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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

楽園島

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フアヒネ島は、まるで楽園だった。
ゴーギャンの世界が島全体に息づき、村を散歩すれば地元民が笑顔で迎えてくれた。
海岸部のマラエを撮影していると、笹が擦れるような音が聞こえてきた。
背後の家へ回ると、おっちゃんがバナナの葉で屋根を編んでいた。
世間話をしていたら、あまりに素敵な笑顔。
気持ちを込めて、一枚だけシャッターを切った。
               ノムラテツヤ拝
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聖なるマラエ

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汗が滝のように落ちていく。
獣道を登っても、登っても、うっそうとした森が続いた。
「聖なるマラエ」
テラノちゃんの言うマラエが連綿と大切にされてきたのであれば、必ず出会える。
だって、そこには人々の深い祈りが刷り込まれているのだから。
頂上まであと10分というところで、まるで結界が張られるかのように氣が変わった。
「この辺りだな」
周りを見渡しても、マラエらしきものは見当たらない。
でも、確実にこのあたりにある。
足の踏み跡がないか? 
木々に隠されていないか?
そしてどこからこの氣は流れてきているのか?
まるで見えない地図を探り当てるかのようなワクワク感がある。
ここで誰かに教えてもらっては意味がない。
世の中は出会えるもの、出会えないもので満ちている。
自分にご縁のあるものは見せてもらえるし、その反対もしかず。
ブーロ(黄色いハイビスカス)が道を彩り、間近で見ると、それらは闇に浮かぶ一つの星に見えた。
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さらに上っていくと、一本の大木が。
岩には苔が付着し、荘厳さが漂っている。
ここだ。
僕はカメラザックを下ろし、根元に置いて、まわりを探した。
スレートのような大きな一枚岩に隠れるようにして、美しい頭蓋骨が。
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僕を真っ直ぐ射抜くように見つめていた。
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遺跡を見る、というのは現在を見るのではない。
大切にされた時代に想いを馳せ、そして想いに寄り添うこと。
すると、今日も一陣の風が吹き始める。
それは、森の声、マラエの声、そして彼らの声。
僕は目を瞑って、その声に耳を傾ければ良い。
僕と森の境目が薄れ、やがてマラエの記憶が、体内へ溶け込んでくる。
                 ノムラテツヤ拝 
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マラエ・ペペ

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テファノ・マラエの御神木。その下で佇んでいたら、さっきの清掃員が登って
来た。
「どうだ、美しいだろ。ここには力のあった酋長が埋められていたんだ」
ふふふ、道理でエネルギーも細やかなわけだ。
ここから更に上がったところに「ペペ」という彼が最も好きなマラエがあると
いう。
「もし良ければ案内してあげようか?娘のテラノと話しながら行けば良い!」
と軽くウィンクする。
これも何かの御縁。テラノちゃんに連れて行ってもらうことにした。
山道をかき分けていくと、「これ、ティキよ」と教えてくれる。
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僕の知っているティキではなく、もっと原始的な小さな岩。狛犬やシーサー
のような役割をしたポリネシア文化圏の墓守だ。
ムッとした湿度の中、20分ほど急登すると、森が開き、突然マラエが現れた。
「ペペ1号と、この下に2号があるわ」
マラエからは島が一望でき、さっきまでの湿気が嘘のように新鮮な風が吹き
上がった。
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一枚いちまい写真を撮らせて貰っていると、どうも右側がムズムズする。
「あの山は?」
「あなた何か感じるの?あれは私たちの聖なる山。マラエも全てはあの山が
見えるところに集中しているのよ」
「あそこへは登れるの?」
「2時間くらいかかると思うけれど」
「あの山の中にマラエはある?」
「聖なるマラエが一つある」
「どんな?」
「シャレコウベ(骸骨の頭)が、岩の下からたくさん出て来ているマラエよ」
僕は登り口まで案内してもらい、そこでテラノちゃんと別れた。
「気を付けてね」
振り返ると、獣道が森の中へ続いていた。
                ノムラテツヤ拝
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アンデス文明

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昨夜は藤沢のクラフトビール屋さんで尊敬する2人と飲んだ。
阪根ひろちゃんと敏腕編集長のEさん。
「今までに無い誰もが理解できるアンデス文明(インカ、プレインカ)の本を作る」。それを三人で作ろう、との決起集会だ。
僕とひろちゃんはIPAのクラフトビールを頼み、Eさんは今日はお酒を控えて会話に専念とジンジャーエールを。乾杯のとき、Eさんが「不調法で」と言われた。
2日前、ひろちゃんと鎌倉山で肉を頬張ったことは書いた。その後に鎌倉駅前のカフェ屋に入って、ビールを飲んでいた時、水がこぼれてしまい、ひろちゃんが「不調法しました」と定員さんに言った。
「あの~、ぶちょうほうって何ですか?」
ひろちゃんは目を大きく見開き、「マジ?」という顔をする。
僕も「マジ」と頷いた。
不調法とは
1 行き届かず、手際の悪いこと。また、そのさま。「口が―でうまく言えない」「―者」
2 過失。不始末。粗相。「使用人の―をわびる」
3 酒や芸事のたしなみがないこと。また、そのさま。へりくだった気持ちを込めて用いる。「酒はとんと―でして」
と教えてもらったばかり。そしてEさんのブチョウホウは3の意味で使われた。
日本語って本当に難しく知らないことばかり。
でもこんな二人の会話を聞いていると、今日も知らない言葉が出てきてしまう。
知らないことを知らないままにするなんて、分かったぶりをするなんて、とても勿体ない。だってひとつ知れば、また別の知らないものを知るきっかけになり、別の世界とひっかかる可能性が作られるのだから。
「このインカの本はねぇ」とEさんが言えば、
「そうなんですよ、まさに換骨奪胎ですね」とひろちゃん。
「あの~」
「何よ?」
「かんこつだったいって?」
Eさんがこけた。「野村くん、そんなことも知らないの?」という視線。
「知りません。知りません」
「先人の詩や文章などの着想・形式などを借用して、新味を加えて独自の作品にすること」
さすが日本語の生き字引。言葉って面白いな、と思う。
僕はこんな偉大な年上の先輩たちと、後どれくらい一緒にいて、学ばさせて貰えるのだろう。そんな時間を今まで以上に大切に慈しみたいと想う。
Eさんが本の構成を一通り伝え、ひろちゃんは何度も頷いた。
「僕、今まであなたに隠していたことがあって」。
「なんだよ、良い話か?」
「としさんが亡くなった時、僕のところの夢に出てきたこと、以前に言いましたよね」
「あぁ、聴いたよ。あいつマメだからな」
「あの時、実はとしさんからお願いされたんです」
「ひろしはお前も知っているとおり、すごい男だ。でもあの性格だから、あいつは今までに何も作品とかを残してない。あいつが元気なうちに、生きた証みたいなものを作ってやってくれ」
「おい、本当か?」
「はい、でも信じないですよね?」
「馬鹿、信じるよ。あいつはいつも俺と二人になると、同じことを言っていたから。そうか、としが出てきたんじゃ、やるしかないな」
ということで、本作りが発進できそう。
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プレインカ、インカ文明を俯瞰的に見られるひろちゃんが全体の要素を洗い出し、僕が文章を書かせてもらう。そして敏腕編集長のEさんが料理する。
言葉の知らない僕ですけれど、素敵な作品になるよう、心を尽くします。
                          ノムラテツヤ拝
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テファノ

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森の中を20分ほど歩くと、階段のような跡が微かに残っていた。
上がってみると、現地民が2人で落ち葉を拾っている。
タヒチの宝である、このマラエ遺跡群の清掃員だった。
ハローと声をかけてみる。
「ボンジュール ムッシュ」
やばっ。フランス語だ。
自分がマラエに興味があることを英語で説明するが、ニコニコ笑っているだけ。
「ここはテ・アナという住居跡だ」とゆっくり話してくれる。
あれ、なんで?フランス語が分かる?
今までボンジュール、サバー、メルシーくらいしか聞き取れない僕が何故?
それは、タヒチのフランス語にあった。スペインのスペイン語は流れるように美しい。
それに対して南米のスペイン語はちょっと田舎っぽい。それがタヒチにも言えるのだ。
ゆっくり話すフランス語は、スペイン語の少しだけ似ている。
思い切って英語からスペイン語に切り替えて話すと、彼は大きく頷いた。
「そうか、ならお前にマラエの意味を教えてやろう」と、ひとつだけ色の違う石をどけると、中には人骨や頭蓋骨の欠片が埋まっていた。
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「マラエは墓だ。大切に守られてきた、俺たちの祖先の墓」
ポリネシア全土に渡って、この先祖崇拝文化が残り、各地で呼び名は違っても必ず祭壇(墓)が作られた。マラエ、ヘイアウ、アフ・・・・
彼からこの先に、「テファノ」という大切なマラエがあることを教えてもらい別れた。
緑の輝く道を登っていく。ブーロと呼ばれる黄色いハイビスカスが足元を彩る。
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森の甘い香りに包まれながら更に10分ほど行ったところで、僕の足は止まった。
目の前に大きなガジュマルの大木が、その下にマラエの石が敷かれていたのだ。
それが「御神木」なのは間違いなかった。
大昔から先祖を見守り、そして祈りの対象になってきた聖なる樹。
結界が張られたような気に一礼し、僕は足を踏み入れた。
一瞬にして鳥肌がたち、僕はそのエネルギーに抱かれることになる。
                ノムラテツヤ拝
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