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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

リースフラワー

砂漠の一本道

ピナクルスNPのお土産売り場で、一冊の写真集片手に聞いてみた。
「この花って、何処に咲いてるんですか?」
売り場の女性は「ボスに聞いてくるわ」と走り去っていった。
一分後、ボスを引き連れ彼女は戻り、もう一度同じ質問をした。
「この花は、何処に咲いていますか?」
「これは珍しい花だから、ここっていうのは難しいけれど、大体PからWも町沿いにあると想う」
そこへ英国紳士が現れ、「Pという町から20キロほど手前で、数日前にリースフラワーを見たよ」と貴重な情報源を得た。
リースフラワー。
実を言うと、オーストラリアに来るまで、この花の存在を知らなかった。
ワイルドフラワー関係の本をパース市内で見ていたところ、この花に恋した。
まさにフォーリンラブだ。
リースのような環状に花が咲き、それはどの花にも似ていない。
オーストラリアでも見ることの難しい稀有な花だという。
今はもし咲いていても、終わりの時期。いい状態で撮影するのは難しいと言われた。
「ここからPまではどれくらいの距離ですか?」
「車で3時間半かな?結構遠いよ」
時計を見ると2時50分。
今夜はパースのホテルを事前に予約しているし、日没は6時前後。そんな計算をしている自分にハッとした。
地図を見ると、Pの村まで250キロ前後。こういうときは、計算なんかはしちゃいけない。一番大切なのは、心の声に耳を傾けること。
見ることが出来ても、出来なくてもワクワクする方へ、楽しい方を選ぶ。
花を諦めパースに戻り美味しい夕食をとるか、日没になってもとにかく行って自分の目で確かめてみるか。
その場合、パースの宿はキャンセル料が全額かかってくるかもしれない。それでもワクワクする方を進みたい。ドキドキしていたい。夕食がまずかろうが、大したことじゃない。自分の心に嘘をつくほうが僕にとっては重罪だった。
行く。
決めれば、あとは慎重に車を飛ばすだけ。
ピナクルスから1号線を北上し、エネアバまで北上。そこからどんどん内陸部へ入ってゆく。途中カンガルーが何頭かひかれていた。空気は徐々に乾燥してきた。
旅の醍醐味とは、きっとこんな選択の途上にある。
結果ではなく、途上こそが、幸福のときなのだ。
尻尾の白いうさぎが、道路を横断してゆく。砂漠の中の一本道がどこまでも続いている。両脇に麦畑が出てきて、やがて湖が見えてくる。もうすぐP村の20キロ手前、あの紳士が教えてくれた場所だ。道路脇に目をこらすが、黄色、紫色の花があるけれど、一向にリースフラワーは無い。
15キロ、10キロ、5キロ、そして見られぬままP村へ到着した。
「ダメなのか?」
何としても見たい。P村のインフォメーションセンターはもう時間切れで閉まっていた。
夕日はどんどん下がってゆく。しょうがない、自分で選択した結果だもの、受け入れよう。
肩を落として、まだ空いている小さなスーパーマーケットに入る。田舎らしく5時半に閉店だという。時計は5時28分。ギリギリセーフだった。レジのおばちゃんに藁をもすがる想いで、リースフラワーの在りかを聞いてみる。
「わたしじゃなくて、彼女に聞いてみな」
指された方向には、紫色のベストを着た女性が、観光客らしき人たちに話していた。
胸にはワイルドフラワーと刺繍がされている。
簡単な自己紹介してから、思い切って単刀直入に聞いた。
「リースフラワーを見たいのですが」
ぺりケンさんは間髪入れずに、情報をくれた。
「ここから南へ20キロ。Sという通りを右折してしばらくゆくと、風車がある。その前に目印になるバケツがあるから、周辺を探してみて。きっと見つかるから」
イギリス紳士は、きっとここのことを言っていたのだろう。
すぐさま車を飛ばし、20キロほど南下する。
そして、バケツを見つけ、周辺を歩いた。
けれど、リースフラワーは一向に見つからない。焦る思いとは裏腹に、夕日は沈んでゆく。
どこだ、どこだ?
そして遂に影の中に、リースフラワーの残骸を見つけた。
リースフラワー終わりかけ

それらはもう終わりかけ、花はかろうじてあるフラワーだった。
終わりかけ2

これじゃぁ~、ダメだ。 もっと無いか? 花は群生するもの。ひとつあればふたつ、みっつあってもおかしくない。
これもダメ、あれもダメ、う~ん。
探し回ること3分。
僕は足もとの花に、目を奪われた。
リースフラワー

あった。
リース状

それはまさにリース状に、環状に花が咲いているリースフラワーだった。
最後の夕日の光が花びらを照らし、まるで神様からの贈り物のように思えた。
ピンクと薄い黄色の花びら。中央には緑の葉が茂っている。
花弁

なんて美しい花が、この世にあるんだろう。
光はまるでスポットライトのように、リースフラワーに当たり、花は黄金色に輝き始めた。
神様からの贈り物

まさに「念ずれば花開く」瞬間だった。
                                     ノムラテツヤ拝
リースフラワー2
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テーマ:花の写真 - ジャンル:写真

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