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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

シンクロ

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深夜3時。
バチッと目が覚めた。
「来なさい」。
そんな声が闇の中から響いてきた。
僕は慌てて飛び起き、カメラザックを背負って外へ出た。
気温は10℃を切っていて、風が吹くと肌寒いほど。
いつものポイントへ行くと、マッターホルンは闇の中で浮かんでいた。
「来なさい」。
もう一度、頭の中で確かに声が鳴り響いた。
撮影地へ着くと、今までで一番晴れ渡っていた。
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マニュアルで焦点を合わせ、長時間露光で撮影すると、マッターホルンの奥に無数の星々が流れ、登山家たちのヘッドランプが光の道を作った。
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周りには誰もいない。
目の前のマッターホルンだけ。気高く、孤高で、色に例えれば濃紫、ディープパープルのエネルギー。その氣を浴びた。
初光がマッターホルンを照らし始める。
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赤い。深紅の光がゆっくりと輝きながら落下していく。
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30分後、全てが輝きに包まれ、朝日のショーが終わろうとしていた。
でも、僕は蛇につままれたカエルのように、何故かそこから立ち去ることが出来なかった。
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南側から一条の黒い雲が現れた。一本、また一本とまるで意思を持ったかのように、流れてくる。
そして遂にはマッターホルンを影絵のように浮かび上がらせる。
シャッターを押しながら、僕の意識は飛び始めていた。
ものの1秒くらいだったろうか?
縦雲と横雲が重なり格子を作り上げた。まるで御簾の間からこちらを見透かしているよう。
気付いたら、その格子は崩れ、真っ黒い雲が全てを覆い尽くしていった。
光と闇、そのバランスこそが写真の神髄。
静と動、そのバランスこそが自然の神髄。
僕はマッターホルンとなり、マッターホルンが僕となった瞬間だった。
ようやくシンクロ出来た嬉しさに、僕はありったけの大声をあげた。
                ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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