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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

サンチアゴ空港

撮影中(c)

Iさんにサンチアゴ空港まで送ってもらい、カウンターでチェックイン。
荷物検査を受けて、スタンプをもらい、無事にチリを出国した。
それでもまだ帰国する実感がわかないのは、この一年半で何度もここから飛び立ち、ここへ戻って来たからだろう。今日も、ふらっとペルーへ出かけるような感じがしてならない。
ウサギ(c)

スーツケース大3、小1
ザック大1、中1
カメラザック1の合計7つの荷物を、手分けして運ぶ。
4つは預け、3つは手荷物で。スーツケースの大3は、すべて規定の23キロギリギリだった。
コケモモ(c)

チリから日本に帰国したら、僕はまず何を感じるだろう?
やっぱり空気感の違いかな、それとも食事の懐かしさかな、故郷の風の感触かもしれないな。
サンチアゴからトロントまで、ボーイング767の最新機体。映画を二本立て続けに見た。
一本はディカプリオとケイトウィンスレットのレボリューショナリーロード(邦題は不明)と松田翔太主演のイキガミ。レボリューションは夢と絶望、些細なズレが死に至る過程が克明に描かれるちょっと重い映画。イキガミも生と死がモチーフになっていた。松田優作の息子はカッコいいね。
機内食は夕食も朝食も意外に美味しくてビックリ。やはりアメリカ系、カナダ系の機内食も少しずつ改善されているのかしら?
カルブコ火山(c)

サンチアゴ空港から11時間半でトロント空港へ。簡単な入国審査をして、荷物をピックアップ。スーツケースをあけると、ワインが一本割れていた。調べてみるとネックの部分ではなく底が綺麗に開いてしまっていた。あれだけタオルを敷きつめても割れるってことは、今も昔も南米路線は扱いが悪いのだろう。でも、それら被害を最小限で食い止められたので、OK。
そして荷物を、またコンベアーに乗せた。
トロントからバンクーバーまでの路線では、映画を一本見た。
Twilightというバンパイアと美少女の恋の物語。期待していなかったが予想外に面白かった。こんな現実があっても不思議じゃない。良い映画を見た後なのか気持ちが清々しくなる。
外を見やると、パステルカラーの青空の下に、真綿のような雲が広がり、プレーリーの大地には人工的に区切られた畑がパッチワークのように並んでいた。
シュゴーっというジェット音が、機内を覆い、僕はボーっとこの一年半の事を想った。
チリで真っ先に感じたことは、日本の物質の圧倒的な多さだった。
旅ではなく、住むことで、それが日常になることで、より世界中から物資を手に入れる日本の凄さを思い知らされた。その反面、無いということが自分で作るという欲求を強く生むことも知った。
納豆にしろ、めんつゆにしろ、なんでも食べたいものは自分で作るしかないのだから、俄然やる気が出てくる。
そして、やはり自然の真っただ中に住むことで、日々、森から、雨から、雲から、山々からエネルギーが送られてくることも感じた。
自然はいつも、いつも、生命を守り、無償のエネルギーを与えてくれている。そのエネルギーを愛と言ってもいいだろう。チベットの聖山カイラスを巡礼したとき、あの光に包まれた不思議な体験の末にパタゴニアライフがあったこと、そこに僕は必然性を感じている。
あれは、カイラス山に祈りを捧げていたとき、全身に響いた言葉だった。
「全てのものを許し、こだわりを捨てなさい。流れに身を任せれば最高の未来が与えられる。いつも君を見ていますから」
周りはプラチナゴールドとブルーダイアモンド色の光に包まれ、涙が、鼻水が、嗚咽が。
体の中に、何か別のものが入ってくる感じだ。
「もしこだわるならば、今を生きてる事にこだわりなさい。全ての生命が生き、死ぬ。それが何よりも尊いことなのだから」
チリに住むことで、僕は、体にこべりついた様々なこだわりを捨てたいと思っていた。
でもそれは、同時にこだわっているということを、まず自分が認める作業から始めなければならなかった。
キツネ2匹(c)

日本で住む、外国で住む。
日本語を話す、英語やスペイン語を話す。
日本食を食べる、パタゴニア食を食べる。
黄色人種の集まり、白黒黄色人種の混合
最初は日本との差異ばかりに目がいった。けれど、半年くらいたったある日、全てのものが実は同じなのだと気づかされた。
違いを見つけ、それを認識しているのは、他ならぬ自分なのだ。
本当は山も木も葉っぱも同じように、人間も動物も空気も素粒子も全てが同じ枠の中で、共存していたのだ。
「個性を伸ばそう、個性を大切にしよう」
チリに住む前は、それで良いと思っていた。良い所をどんどん伸ばしていければ。
でも、今は少し違う。
個性というもの自体が、意識体なのだ。
差異の認知ではなく、同質の認知をしながら生きていきたいと思う。
みんな同じだし、みんなが違う。
同じものが集まれば集まるほど差異が生まれ、違うものが集まれば集まるほど同質になってゆく。
本当に生命のからくり、意識の多様性は、無限だと想う。
これからも、生涯寄り添う自分の枠を認め、弱さを認め、無知さを認める。
その先に、自由な世界が1つ現れ、相手に優しくなれる強さを得て、好奇心を増してゆくのだろう。
チリに住めて良かった。
大自然に囲まれ、大好きな友人たちと笑い、日々、一日に感謝できた。
日本に帰国しても、感謝出来る時間を送りたいと想う。
そしてチリの森が育んでくれたものを通して、周囲の人たちが少しでも幸せになる方向へ役立てていきたい。
まずは、帰国後すぐに、全力で写真集を作ろう。
パタゴニアの自然からダメ出しを食らわないように、丁寧に1ページ、1ページ、慈しむように積み上げてゆきたいと思う。
                                  ノムラテツヤ拝
チャチャ横から(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

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