アンデスの王家の谷2009-03-02 Mon 11:30
![]() アルバ博士から、博士の右腕のルイスこと、ルーチョがアテンドしてくれる事になった。 ルーチョは、薄茶のサングラスをかけて、ちょいワルおやじのよう。赤と白のポロシャツを着て、何を話しても朗らかに笑う。何だか場がたおやかになる人、それがルーチョだった。 2009年1月29日、シパン王墓の横にワカラハーダ博物館が出来た。まだ出来たてほやほや、一か月しかたっていないけれど、館長に就任したのはルーチョ。チクラヨの町から、車をぶっとばすこと30分で、博物館前に到着した。自然の中に溶け込むようにして、博物館が建てられていた。 ![]() ルーチョに館長部屋へ招いてもらい、少し休んでから、博物館を館長の案内でまわった。 王墓博物館には及ばないが、2007年以降発掘されたものは、全てこの博物館に収蔵されているという。撮影をさせてもらいながら、40分ほどでゆっくり見学。そして外に出てきて、昼食を近くの茅葺のレストランで食べた。僕はやっぱりカブリート。田舎のおばあちゃんの作った愛情たっぷりのヤギ肉を頬張った。 ルーチョにひろちゃんが聞く。 「チクラヨに来てから、あっちのカブリート、こっちのカブリート、そっちのカブリートと走り回り、食べまくってるけれど、本物のミルクの味がする仔山羊は何処で食べられるのかな?今度ペルー北部だけのツアーを企画していて、どうしても核になるカブリートが欲しいんだ」 ルーチョの瞳が話をするにしたがって、どんどん輝いてゆくのが分かった。 最後なんかキランキラン。 「オレに任せろ。オレが最高のカブリートを食わせるから」 話を聞くと、ルーチョはかなりのグルメ。そのグルメがこうじて、ランバジェーケの村にレストランまで開いているのだ。 「オレに任せろ!」 胸を叩くルーチョの姿に、僕は間違いないと確信した。 時間が無かったので、ルーチョのカブリートを食べることは出来なかったけれど、間違いない。 「てっちゃん、ルーチョは今日から名前変更だな。セニョール・カブリートっていうのはどうだ?」 ぐはははは、とみんなで笑い合った。 ![]() ビールを飲んでから、本物のシパン王が出てきた遺跡を案内してもらった。まずは右手に10階建ての大きなピラミッド。ここはセレモニーをする聖なる場所だ。 ![]() そして左側にそれよりは小さいけれど、ピラミッドが聳えている。そのてっぺんの部分に、シパン王は眠っていたという。その下階には、神官や軍人、王様の周囲の人々が埋められているのだ。 ![]() 木箱に入れられたシパン王の左右に執事と軍人、上下に女性が埋葬されていた。 「これを見つけた時は・・・・」 「えぇっ?」 ルーチョはこのシパン王発掘時に、現場にいた運命の人なのだ。 ![]() 「午後遅くに、私たちはついに、このシパン王の墓まで掘り下げたのです。ただ、ここが私有地だったため、6時に入口の扉が閉まってしまう。アルバ博士はライトを持って夜通し掘ろうと言ったのですが、安全面を考えて翌朝から掘ることにしました。その夜は、私の生涯の中で一番長かった」 格好良い。そしてそんな場に立ち会えて、羨ましい。 「これは秘密の話ですが、ここにもあるんですよ」 シパン王の墓から少しだけ下がった場所、ここも掘れば確実に墓があるという。金の埋蔵量もかなりのもの。 シパン王の息子か、はたまた血縁関係の誰かが、埋められている可能性が高いのだろう。 「これはどうやって掘る人を決めるんですか?」 「スポンサーがついた時に、スポンサーと一緒に掘ります。もし・・・ドルあれば、一掘ることが出来ます。もちろん一緒に」 ビックリした。ここにはそのお金の値段は書けないけれど、集めることのできない額ではなかった。 もし20人くらいでお金を出し合って、スポンサーになり、この発掘を一緒に出来たら。それも掘っていけば、絶対に下に埋葬されているなんて。墓を開ける瞬間はどんな気持ちになるのだろう? そしてどんな匂いが充満しているのだろう? ![]() 僕は、目をつむり、そんな夢のような時間を想像した。 何だか体が軽くなり、浮かびそう。シパン王墓は、そんな場所だった。 目を開けると、少し離れた場所に、レチューサが見えた。レチューサとは、砂漠に住むフクロウ。小型だけれど、足が長いフクロウだ。 ![]() 僕たちはルーチョと握手し、博物館前で別れ、おかかえ運ちゃんにチクラヨまで送ってもらった。 そしてその夜、ひろちゃんと、ひとつの議題を考えることになった。 「文明とは・・・?」。 その定義の問題だった。 「文明とは何をもって言えるのか? 農耕形体が文明の最低条件。そしてヨーロッパ人が規定した定義は都市形成だった。人間が集まって家を建てて生きる。文明とはまさにメソポタミアが見本なんだ。都市を作らないと文明じゃないのか? 文明の再定義が迫られているのに、再定義すると既得権が侵されてしまうヤツがいるって理由で、そこも進まないのが現状だ」 「まず、最初の定義は、2足歩行、道具を使う、火を使う。これが人と猿など動物との違いだな。そしてやっぱり言葉が出てくる。言葉を使って、人間が文明と呼ぶには、ヨーロッパは都市というものにこだわるけれど、アンデスには、人間の集団生活跡が見られないんだ」 「集団生活跡が見られないからって、文明じゃないなんて、無理がある。だってあれだけの文化があったんだから」 ひろちゃんの熱い語りを聞きながら、僕は今までそんな事を考えたこともない自分を恥じた。 もっと、もっと、体験し。 深く、深く、勉強しないと。 そんな事を強く想った夜だった。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタンをクリックお願い致します! ↓ ココをクリック! ![]() |
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