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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

ハマグリ尽くし

焼き蛤(c)

「蛤は両性具有なの」
「へぇ~、そうなんですか?」
みんな、お酒のピッチも上がり、どんどん上機嫌になってゆく。
料理人のNさんが出てこられ、炭火で蛤を焼く。絵に書いたような「その手は桑名の焼き蛤」の世界だ。
貝から汁が少しだけ溢れるけれど、蓋は一向に開かない。
「これは、貝の根元をカットしてあるので、空かないんですよ」
焼き蛤2(c)

身に肉汁をたっぷり吸いこませるための、昔からの智慧だという。Nさんが貝をあけると、中からは膨張したクリーム色の身が出てきた。
出来上がり(c)

味は、んもう、美味しいに決まってる。身の弾力もさることながら、噛むと汁が弾け飛ぶのだ。
今は河口堰があるので、少しだけ塩抜きすると言われていたが、味は申し分なかった。
中身(c)

そして、次の一品も、目が丸くなる。
「池波正太郎さんが、本にも書いてくれたんですが、ハマグリの鍋なんです。でも本当はハマグリの湯豆腐なんですが」。
汁もの(c)

お雑煮のような透明感ある出汁に、素材も厳選に厳選を重ねた逸品。
そしてハマグリの天ぷらは、エビ塩で頂く。心憎い演出だった。
てんぷら(c)

「この揚げ方って何か秘密でもあるんですか?」
「実はね、これは桑名の米油を使ってるのよ」
えび塩(c)

そして、この夜一番美味しかったものが、出された。
「ハマグリの酢の物」
ねぎハマグリ(c)

吉野の葛を入れて、味を染みさせなくしたもの。これも、昔から続いてきた叡智の結集だ。
食べた時に、もずくが絡まり、ハマグリの身も信じられないほど柔らかい。
「先人の知恵を頂いて、私たちは料理を続けさせてもらっています。有難いことです」
こんな感謝の気持ちで経営されているから、船津屋さんは上手くまわっていくのだろう。
「いつも料理人に言う言葉があるの。一年の締めくくりに伝えるんだけれど。お客さんの顔は見えないけれど、思いは全部伝わっているのよ」
そして料理はラストスパートに入ってゆく。
ハマグリのしぐれ茶漬け。
はまぐり茶漬け(c)

お番茶をかけて頂く。お腹ポンポンなのに、スルスルと入ってしまうのは、やっぱり味が本物だからだろうか。そして脇にはハマグリのお漬け物が。
おつけもの(c)

終わると同時に、仲居さんがスイーツを持ってこられる。
出されたのは黒蜜のくずきりだった。甘いものが苦手な自分は、ちょっと引いたけれど、味は抜群。見事完食してしまった。
黒蜜くずきり(c)

ラストは、琵琶とキウイの上にゼリーとミントが乗った一品。
口の中に甘みと酸味が交わり、さっきまで食べていたハマグリの味が、より一層引き立てられた。
びわ(c)

三重、桑名に名店がある。その名は、船津屋。
美人女将、大好きなYさん、Iさんとパチリ。
ハマグリのバリエーション、そして料理の神髄を見せられた一夜だった。
                                  ノムラテツヤ拝
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テーマ:食べ物の写真 - ジャンル:写真

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