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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

エメラルドな小鳥

笠雲(c)

「ボンッ」
物音に振り向くと、誰もいない。
昨日の午前中、文章を書いていたら、背後の大きなガラス窓付近で物音がしたのだ。
洗濯物を干していたので、風が揺らしたのかな? それにしては音が大きいな。書く手を休め、僕はガラス越しをぼんやりと眺めた。屋根の軒先にはハンガーにつるしたTシャツやパジャマ、一人がけの椅子にはジーンズと綿パン、そして長椅子には下着類が太陽光に照らされていた。
左から青いパンツ、黄色のパンツ、緑のパンツ。
んっ、緑のパンツなんて持ってたっけ? 
それも蛍光色の見慣れぬ緑色なんて。
目をこすり、もう一度見ると、茶色のパンツの中央に、なんと緑色の小鳥が横たわっていたのだ。
慌てて外へ出ると、それは小さな小さなハチ鳥だった。
大きさは500円玉くらいだろうか?
細長いくちばしを小刻みに震わせ、首がちょっと曲がっていた。
おそるおそるパンツから取ろうと試みるが、爪が食い込んでいて、ナカナカ引きはがせない。更に力を入れると、ボトンとデッキへ落ちる。そしてデッキの溝へはまる寸前、なんとか尻尾を捕まえ、手の中に収めた。
光り輝くエメラルド色の体、つぶらな瞳の周りには青いアイシャドーがかかり、何とも妖艶。
手当をしなきゃと部屋の中に入れようとした瞬間、ハチ鳥は意識が戻ったのか、手の中からヨロヨロと飛び、近くの木の枝につかまった。数分後、ホワンホワンのキメの細やかなハチ鳥の感触が、未だこの手に残る中、ハチ鳥は何事も無かったように飛び去っていった。
チリのプエルトバラスに住む大好きな友人“Kさん”にこの事を伝えると、私もあるわ、と教えてくれた。同じようにガラス窓にぶつかり、脳しんとうを起こしていたので、ハチ鳥をかかえてみたら、口元に焦げ茶色の細い葉っぱが付いていたらしい。取ってあげないと引っ張ってみるが、なかなか取れない。もしや、と思い覗き込んでみると、それはハチドリの舌だった・・・・・。
もう少しでKさんは閻魔さまになるところだった。
僕と鳥の人生が一瞬なりとも交差する。
手の中のぬくもりから、僕は鳥の今を感じ、森の生命を実感する。
一見、森は動いてないように見えるけど、確実に大いなる時間の中で生きている。
僕たちもその野生の体内時計を取り戻す時が、来ているのかもしれない。
大いなるものに身を任せ、全てを託し、生かさせてもらう。
チャチャ睡眠(c)

オソルノ山にも、カルブコ山にも、笠雲がかかり、雲が少しずつ湧き上がってきた。
明日から天気が崩れるのかな?
日本同様、笠雲はパタゴニアでも、天気の下り坂を示唆している。
一昨日から、お隣の家に、大家のハワイ人夫婦マリアンとマッドが来ている。今日はこれからランチに招待されているので、オソルノ山を仰ぎ見ながら、楽しい時を過ごしたいと思う。
今、このブログを書いている最中、草むらからピッ、ピッと小鳥がさえずりが聞こえた。
そこには花の蜜をせわしなく吸うハチ鳥の姿。鳥類で唯一ホバリング出来る鳥が、高速で羽を動かし、あっという間に目の前を飛び去っていった。
ひょっとして、あれは昨日のハチ鳥かしら?
                                ノムラテツヤ拝
笠雲2(c)
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