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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

博物館

股下のチャチャ(c)

秋を通り越して、冬がやって来た。
周りの自然は、葉っぱの先端が黄色や赤くなり、紅葉が一気に進んでいるけれど、バケツをひっくり返したような大雨が、連日連夜、降り続いている。
雨の日(c)

停電だけならまだしも、断水も頻繁に起こるようになってきた。チャチャも雨に濡れて、寒そうだ。
雨の音が好き。雨の多いところが好き。
大雨(c)

それはきっと、雨上がりの美しさに関係しているのだろう。虹が大きくかかり、植物は内から生命を発光させるから。こんな日はノラジョーンズの歌を聞きながら、ゆっくりと過ごしたい。美味しいココアがあれば、なおベター。
雨上がり(c)

昨日は、前から行きたかった小さなミュージアムに行った。森のキャビンから最も近い町はプエルトバラス、隣り合うようにヌエバ・ブラウナウの村がある。両方とも100年以上前にドイツ移民たちが作った村、町だけれど、ミュージアムには当時の生活用品が、一堂にかいされているという。いつも肉やソーセージを買うセシーナ・ジャンキウエの工場を越え、更に3キロほどゆくとポプラ並木の向こうに黒壁でMUSEOの文字が見えてきた。スペイン語で博物館の意味だ。
ミュージアム(c)

早速、中へ入ると館長さんが、ひとつひとつ説明してくれるみたい。こんな懇切丁寧な博物館は、楽しい。ペルーの至宝・天野博物館をはじめ、お客さんの立場になって考えてくれる博物館はありそうで、なかなか無い。
館長さん(c)

まずはこの村の歴史の説明がなされ、壁にかけられた昔の消化器や電話などを見てまわる。
消化器(c)

館内には、昔の時計や顕微鏡、椅子や農機具、コップなどの生活用品が陳列され、そのひとつひとつを質問形式で教えてくれる。
電話(c)

あるコップには、飲み口の内側に曲線の取っ手のようなものが付いている。
「これは男性用のコップなんです、この取っ手は何でしょうか?」
答えは「髭が濡れないようにするため」の取っ手だった。
そんな昔ながらの知恵、そしてドイツの職人気質の器具たちに、唸らずにはいられなかった。
館内(c)

それぞれの植物の絞り器もあり、ローズヒップの絞り器は現代でも即戦力になりそうだ。機械化が進み、最近は原始的なものが使われなくなったが、今見ても、それらはモノとして光り輝いていた。
絞り器(c)

巨大オルゴールや蓄音器からレコードの音が流れてくると、雑音の美を感じてしまう。今のDVDやCDには、聞きとれる雑音がほとんどない。でもレコードには曲の曲の間にも音楽の背後にもこの雑音が聞こえる。これが心を妙に落ち着かせてくれるから不思議。
「クリーンな無菌食堂と、小汚い食堂、どっちでご飯を食べるのか?」と選択を迫られているような感じだ。もちろん、僕は後者を選ぶのだけれど。
蓄音器(c)

130年前に、ここにドイツ移民がやってきた。この博物館にいると、その事実が、歴史が昨日の事のように感じられた。それは物の持つ力、使っていた人たちの念が、深く込められているからだろうか?
僕は夢心地のまま、博物館を後にした。
空からは今日も、雨が降り注いでいた。
PS、もう少しで森のキャビンを去る日がやってくるけれど、チリ最高のワインをひとつ紹介した。サンペドロが作っている「1865」というカベルネソービニオンのワインはコストパフォーマンス(日本円で1500円程度)も味も最高だと思う。もし日本で購入できるのであれば、是非とも飲んで欲しい一品です。でもやっぱり値段はチリの倍くらいするのかなぁ?
                                     ノムラテツヤ拝
1865(c)
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