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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

カラヒア遺跡

ホテルのキー(c)

ルーヤからカラヒア村までは、雨でぬかるんだ泥道を1時間ほどの行程。
カラヒアの語源は、カララハという鳥がこの周辺に沢山いたから。カララハが転訛してカラヒア村、そこにあるからカラヒア遺跡となった。
カラヒア村で車を止めると、オレンジ色の看板にKarajia 1km(カラヒア 1キロ)と書かれていた。畑の脇道を降りてゆく。ジャガイモが紫色の花を付け、土手には赤い花や、オレンジ色のランが可憐に咲いていた。
急な坂を1キロほど降りると、茅葺屋根のカラヒア遺跡の入口へ到着した。
カラヒア入口(c)

そこから山の斜面に這いつくばるように歩いてゆくと、巨大な岩壁が目の前に迫ってきた。
「あったぁ~、アレだ。アレ!」
岩壁の中腹に、僕が恋い焦がれていた6体の墳墓たちがすっと立っていた。
カラヒアの壁(c)

「カラヒアの空中墳墓」がついに姿を現したのだ。
大きいものも、小さいものも、顔が半分もげていたり、コミカルなペインティングをされていたり。
実物を見た途端、僕はイノキと口走っていた。そう、顎をとがらせたイノキ人形なのだ。
イノキの視線は、天を向いていた。2体の頭上には、シャレコウベが乗っかっている。
ガイドに聞くと、墓標を意味しているのだそう。
本当かなぁ~、何か別の意味があるような気がしてならない。
男も女も子供も死んだら、こうして祀られたという。チャチャポヤス文化の時代には、一体どれほどのイノキ人形があったのだろう。このイノキ人形は、別名ペルーのモアイと呼ばれるが、こちらの方が断然可愛いと思うのは僕だけだろうか?
カラヒア全貌(c)

ただ、モアイはそれぞれの部族闘争の末に倒されるという悲劇だったが、こちらはお墓なので、埋葬品の盗掘が後をたたなかった。この6体に至っても、盗掘者の被害にあっていた。
お腹の部分に埋葬品と一緒に死者が入れられていたのだという。
岩壁の前は、深い谷となり、恵みの畑がある。
墳墓前の畑(c)

なぜこんな所に空中墳墓は作られたのだろう? 
答えは単純なのかもしれない。もしも僕たちと同じく死者は天へ向かうという思想を持っていれば・・・・。
人間は体という乗り物を脱ぎ、魂だけになり、天へ昇る。
天と地を結ぶ役割を、天の魂と、地のイノキ人形で繋げているのではないか?
繋がりこそが、この村の人々を守る約束になっているのではないか?
カラヒア空中墳墓を撮影しているとき、タイミング良くアマゾンに住むコンゴウ・インコが飛翔してゆくのが見えた。よく見てみると、このイノキ人形は絶壁から顔を突き出し、今にも飛びそうだ。
その姿を見ながら、僕はコンドルを連想した。
両翼3mもあるコンドルは、羽ばたくということを殆どせずに風を捕まえて旋回してゆく。なので、よほどの事が無いと地上へ降りてこずに、夜になると断崖絶壁の棚で眠る。イノキ人形も、棚で眠っているように見えた。
望遠レンズ、広角レンズ、標準レンズと画角を変えて撮影し、1枚1枚シャッターを押す。
空は生憎曇っているが、少し瞑想すると、あと少しで晴れてくるイメージが浮かんできた。
10分後、雲は見事に割れ、陽光が差し込んできた。
墳墓西面(c)

方位を測ると、このカラヒア空中墳墓は、朝の光だけ当たるように設計されていた。
「初光吸引」
撮影していると、墳墓と自分の境が少しずつ縮まってゆくのが分かる。
あと少し、あと少し。
上空はみるみる青くなり、一度は僕の下にも太陽の光が降りてきた。
「有難う。今日も最高の光景を見せてくれて」
そして頭を下げた途端、鮮烈な、細やかな気が僕を巻いた。身をそのエネルギーに、ただ任せる。そして顔をあげると、墳墓が黄金に輝いていた。
盗掘者たちに、ミイラや埋葬品を取られたけれど、墳墓は今も静謐なエネルギーで周辺を見守っていたのだ。体はその光に反応したのか、急に涙があふれ出てきた。
風景が滲んだまま、一枚シャッターをきった。
カラヒア空中墳墓(c)

そして、もう一度頭を下げた。
「今日、ここに来させてもらえたことに、出逢わせてくれたことに、全ての縁に感謝します」
体を起こすと、墳墓はもとの墳墓に戻っていた。
僕はカメラをしまい、ザックを背負った。
墳墓直下の岩壁の色(c)

帰り道は、行きとはうってかわって、太陽光線が大地を照らし、トウモロコシの葉がまばゆい光を反射させていた。牛を連れたアマゾンのおじいちゃんも、若者も朗らかな良い顔をしていた。
牛使いのおじいちゃん(c)

僕たちは、生けとし生きるものは、全てと繋がり、黄金の光に包まれながら生きている。
日々に埋没している時、僕たちはその光の存在をつい忘れてしまう。金の光に抱かれていること、大自然によって今一瞬を生かされていることを。
カラヒアが僕に喝を入れてくれたのだろう。
無垢なるエネルギーに包まれる静謐なる谷。それがカラヒア遺跡の真骨頂だった。
憧れの地は、僕の想像を遥かに超えていた。
若者たち(c)

ここにはまた戻ってくる。
そう確信して、僕はカラヒア遺跡を離れた。
PS, 最初の写真は宿泊したホテルのカギです。可愛いでしょ!
                                    ノムラテツヤ拝
帰り道(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

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