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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

弔い食

こはだ(c)

帰国してから、お寿司を食べていなかった。
大好物なのに珍しいなぁ~と思いながらも、なかなかその機会に恵まれなかった。
敬愛するSさんに、その事を告げると、早速行こうということに。
岐阜のとあるお寿司や。岐阜県は海無し県。通常はやはりお寿司はマズイ。飛騨は富山湾から上がる新鮮な魚があるけれど岐阜市内はいかんせん、いまいちだった。でも、その中でも好きなお店へ。
Sさんに出逢ったのは、今から12年前、ちょうど22歳のときだった。それから長い間、もちろん今でも、僕の魂の先生として尊敬している。どんな愚痴を言っても、まあるく包み込んでくれる包容力。そして多くの体験を通して、迫力ある直球を投げ続けてくれる稀有な人だ。
その魂の美しさもさることながら、僕はSさんに最近感じていることは、まったく昔と顔が変わらないのだ。詳しい年齢はふせるけれど、通常ならば、この10年で確実に老けこんでゆくだろう。
でも、毎年、まるで時計の針を逆向きに回すように、若返ってゆく。
肌なんて、ツヤツヤしてるんだもの。
実は、今夜食べた寿司は、弔い食でもあった。
夕方に、去年の11月に亡くなったTさん宅に伺い、線香を上げさせてもらった。心に大きな傷を負いながらも、お母さんが気丈に接待してくれる。僕は線香に火をともし、手を合わせた。
Tさんは、ペルーでお世話になった人。そしてエネルギーのことを気の世界を僕に見せてくれた人だ。同郷ということもあり、本当によくしてくたTさんに、僕は心から感謝した。
「てっちゃん、このお寿司、Tさんと一緒に食べてるんだね」
Sさんが、目を少し潤ませながら寿司屋で話される。
「もっと、話したかったなぁ」
その言葉を聞いて、僕も、もらい泣きしてしまう。
Tさんが好きだったイカやタコの盛り合わせを最初に頼んだのも、そのためだった。
イカタコ盛り合わせ(c)

カツオのたたき、青魚の盛り合わせ。
カツオのたたき(c)

もう、脇にはTさんが天国から降りてきて座っているようだ。
青魚盛り合わせ(c)

Sさんと僕は、日本酒を飲みながら、ちびちびと、Tさんの思い出話をしながら笑った。
「こはだ、美味いですねぇ」。そう、最近、コハダがしみじみと美味しいと感じるようになった。
アジより、サバより、イワシより、やっぱりコハダなのだ。
出汁巻きタマゴも久しぶりに頼む。出汁が聞いて、ホワンホワン。津波のような後味が、いつまでも続いた。
出汁巻きたまご(c)

Sさんは8巻ほど頼み、ぺろりとたいらげる。最初に出逢った時から食欲も全く変わっていなかった。
「てっちゃん、チリはどうだったかな?」とゆっくりと、僕の心をほぐしてゆく。
僕も、こんなカッコいい男性になれるだろうか?
こんなにまるく、球体のような生き方をしていけるだろうか?
Sさん、まだまだ僕に色々と教えて下さいね。 どうぞ宜しくお願いします。
                                 ノムラテツヤ拝
敬愛するSさん(c)
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テーマ:食べ物の写真 - ジャンル:写真

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