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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

お城の山

プエルトモン空港を定刻通り12時55分に出発した。
下界は曇りだったけれど、飛行機がひとたび雲を突き破れば、そこは雲海の世界。純白の雲が波打ち、青空に溶けるようにオソルノ山とカルブコ山が見えた。
雲海(c)

プエルト・バラスの上を飛び、太平洋沿いを南下する。
向かう先は中部パタゴニアのバルマセダ空港だ。
一般にパタゴニアというと、僕の住んでいる北部パタゴニアのプエルトモン周辺やアルゼンチン側のバリローチェ。南部はチリのパイネ国立公園やアルゼンチンの氷河国立公園が観光のメッカになっている。けれど、南緯40度以南のチリ、アルゼンチンにまたがる大地パタゴニアのちょうど真ん中にも素敵な場所が沢山ある。その筆頭がバルマセダ周辺だ。近くには州都のコジャイケもある。
ちょうど去年の4月、父、母がうちに遊びに来た時に、一緒に行った思い出深い場所だった。
飛び始めて20分くらいだろうか?
前方左手に、沸きあがる雲のようにものが見えてきた。
「チャイテン火山」
チャイテン(c)

去年から活発な活動を繰り返し、何と降り積もった火山灰は10m。近くのチャイテン村を壊滅に追い込んだ。噴火は2000年ぶりと言われ、火山学者を始め、チリ国内の人たちを驚かせた。
チリはジャイマ火山とチャイテン火山が活発に噴火を繰り返し、オソルノ火山もカルブコ火山もいつ爆発してもおかしくないほど地熱が上がっている。僕の住むロスラゴス州には7つの火山があるが、その6つが爆発の危険性が高い“爆発警報”なるものが出されているのだ。
左手に見えてきたのは、そのチャイテン火山だった。
チャイテン火山アップ(c)

大きなクレーターが出来て、そこから噴煙が勢いよく流れる。溶岩流の跡も大地にクッキリと刻まれていた。噴煙は上にあがるだけでなく、火山の裾野を舐めるようにも流れてゆく。壊滅したチャイテン村はもう跡形もなく埋没していた。
チャイテン火山が見えなくなると、フィヨルド地帯から雪をまとった山々が林立し、氷河湖が輝きだす。そしてバルマセダ周辺になってくると、平坦になり、森も徐々に少なくなってきた。
バルマセダ上空(c)

プエルトモンからジャスト1時間。飛行機はバルマセダの上空にいた。最終着陸態勢だ。蛇のようにくねる河のふちに米粒のような家を発見。それはまさに大草原の小さな家だった。
大草原の小さな家(c)

風景が真っ平な草原だけになったところで、風に横揺れしながら着陸した。
一年ぶりのバルマセダ空港は、何だか明るかった。天気が良かったということもあるのだろう。
タラップを降りると、強めの風が体を包み込む。空気は乾燥しているけれど、少し甘い感じがした。
中部パタゴニア(c)

空港で一台だけ残っていたレンタカーを格安で借りて、コジャイケの町へは行かずに、反対方向へ車を走らせた。
今回の撮影目的の“セロ・カスティーヨ(城の峰の意)山”に向かうのだ。
ゴツゴツした岩肌に、名前の通り「お城」のような大きな山容に、一目見て、惚れてしまったのだ。
去年は生憎、青空の下で見ることが出来なかったので、今度は陰影のある晴れたカスティーヨ山を見せてもらうのだ。
天候は晴れ。気分は盛り上がってくるが、向かう先に嫌な黒い雲影が。予感は的中。カスティーヨ山の麓に着いた時には、お城の山は雲に姿を隠してしまっていた。
でも、去年とは違う。あのときは時間がなかったけれど、今回はたっぷりとある。完璧な瞬間に、セロカスティーヨ山と対面したいと思う。
明日は晴れるかな? それよりも今夜、今夜は何と満月なのだ。
月光を浴びたカスティーヨ山も素敵だろうなぁ~
時代から取り残されたようなカスティーヨ山麓の集落で、今日は過ごそう。
                                 ノムラテツヤ拝
氷河湖(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

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