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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

雲霧林

花(c)

ガイドの名前はジョン。若くてイケメンだ。
予定よりも30分遅れて、現地ツアーが出発。
チャチャポヤスの村を抜けると、すぐにオフロードになり、セハ・デ・セルバと呼ばれる雲霧林(うんむりん)の森が目の前に現れた。霧と雨がまるで生きもののように森の中を縫う、まさに屋久島のような森だ。
雑種の犬が走り回り、アマゾンの人々は畑を耕し、雲が上昇してゆく。雲の切れ間から太陽が顔を出すと、緑がピカピカと光り輝く。
バナナの木の下で羊が飼われ、防風林のためにユーカリの木々が至る場所から伸びている。
それにしても、インカ語(ケチュア語)の響きって、どうしてこうも可愛いらしいんだろう。
マチュピチュ(老いた峰の意)やチャチャポヤス(雲上の人々が住む地)などは勿論、これから向かうクエラップ遺跡もまたイイカンジ。
車はレイバンバ方面に左折し、道は更に悪くなる。断崖絶壁の道をクネクネと下り、右手にチリモヤの木、左手に3mをゆうに超えるアロエベラが自生していた。眼下にはウトゥウバンバ河(綿の河の意)が黄土色の河が流れ、上空を両翼3mのコンドルが優雅に舞う。
車は見晴らし台で止まり、ジョンがマクロと呼ばれる家の地形を説明してれる。断崖の中腹に、円柱状の家が20個も建っているのだ。屋根には草が青々と生え、谷から吹きあがる風が心地よかった。
マクロ(c)

チャチャポヤスから1780m地点まで下がってきた。
ここからクエラップ遺跡までは、ずっと登ってゆくらしい。クエラップ遺跡の標高はジャスト3000mだ。
道脇にはいちごっぽい花や、オレンジの花など、雨季らしく花園と化している。クワを持って子供が2人テクテクと歩き、話を聞くと、これから耕しにいくという。
ここでペルーの地形を少しだけおさらいしておく。
ペルーは日本の3.4倍の面積を持ち、東から西へ移動すると海岸、高原、アンデス山脈、そしてアマゾンと多様な気候が広がっている。海岸部のチクラヨからアンデスを越えて、チャチャポヤスはもうアマゾンの気候。なので、標高が2000mを越えているにも関わらず、植生は正にアマゾンなのだ。
チャチャポヤスから2時間でオールドティンゴの村へ到着。何だかエクアドルの長寿の村“ビルカバンバ”に似ている。胡椒の木も生え、その前を牛が横切ってゆく。
2300m地点。
雲が山肌にへばりついてくる。
落ちたら即死の絶壁を、運転手は器用に上ってゆく。道脇の落石も凄まじい。いつ巻き込まれてもおかしくないが、緊張感が増すよりもワクワク感が勝ってしまう自分がいる。まだ整備されていない原始の道の力強さと荒さが、なんとも魅力的なのだ。
山道(c)

整備され過ぎているよりも、未整備の方に心惹かれる。遺跡ならば、自然が遺跡をのみ込み、元の自然を取り戻してゆく姿に惹かれてしまうのだ。
トーテムポールを例に挙げれば、博物館には運ばず、そのまま、その建てられた祈りの地に、朽ちてゆけば良い。トーテムポールは消えても、そこが聖地なのは変わりようが無いのだから。カナダのクイーンシャーロット島のように、朽ちて、消えゆくものに価値を見出す文化に僕は憧れてしまうのだろう。
1mほどのススキが、逆光の中で輝き、山の斜面の小さな畑では、トウモロコシが作られている。この段々畑こそが、ケチュア語でアンデン、アンデネス。それが転訛して、アンデスになったことはテツヤ通信で何度も書いてきた。アンデスは段々畑が沢山あるということ。つまり、山の斜面を昔からいかに有効活用してきたかという事になる。
畑(チャクラ)の中で、ぽつんぽつんと人が鍬で耕している。自然の中に抱かれるように時間は緩やかに過ぎ、僕の心の奥にある連綿と続く時間感覚が、呼び起こされてゆく。時間に縛られるのではなく、時間と寄り添う生き方を選んでゆきたい。
牛が闊歩し、おばちゃんが追いかけ、鶏が勢いよく走る。
人がいて、家があり、道が続く。ネパールの寒村のようなチャクタマル村に着くと、標高は2500mを指していた。
村の風景(c)

「ここから20キロでクエラップ遺跡だ」とジョンが言う。その言葉につられるように、車のエンジン音も上がる。
家の軒先で、豚が丸焼きにされていた。あぁ~、食べたい、と後ろ髪ひかれながらも、目的地へ。
遠くにライオンキングの映画に出てきそうな見晴らし台のような岸壁が見え始めた。
遠くにクエラップ(c)

「あそこにクエラップ遺跡はあるんだ」
「ジョン、遺跡って、あんなに大きいの?」
「そうだ、長さが1キロもあるからね」
最後のマリア村を過ぎ、左に大きく迂回すると、クエラップ遺跡の城壁が肉眼でもハッキリと見えてきた。
クエラップ城壁(c)

それは、アマゾンの中に、突然現れた“聖なる遺跡”だった。
                                   ノムラテツヤ拝
花と虫(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

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