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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

たちねぶた

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今日はねぶた祭りの思い出を。
斜光線が岩木山を幻想的に浮かび上がらせる。
JR五能線を走る特急列車「リゾートしらかみ号」に乗り、青森県五所川原市を目指している。
辺り一面、ピンクの世界。
さっきまで活気を帯びていた稲の緑も徐々に落ち着き、夕闇にゆっくり取り込まれてゆく。宝石のような夕日が地平線へ落ちてゆく様は、これから始まる祭りとは対照的に僕の心を静かにしていった。
スズメが大群を組み、家路へ飛んでゆく。
空はグラデーションとなり、一番星が空に一点の光りを放ち出す。
ねぶた祭りには、2つあることをどれだけの人が知っているだろう?
「ねぶた」と「ねぷた」。「ぶ」と「ぷ」の差。
ねぶた祭りは青森市で行われ、あの五右衛門のような灯籠を引く。
ねぷた祭りは弘前市で行われ、別名、扇ねぶたと呼ばれる。末広がりで縁起の良い扇の灯籠をひく。
そしてラストのねぶたが、「立ちねぶた」と呼ばれ、最も迫力があるという。
場所は、五所川原市。
弘前で昼御飯を食べているまで、僕は最初の二つ「ねぶた」と「ねぷた」しか知らなかった。がローカル雑誌に書かれた「立ちねぶた祭り」の記事を見て、虜になってしまった。
『五所川原立ちねぷた』
「幕末から明治にかけて、津軽地方では、立ちねぷたが存在していた。五所川原市では「布嘉」に代表される県内でも1、2位を争う大地主・豪商たちがいた。豪商たちの力の象徴として、高さを競う大型のねぶたを作ったようだ。その大きさは隣村からでも見えたという。隆盛を誇った大型ねぶたも、電気の発達で電線が張り巡らされ、
小型化せざるを得ずに、衰退していった。が、平成5年、豪商の「布嘉」に仕える大工をしていた方から、一つの知らせがもたらされた。昔の巨大ねぶたの台座の設計図が発見されたというのだ。全部で7枚の設計図と1枚の写真を頼りに、復活劇が始まっていった」 
記事を読んで、ドキドキした。
見つかるべくして見つかったであろう設計図。
昔の人々の念が、今の指針を作っているのだ。
ねぷたの高さは23mにも及ぶ。少し前に見させてもらったロケット・ミュー5型を少しだけ小さくした感じ。その23mのねぷたを、町中曳くというんだから、その場を自分の目で確かめたかった。
これから、ねぶたの事を書いていく前に、2つだけ解説したい。
まずはねぶた祭りの起源について。
奈良時代に中国から入ってきた七夕行事と、古来からある旧盆の風俗や精霊送り・虫送りなどの行事が一体化し、江戸時代に盛んになっていった。ねぶたの名は、心身の汚れと共に、収穫の秋に向かって労働の妨げとなる眠気(ねむた)を流し去ろうとすることから付いたとされる。つまりは、眠気を取る祭りらしい。
そしてねぶたとねぷたの違いは、最初は同じ言葉から発展し、その土地土地に定着する時に、違った言い回しになった。青森は「ねぶた」五所川原や弘前は「ねぷた」。
午後6時半に五所川原駅へ到着。 駅から北へ。
雑誌の地図を頼りに、立ちねぷたの出発地へと向かう。
人混みの中をかき分け6時50分、スタート地点に到着。
焼きそばとビール、フランクフルトソーセージを買って、今か今かと待った。
午後7時、尺玉の花火が号砲となり、一つ、また一つとたちねぷたが目の前を曳かれてゆく。最初は0m~15mの中型立ちねぷたが通り、その前で若者たちが跳ねる。
ねぷたの礎を見ると発電器が廻っている。これで電気を供給し、ねぷたに、ほのかな明かりを付けてゆくのだ。
男はハッピ、女はさらしを巻いて、かけ声をかけ、クルクル廻る。
「やってまれ、やってまれ(やっつけてしまえの意)」
何ともステキ。僕もそれに合わせて叫ぶ。
「やってまれ、やってまれ」
勢いは良いが、祭りに参加している地元人が酒を飲んでいない。
岐阜県飛騨のお祭りは、泥酔しながらの祭りが多いから、シラフの祭りは新鮮だった。
交差点の過ぎたあたりで見ていたこともあり、立ちねぷたが廻って来る様が手にとるように見えた。
「やってまれ、やってまれ」。
かけ声がかかり、露店で埋まる一本道をねぷたが進んでいく。
電線などを地中に埋め込み、インフラを整備するところから、この祭りはスタートしたんだろう。
高校生が総勢200人くらい、五所川原立ちねぷたかけ声と共に、中型の寿老人ねぷたがやってくる。
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うおぉ~
その背後から、山の巨人「でーたらぼっち」みたいなものが、見えてきた。
ディープブルーのような夜空に、巨大立ちねぶたの一つ目「杭(くい)」が、少しづつ近づいてくる。交差点に差し掛かると、もう、どの建物よりも高い。
高さ22m、幅8mの巨体。五右衛門のような赤鬼が、巨大ハンマーを持って、杭を打ち込んでいる姿。このねぷたに託された思いは鼓動だと言う。今、中心商店街に打たれた文化の拠点という新しい杭には、みんなの夢を希望が託されている。思いを一つに轟け未来に、津軽の鼓動。
17トンの立ちねぶたを、100人くらいで曳く。下に車輪があると言っても、さっきまでの中型ねぶたとは大違い。
このデカさなら、確かに隣町からでも確かに見えたのだろう。
子供たちの賛歌、母の賛歌、父の賛歌、全て総動員で、巨大たちねぷたは曳かれてゆく。
続いて五穀豊穣。これも高さ22m、幅8mの傑作。
テーマは天の恵み。
人間の欲望だけを追求し、環境破壊し続けた結果、地球温暖化現象による天候不順を引き起こしていると言われ、近年の冷夏、長雨は自然からの警鐘であり、少なからず農作物の被害をもたらしている、今こそ自ら戒め、神々に天の恵みを感謝し「五穀豊穣」を祈願したい。
雷神のような三つ目の神様が、雲の乗って、僕たちを見下ろしている。
「やってまえ、やってまえ」
祭りのボルテージは自然とあがり、もう絶叫。
「やってまえ、やってまえ」
そしてラストを飾ったのが、今年完成したばかりの新作、炎(ほむら)。
高さは最も大きい23m、幅は8m。重さは17トン。
テーマは「息災」。
私たち人間は、昔から様々な病に蝕まれ苦しんできた。今は人や動物立ちだけでなく街も不況という病にかかり苦しんでいる。そんな息災を焼き払い、我々や街を救い守って欲しいと、神に願い、息災であることを感謝し、明るい街を創っていきたい。
今までのどれよりも大きい炎(ほむら)は、蒼い狛犬を従え、甲冑に長刀を持った武士が背後に炎を燃やしている。17トンの灯籠が、じわりじわりと進んでゆく。
東北の祭りにかける思いを、この巨大ねぷたとかけ声から感じた。
深い。
ただ騒ぐだけではなく、味のある祭りだった。
                             ノムラテツヤ拝
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