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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

やくそく

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チリの大花園を巡る。
これがテレビ番組の主旨だった。
しかし、自然は水もの。2013年の花園は雨不足のため厳しいものだった。
そこで場所を変えて、チリからお隣の国ペルーへ飛んだ。
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チリのアタカマ砂漠からペルーのリマ周辺までは、太平洋沿岸に一本の砂漠が続いているのだ。昔、花々はここに咲き乱れ、それらが気候変動によって、現在は浮島のように花の咲くスポットが出来ている。
カメラマン、ディレクター、遣都、自分の4人だけの少人数編成で、ペルーへ向かった。道端にチラチラ見えるロアザウレンスの黄色い花たち。遣都がそれを見つけ、花園へ駆けていく。
「やった、やった。花園だ、花園があったぞお~」
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両手を高くつき上げ、涙ぐみながら、こちらを見る。胸がじんわりと熱くなった。
その夜、ペルーの空港脇のホテルで宿泊している時のこと。
遣都が「野村さん、今夜はサシで飲んで下さい」と頭を下げてきた。
そういえば、自分も何度かこんな風に年上の先輩方にお願いしてきたなぁと快諾。
チリから持ち込んでいた美味しいワインを傾け、この旅を振り返っていた。
「遣都、楽しかったな」
彼はゆっくりと頷いてから、まっすぐこちらを見た。
キスされるかと思った・・・・・
というのは冗談だけれど、あまりに真っ直ぐ見つめてきたから、ヤバイと思った(笑)
「僕、言いたいことがあるんです」
「なに?告白とかするなよ。そっちの気は無いからな」
「違います、違います。僕、バッテリーという映画で15歳にデビューしてから、色々な俳優さん、女優さん、大人の人たちに囲まれてきました。でも僕の23年の人生の中で、一番格好良い大人、それが野村さんでした」
本当だったら、若者にこんなことを言われたら、舞い上がって喜び、まぁ飲め飲め、とワインを注ぐところだろう。でも、僕はそんな想いを感じられないまま、過去へタイムスリップしてしまった。
僕が20歳の時、一人の男性と出逢った。
アラスカを撮り続けている写真家の星野道夫さんだ。
前年に、星野さんの処女作「アラスカ 光と風」を読んでファンになり、星野さんをアラスカのフェアバンクスまで追いかけた。なんとか星野さんと出逢い、共に時間を過ごさせてもらった中で、緊張しながら伝えた言葉。それが「星野さん、僕が生きてきた中で星野さんほど格好良い大人を見たことがありません。絶対に星野さんのような写真家に僕もなります」だった。
星野さん40歳。あの時、大好きな師に告白した自分が、目の前の遣都と重なった。
僕は今、39歳。もうすぐ星野さんの年齢になろうとしているのだ。僕はあの時願ったように、少しでも星野さんに近づいているのだろうか?
目を瞑って、星野さんを思い返すと、全然近づけていないことに愕然とする。
もっと、もっと、自分の仕事を愛し、もっと、もっと、真摯に取り組んでいかなければ。自分が命の幕を閉じる時、今よりも少しでも星野さんとの距離が縮んでいると嬉しいなと思うし、そうであって欲しいと願う。
「遣都、俳優業はみんながやれる職業じゃないよね。だからこそ大切にしな。そしてどうせ目指すなら、日本一の俳優ではなく、世界一、宇宙一の俳優を目指しな。周りを沢山幸せに出来るような俳優さんになれ」
「はい、分かりました。がんばりまっす!」
大きな瞳の中に、沢山の星がキラキラと輝いていた。
今、NHKの銀二貫という番組で、素敵な主役を演じている。
迷うこともあるだろうけれど、真っ直ぐ、真っ直ぐ、伸びていって下さい。
                     ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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