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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

富士の朝

富士の朝(c)

鮮烈な空気感、サラサラな肌ざわり。
早朝5時に起きると、もう日の出が始まっていた。今は日本で一番早く日が昇る時期。
4時半には、もう昇り始めるのだろう。
駐車場からふじやま号を出し、カメラ機材を積んで出かけた。
家を出ると、すぐに富士の偉容が迫ってくる。
高い。どうだろう、この圧倒的な高さは。そして秀麗な形は。朝の光に緑が浮かび上がり、透き通ってゆく。
いつもの通る道からそれ、初めての林道を走ってみる。ウサギが林道から飛び出したと思えば、突然車の前方で、ニホン鹿が跳躍する。富士の麓は、野生動物の楽園でもあった。
木漏れ日がレンブラント光線のように落ち、黄金の時間を迎えていた。
森と富士(c)

東京での出版の仕事が重なるために、出来るだけ首都に近い場所に住む。でも都会ではなく、森の中で。美味しい空気と水があるところ。僕はいつの間にか、パタゴニアのあの自然を求めていたのだろう。シンボリックなオソルノ火山は、富士山へと姿を変えた。
雄大な稜線(c)

仕事のために、移り住んだ富士の森だったけれど、富士からのOKサインが聞こえたような気がした。僕は生れて初めて富士山との距離感が無くなったのだ。偉大な富士、その心はいつもある。けれど、距離感といえばいいのか、この見えない僕と富士の間が、溶け合うように消えたのだ。
富士アップ(c)

「あなたが望むなら、全てを見せよう」
それは、パタゴニアの聖地「フィッツロイ山」からも受けた感覚だった。
「1年と少し、撮影させて頂きますので、どうぞ宜しくお願い致します」
手を合わせながら、ドキドキした。季節のうつろい、動植物たち、そして何より日々変化を見せる富士山を丁寧に撮らせてもらいたいと思う。
鳥の声が360度、全方向から響いてくる。まるで声の中心に自分が入れられてしまったよう。森へ差し込む光に、希望が見えた。
新緑と富士(c)

山梨県の県鳥にもなっているウグイスが、辺り構わず鳴いている。普段は姿を見せないウグイスもさすがにこれだけいると、ちらほらと見える。茶色の地味な鳥。よくウグイスをメジロと勘違いしている人がいるが、鳴き声からは想像も出来ない地味さ、それがウグイスの容姿だった。
アカマツの森には、せわしなくリスが走り回り、木々が互いにこすれあう。
大分雪の溶けた冨士山の向こうには、突き抜けるような青空が。
そうそう、チリのパタゴニアでいつも見ていた蒼空だった。
森からは甘い花の香りがする。僕は、ここで生きていく。
                                ノムラテツヤ拝
新緑と富士2(c)
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テーマ:山の風景 - ジャンル:写真

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