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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

憧れの蕎麦屋

そば豆腐(c)

憧れの蕎麦屋があった。
岐阜の大好きなマダム3人組から“岐阜市内に隠れた名店がある”と聞かされていた。
なんでも蕎麦打ちを趣味としていた主人が立ち上げた店で、やりたい時に店を開けるという。
「てっちゃん、聞いて、聞いて、ツイテルわ。あのお蕎麦屋さんがゴールデンウィークにやってくれるって言うのよ」マダムの一人Nさんが興奮気味に電話をかけてきた。
「てつや、行ってみたぁ~い!」というわけで、向かったのは、よく晴れた昼すこし前。
ハナミズキが天へ向かって手を広げ、春の空気に溶け込んでいた。立派な門をぐくり、日本庭園の飛び石を渡ると、玄関には作務衣を着て正座する主人の姿があった。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
面長の顔に、光る瞳。
「舟伏の庄」。これが店名だ。岐阜県岐阜市にある。ちょうど実家から10分の距離だった。
ゴールデンウィークは遠出せずに近くで遊ぶをモットーにしている自分にはぴったりだった。
日本家屋の畳の居間に通されると、そこには可愛らしいお盆のような机が置かれていた。
腰を下ろし、しばらくすると、主人がハナミズキ色のおしぼりを持ってきてくれた。庭からは心地よい緩い風が吹きあがり、鳥の声があちこちから聞こえてくる。
まるで山の中へ迷い込んだような感じがする。
「今日はお聞きになられているでしょうが、2時間ほどかけて蕎麦をゆっくり食べてもらいます」
僕はマダム3人組を見た。聞いてないですけれど・・・・・
一品目はそば豆腐。
小鉢を揺らすと、ぷるんぷるんに揺れる。ワサビにシソの葉がのせられ、ゼリーのような豆腐に箸を入れると、弾力ではじかれた。
味はごま豆腐みたいだけれど、後味がまったく違い、すっと消える。あくまで優雅に、上品に。
江戸時代、蕎麦屋は大衆の集まる場だった。そば前と言えば、お酒一本に甘い卵焼き。せいろ一枚とは3箸半の量など主人が教えてくれる。
2品目は水蕎麦。山形名物の水そばは、やはり蕎麦に自信がないと出せない逸品。たれはつけず水の中に浮かんでいる。そばの風味と香りが口内と鼻内に広がった。
水そば(c)

3品目はそばがきのから揚げ、利休巻きに花なんばんの盛り合わせ。
小物(c)

そして4品目のおろし蕎麦が出てきたときには、流石に驚いてしまう。
細かく刻まれた海苔が、ピーンと立っているのだ。
おろしそば(c)

「今日はよく晴れておりますから、湿気が無いですね」
主人の話だと、雨の日は、湿気の関係で持ってくる間に萎れてしまうという。
麺は上品な細麺。みどりそばとそば殻をミックスさせた十割そばだった。
おそしそばは福井、今庄のそば。器は湖東焼き。
なんだか、コンセプトが見えてきた。
「蕎麦は、お客さんの来られる前夜にひき、来られる2時間前にうち、到着されてから茹でます」
ひきたて、うちたて、ゆでたて。
「蕎麦の食べ方で最も贅沢な3たてでございます」

5品目はとろろそば。シソの花と極細の海苔とネギがのっている。
これまた味は薄味で、後味が食欲を沸かせる。器は瀬戸物。
とろろそば(c)

6品目が京都名物「にしん蕎麦」。
蕎麦が美味しいのは分かっているけれど、このにしんは撃沈してしまう。
にしんの良い部分だけが、身の中にギュッとしまっているのだ。
にしんそば(c)

「美味しいですねぇ~」と唸っていると、主人が口を開いた。
「このニシンは油を徹底的に抜いて、コトコトと9時間かけて作ります」
やはり、極上の味には、心尽くしの手間がかけられているのだ。
そして7品目が江戸名物の蕎麦寿司。
器は古伊万里、湖東焼き、瀬戸焼、奈良茶碗と日本中の器旅。
蕎麦も各地の名物蕎麦で蕎麦の旅。
蕎麦と器の時空の旅が、コンセプトなのだろう。
時計を見ると食べ始めてから1時間。これでまだ半分だという。
お腹ポンポン。最後まで行けるのかしら?
                                  ノムラテツヤ拝
そば寿司(c)
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テーマ:食べ物の写真 - ジャンル:写真

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