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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

ムーンレインボー

イグアス空撮(c)

レンタカーを飛ばし、ブラジル側へ。
自分で運転しての出国と入国は、比較的スムーズに流れた。
昨夜は完璧な月が出てくれたのに、ムーンレインボーは、方向的に無理だった。月を背にして現れる虹が、アルゼンチン側では、正面にしか出てくれないのだ。
お陰で悪魔ののどぶえと月を入れての撮影は出来るのだけれど。
JALの機内誌的には、満月ツアーだから、虹が現れなくても文でフォローすることが出来るけれど、
それじゃぁ、僕が納得出来なかった。
アルゼンチン側の満月ツアーに行き、確信したことがある。
月の虹が出るのは、絶対にブラジル側だと。
でもブラジル側のイグアスの瀧は、夜の撮影が公には禁止されていた。が、現地の強力なコネクションを使い、ブラジル側の情報を集めることで、それらを崩せるポイントを見つけた。
16時38分に駐車場に入れ、14ドルの国立公園入場料を支払いいざ園内へ入場。アナグマのイラストが描かれたバスで、園内のポイントへ連れて行ってもらう。
ブラジル側の国立公園の閉園は18時までだけどコネを使うことで、それを伸ばしてもらうに成功した。入口から一気に最終地ポルト・カノアまで、鬱蒼と繁った森の中をゆく。
それにしても熱帯の木々って、バリエーションに富んでいると思うのは、僕だけだろうか?似ていても、決して同じ種類の木が続くことは無く、別種で一つの森を作り上げているのだ。
ホテル・ダス・カタラタスのピンクの外壁が見えてきた。いかにも女性が気に入りそうな上品で可愛らしいホテル。お値段は一泊400ドルほどだという。
道路をアナグマが悠々と横断してゆく。バスは止まり、アナグマが茂みへ入ると、また動き出した。ホテルを過ぎてから15分ほどでポルト・カノアへ。そこから山を降りて、ミラドールと呼ばれるブラジル側屈指の展望地へ向かった。
17時過ぎ。
太陽光も角度が25度くらいになり、良い感じ。歩くにしたがって、飛沫がほっぺにひっついてくる。
そして、虹が少しづつ現れてきた。ちょうど太陽を背にして飛沫を見ると半円の虹が。
そしてそこで、更に身を乗り出すと、今度は、自分を中心にして丸い完璧な虹が出来るのだ。
自分の周りにいてくれる愛すべき人、友人、知人、周りの人に見てもらいたい風景がある。
そして本当のことを感じて欲しい。
虹は半円じゃないっていうこと。丸い円だってこと。それも自分を中心に太陽はいつも虹を作ってくれていることを。
360度の虹(c)

幻日現象やハロー現象はじめ、ホースで水遊びした時に出来る虹まで、生活の至るところにレインボーはある。
英語で言うと、Rain とBow の組み合わせ。直訳すると雨の弓。つまりは雨の架け橋となる。
虹は特別なものと言う人がいる。
確かにそう。でもイグアスの虹は、そうで無い事も同時に伝えてくれる。虹は光そのものを、ただ本来の姿で僕たちに見せてくれているのだ。
虹は光。光は七色のプリズムから出来ている。
太陽が沈む頃、赤くなるのは、一番波長の長い赤色が網膜に届くため。反対に天頂の頃の太陽が蒼っぽいのは、青の波長が一番短いため。
本来、光は全て七色の虹なのだ。角度によって、七色のどれかの色が、強くなるだけ。
ただ、それだけなのだ。
そして光はいつも、僕たちの周りを照らしてくれ、包み込んでくれる。
七色の光は、常に僕らを中心に添えて、抱いてくれる。そして虹色のゆりかごに揺られる僕たちは、そこから安心感をもらうのだ。
虹は、さりげなく、優しく諭すように教えてくれた。
18時20分。太陽は20度くらいの位置まで下がってきた。やがて太陽の沈んだ逆側から、満月が登場するだろう。
今日は光の一番強い14夜だ。
空には、雲ひとつなく、満天の星も期待できた。
18時以降は、園内に観光客はいられないので、バスに乗っては、どんどん帰ってゆく。
少しづつ静けさが戻り、瀧の轟音が、お腹の底へ響いてくる。
高くあがる飛沫に夕日があたると、まるで天使が降りてきたみたい。
空にはイワツバメが無数に旋回し、そこへ一匹のタカが舞いこんでくる。
夕日は静かに山の端に沈み、オレンジ色に染まっていた瀧が、緑を少し帯びた白色になる。僕はミラドールで撮影を開始した。
僕の他に一人、アメリカ人女性のカレンも、いた。
僕は轟きの中心にいるようで、体全体が振動していた。
まるで瀧の子宮に入れられた感じ。
19時51分。
夕焼けも終わり、1番星が現れると、瀧も全体的にブルーっぽくなってきた。
遠く南側に、アルゼンチン側のホテル・シェラトンの灯火が。飛沫は昼よりも高く上がり、撮影していると、ビショビショに濡れた。
自分よりもカメラを拭き、撮影が終わったらザックに入れる。その繰り返し。
早く北東の空に、満月が出ないかなぁ。北東部は、丘のような山があるから、今もし出ていても、20度くらいの高さにならないと分からなかった。
20時30分。
撮影していた瀧の上側が少しだけオレンジ色に染まってきた。
きっと月に照らされ始めたのだろう。
光が少しづつ下へ降りてきたちょうどその時、上に伸びる白っぽい光を感じた。
目をこらすと、弓状に光は伸びている。
ついに、ついに、この時がやって来た。
弧を描くような、ムーンレインボーが現れたのだ。ようやく逢えたね。
ムーンレインボー(c)

21時。
虹とガルガンタ・デル・ディアブロが一つの画角に収まりだした。
飛沫が舞う中、何度もシャッターを押した。
胸が高鳴り、自分がまるで心臓になってしまったかのようにドクドクと打つ。
場所を変えると、虹は角度の関係で大きさを変える。
下で、上で、下で、上で。
色々な角度から、様々な月の虹を撮影させてもらった。
月光が背中を照らしてくれると、まるで母の手のような暖かさを感じる。
月が応援してくれているようだった。
有り難い、有り難い。僕は知らぬ間に涙を流しながら撮影していた。
すると、今度は瀧が飛沫で涙を洗い流してくれる。
そのうちに完璧な虹がまあるく現れ、僕は無心でシャッターを押した。
多分、それはイグアスの神様が、押してくれたんだと想う。
僕の能力をはるかに超えた一枚が、カメラに封じ込まれた。
12時から1時まで仮眠をして、また撮影。
朝の3時半まで、瀧の虹の中で、過ごさせてもらった。
4時近くになると、雲が出てきたのと、全体的に明るくなってきたのもあって、虹が薄くなってきた。
僕は、頭を下げて、カメラと三脚をしまい、そこでしばらく瞑想した。
全てのものは大いなる力で繋がっている。
僕も瀧も、そしてあなたも。
僕を通しての瀧は、実はあなたを通しての瀧になる。
その橋渡しの役目を、今、させてもらっているのだ。
満月の中に現れる奇跡の虹、ムーンレインボーは、ただ優しく見守ってくれていた。
アルゼンチンから、皆様が今日も明日も、沢山の幸せに包まれることを想い、念じています。
今日も生かさせてもらい、有難うございます。
感謝、感謝。
                                 ノムラテツヤ拝
ムーンレインボーと悪魔の喉
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イグアスの瀧

JALの取材で、世界三大瀑布の“イグアスの瀧”に来ている。
悪魔の喉笛(c)

北の空に積乱雲が迫り、雷の音がする。
軽い夕立か、それとも本格的に天気が崩れるのか?
空港でレンタカーを借りて、国立公園のオフィスに向かった。
今日の満月ツアーの詳細を聞かせてもらうと、レンジャーは口々に「夜になれば、雲は晴れて、ツアーは出来るわ」と豪語する。
よっし、その気持ちを信じよう。
満月ツアーは3つの時間帯がある。
20時、20時45分、21時30分。ツアーの所要時間は2時間だ。
予約を入れたほうが良いかどうかを尋ねると、今の季節は観光客でいっぱいだから予約は必須。ツアーの最大催行人数は120名だという。
そんなに人は集まるのか? 3年ほど前に、おとう、おかあと参加したときは、ものの15人くらいしかいなかったのに。
あの時との違いは、ツアーの巡る場所だった。おとう、おかあたちの時は、インテリオールと呼ばれる瀧周遊路を巡り、今回は2年前から始まった「悪魔の喉笛」での満月ツアー。
イグアスの瀧屈指のポイント、悪魔の喉笛が月光に照らされる。考えただけでもワクワクしてしまう。プエルト・イグアスの町で宿を探し、木で作られたコテージのような場所を選んだ。
荷物を降ろし、少しゆっくりしてから、国立公園へ電話する。
「今日の満月ツアーは、ありますか?」
答えはイエスだった。
北の空は、すっかり空け、晴れ間が戻ってきた。
東の空には、薄い虹も出ている。
やっぱりさっきの雷は、浄化の雨だったんだ。
夕日が地平線へ沈む頃、反対側から黄色っぽい、大きな満月(13夜)が昇ってきた。
スーパーで買出しし、すぐに、イグアス国立公園へ車を向けた。
出発は21時30分だったけれど、出来るだけ早く満月ツアーに参加したくなったのだ。園内で21時30分発を最初の20時発に変えてもらう。そして、月光照らされる国立公園内へ足を踏み入れた。
月によって作り出される自分の影を見ながら、先をゆくと、緑色の光が目の前を飛んでゆく。
「おぉ~、これってスペイン語でなんて言うんだっけ?」
「ルシエルナガス」と現地民。蛍が、目の前をポーンポーンと明滅しながら、飛んでゆくのだ。
マチュピチュの夜に見た蛍も感動したけれど、イグアスでも見られるとは。
ガイドと共に、トロッコ列車の駅へ歩いてゆく。
公園入口からの参加者は20人くらいだったけれど、駅にはわんさか人がいた。細かく言うと、このツアーは、夕食込みツアーとツアーのみの2パターンがある。
夕食込みのツアーは95ペソ、ツアーのみは50ペソだった。
(レートは1ドル=3.4アルゼンチンペソ)
食事を終わらせて人たちが、駅で待っていたのだ。
まずはレンジャーのガストンからレクチャーを受ける。
イグアス国立公園は72000ヘクタールの大きな公園で、イグアスの瀧の満月ツアーをしているのは、ここだけ。危険なので歩きながらフラッシュをたいて写真を撮らないこと。野生動物たちは寝ているので、静かに見ること。園内は全て禁煙。ツアーの参加者は全部で60人くらいに膨れ上がり、それぞれトロッコ列車へ乗り込んだ。
空には星がまたたき、オリオン座や南十字星が、煌めく。
あっ、流れ星だ。トロッコ列車が動き出すと、森の中は蛍の光で溢れた。
竹林を通り、バニラのような甘い香りのする木を越し、揺られること30分。
ガルガンタ デル ディアブロ(悪魔ののどぶえ)駅へ到着し、そこから今度は鉄筋で作られた道を1.1キロほど歩く。月光により、陰影が強くなり、モノトーンの世界。色を持っているのは、黄色い月だけ。瀧に近づくにしたがって、どんどん轟音が響いてくる。そして雲のような飛沫が大量に天へ押し上げられてゆく。
月は前方。頭の中は疑問だらけだった。
「こんな月の位置でどうしてナイトレインボーが出るんだろう?」
虹は自分を通して反対側に出きるもの。
おそるおそるのどぶえの展望台へ行くと、そこには怪しくプラチナ色に光る瀧の流れがあった。爆発的な流れ。が、虹はどこを探してもなかった。
撮影をしながらも、虹を追ったが、ない、ない、ない。
そのうちに戻る時間になってしまった。
後ろ髪引かれる想いで戻ってゆくと、次の20時45分隊が、向こうから歩いてきた。しめたと想い、その隊へ紛れ込む。そして見て戻り、途中でまた次の隊へ紛れ込む。
20時からイグアス国立公園へ入り、出てきたのは夜中の24時だった。
月は刻々と色と高さを変えて、瀧を色づけてゆく。でもやはり虹は出なかった。
おとう、おかあと一緒に行った時は、この場所じゃなかったから何とも言えないけれど、サルト・グランデという所で、ナイトレインボーをみんなで見た。
悪魔の喉笛には出ないのだろうか?
とにもかくにも、まだ初日。
あと数日あるので、レンジャーや旅行社の人たちに聞きながら、満月と虹と瀧を追い求めたい。月光のイグアスは、想像を遥かに超えた美を誇っているのだから。
今日は、午前中はゆっくりして、午後から瀧へ。そして夜は、また満月ツアーへ出かけようと想う。
JALの機内誌の取材でやって来ているけれど、自分の撮りたいものも大切にしないと。
アナグマ(c)

朝はまだ涼しかったけれど、11時の今、プエルトイグアスの町は灼熱になってきた。
直射日光は尋常じゃなく、すぐ黒焦げ・丸焦げになってしまう。
テラスからマンゴーの木が見え、さっき熟したものを拾ってきた。
冷蔵庫でキンキンに冷やして、食べてみようっと。
                                  ノムラテツヤ拝
満月と悪魔の喉笛(c)
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