳や首や髪の毛にからまる。魚が水中を柔らかく泳ぐように、僕も風の中をくぐってゆく。
「風にはきっと色がある」
それは僕にとって、雨上がりの山々に当たる斜光線の色である。包容、荘厳とかそういう言葉のふさわしい色、広くてとらえどころがなく、暖かくて自由な色のような気がする。
雨上がりの斜光線の中でも、とりわけ風と結びついている光景がある。
世界の屋根「ヒマラヤ」を擁する王国、ネパールの小さな村を旅しているときのことだった。
一人の少女が水瓶を持って歩いていた。
「一体どこまで水を汲みにゆくの?」
「あの山の上までよ」
二人で一緒に坂道を登り、三十分で水場へ到着。そこからの絶景に、僕は息を飲まずにはいられなかった。大空には、虹が行ったり来たりしながら大きな丸いアーチを作り上げているのだ。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫(せき、とう、おう、りょく、せい、らん、し)。
昔覚えた虹色の並びかた。
そのくっきりした虹の向こうにまた虹が現れ、さらにその向こうにも。合わせて3本の虹・トリプルレインボーが、まるで二一色の滝のように夕方の空を流れ、緩やかな風が耳元でささやいた。
僕は大自然が醸し出す光景美に思わず見とれながら「ひょっとしたら、ここが風の生まれる場所かもしれないな?」と思っていた。
夜になれば風たちは、虹の中にあるフカフカベットで眠りにつくのだろうか。スースー寝息をたてながら、まるで赤ちゃんがほんわり眠るようにして。
もし次に生まれ変わることが出来るなら、僕はぜひとも「風」になりたい。

パタゴニアに吹く風も、日本を駆ける風も、生けとし生きる“いのち”をまあるく包み込み、今日も真実を囁いている。
                                     ノムラテツヤ拝
サパトデビルヘン(c)
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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