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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

世界で一番美しい花

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チリに行った目的は、一面花園だった場所の栄枯盛衰を撮影すること。
そしてもう一つの目的は「世界で一番美しい花」と言われる、アタカマ砂漠の固有種「ガラデレオン(ライオンの拳)」を4K動画で撮影することだった。
でも、出国する前にチリに住む友人のルーチョから、芳しくない連絡があった。
「今年はガラデレオンが咲かない。茎はあるけれど、一輪も咲いていない」
正直、行くか、行くまいか、迷った。
でもこんな時は、いつも心に決めていることがある。
「どちらが楽しいか、楽しくないか?」
行かずに日本で過ごすのと、行ってチリで過ごすのと。
もちろん、後者の方が楽しそう!
もし咲いていなくても、別の出逢い、新たな出逢いが待っているかもしれない。
僕は予定通り、日本を発ち、チリの空港から一路自分の知っている限りのガラデレオンの谷を巡った。
ルーチョの言うとおり、まったく咲いていない。
もうひとつ、さらにもうひとつ。これが最後の谷だった。
海へ下りていく渓谷の右手にそれを見つけた時は、体の奥底から出る雄叫びと、ホッとして脱力する感じが、同時に押し寄せた。そして、そのガラデレオンは、過去に見たどのガラデレオンよりも美しかった。
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ガラデレオンは通常、急な崖から茎を下方へ伸ばし、咲くときにだけ上を向いてポンと咲く。でもこの子は2mもの崖を登り詰め、岩の窪みで見事に咲いている。
一体、ここまで茎をはわせるのに、どれだけのエネルギーを使ったのだろう?そしてここに窪みが無ければ、花を咲かせる場所は何処にもないのだ。
茎を伸ばし、生長した先に、この窪みを見つける。
この時、ガラデレオンは突き抜けるような悦びが全身を駆け巡っただろうか?
そんないのちを想うと、僕は泣きそうになる。
「生命は美しく、そして強いのだ」
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翌日はルーチョと一緒に、今まで訪れたことのない、山奥へ。
ここで大きなガラデレオンを2つほど見つけた。
11月には本格的な乾季がやってくる。
この谷の花は、すべて涸れてゆく。
                   ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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