1000kmの旅2009-04-05 Sun 10:04
![]() 今日はパン・アメリカンハイウェイで北上する。 マイカーのアンデス号に、荷物をぎっしり詰み込んで、プエルトバラスから高速に乗った。 それにしても、昨夜の雨も凄かった。キャビンはたちまち断水し、停電にもなった。そういえば、冬はいつもこんな感じだったな。水が無くなれば当然トイレんも水も流れないので、用を足すのも森の中、ウィンドブレーカーを着て雨に濡れながらの脱糞はなかなかオツなものだった。 Kさんから「やらずの雨だね」とメールが入った。恥ずかしながら、僕はこの言葉を知らず、今朝、Kさんから直接教えてもらった。昔の言葉って、本当に心がこもっていますね。 ハイウェイを走りながら、僕はウキウキしていた。だって、足元に、Kさんがこしらえてくれたお弁当があるだもの。 「長旅だもんね。私がお弁当作るから持って行って」と最後の最後までKさんにお世話になった。 朝弁は、玉子サンドから始まる。白身が大きくカットされ、濃密な玉子の味。隠し味は胡椒。僕好みのまあるい味だった。そしてハム&レタスのサンドイッチ、ツナ&レタスのサンドイッチ。更にボックスの奥からは、くるみ入りのバナナケーキが。いつも想うんだけど、Kさんの料理は絶対に売れると思う。 「無理無理、だって私、作りたいときにしか作らないから」とKさんは言うけれど、作りたてのパンなんて、涙が出そうになるほど美味しかった。 プエルトバラスから3時間ほどでテムコという町へ。そこからまた2時間ほどでロスアンヘルへ。 ここでランチタイムとした。 ランチボックスを開けると、そこにはから揚げ、玉子焼き、インゲン、味付けおにぎり、鮭おにぎり、リンゴ、モモがぎっしり詰められていた。そして脇にスマイルカットされたレモンが。 ![]() コレハ ナニニ ツカウノカナ? Kさんに妥協の文字はない。レモンは唐揚げにかけるために、添えられていたのだ。 どれもこれも、絶妙の味付けで、本当に感激の味だった。Kさん、お弁当、御馳走様でした。 ちょうどここで、プエルトバラスから450キロ北上してきたことになる。 ハイウェイというと、日本の場合、車とバイクの世界だけれど、ここはチリ。自転車も脇を走るわ、地元民は高速道路を横断もしてゆく。それらを見ながら、更に北を目指した。 チリ第3の都市コンセプシオンの近くになったとき、大きな川を渡るのだけれど、看板に「RIO Bio Bio」とあった。ここが有名なビオビオ川。 北緯1度コロンビアのマウレ川から、この南緯35度くらいのビオビオ川までがインカ帝国の領地だった。つまり、これから北はインカ帝国となるのだ。対して、僕たちの住んでいたプエルトバラスやパタゴニア地方は、現地民のマプーチェ族やアラウカーノ族が仕切っていた。 空も晴れ、空気も少しずつ生ぬるくなってきた。あの森の寒さが嘘のように、北上するごとに、服を一枚、また一枚と脱いでゆく。気持ち良く、運転していると、前方に緑の白のツートンカラーの車が。横に立つ人影がこっちへ車を寄せろと合図していた。 それは、チリを牛耳る警察、車はパトカーだった。 チリはよく検問がある。車を脇に止めて、窓を開けると、運転免許証を見せろという。 やっぱり。。。と国際免許証を見せると、色々質問される。 「スペイン語は話せるか」「この高速道路は何キロまで出して良いか知ってるか?」などなど。 とっさにヤバイと感じ、スペイン語は少ししか話せない、法定速度は120キロだと思う、とたどたどしく答える。 ポリスはパトカーの上を指差す。そこにはスピーカーのようなものが乗っていた。 「キミは法定速度よりも早く走っていたよ」 「えぇぇ?」 スピーカーに見えたそれは、スピードガンだった。覗きこむと、悲しいことに136キロと表示されていた。16キロオーバー。 「分かるかな? 君は罰金を支払わなければならないんだ」 「う~ん、何を言ってるか分からない・・・」 「この車はレンタカーか?」 「はい」 「旅行者か?」 「2週間だけチリへ来ています」 「いつ、帰るんだ?」 「明後日」と口からでまかせを言うと、ポリスはしばらく腕組みし「今度からは気をつけるように」と奇跡的に開放してくれた。有難い。チリは規律が厳しく罰金国家として名高い。そのポリスが見逃してくれるなんて。頭を下げて、車に乗った。はぁ、ツイテル ツイテル。 ![]() 西側のアンデス山脈には、鱗雲がかかり、タルカの町を越えると、ここからがチリが誇るワイン王国となる。タルカ、クリコ、コルチャグア、レンゴー、有名なワイン生産地が点在し、ハイウェイの両脇には、ブドウ畑が出てきた。やがて、見渡す限りブドウ畑になると、サンペドロのワイナリーが見えてくる。この前、絶品ワインとして紹介した1865のカベルネは、ここで作られていた。 そしてクリコへ。ポプラ並木の先端が黄色く紅葉していた。クリコ。ここは僕の大切な場所だ。初めて南極へ向かった時、クリコ在住のチリ人家族と仲良くなり、何度も居候させてもらった場所。あの濃密な時間が、僕をよりチリに近づけてくれたような気がする。マルセロは元気かな? バレンティーナは大学生になったかな?などと思いながら通り過ぎる。 この近くに、日本でも有名なワイナリー、モンテスがある。サンフェルナンドに入ると、ワインの香りがいきなり窓から飛びこんできた。ふっと脇に目をやると、大きなワイナリー工場が建っていた。 午後6時半。 夕焼けもワインレッド色に染まり、雲も、山も、ブドウ畑も燃えた。 ![]() 今日の目的地、ランカグアまでは後15キロ。 6時45分、夕日が静かに沈み、茜色と水色が混ざりあった。 車のテールランプが流れてゆく。南と違い、北へ上がってくるにつれ、車の数が多くなり、多様な香りが充満している。肥料やら、りんごやら、ワインやら、窓を開けるだけで、香りが満ちるのだ。 19時、チリで最も古いゴルフ場、ロス・リリオスへ到着。 この中に、チリ人の友人Iさん豪邸があるのだ。 森のキャビンを出てから11時間半、合計1000キロの旅だった。 真っ赤な豪邸に車を止めると玄関が開いた。そこにはIさんが涼やかな顔でたっていた。 「いらっしゃい、久し振りねぇ~」 懐かしいIさんとハグし、荷物をひとつずつ家へ運び入れた。明日、僕たちはチリの首都、サンチアゴへ入る。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタンをクリックお願い致します! ↓ ココをクリック! ![]() |
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