柳家2016-11-10 Thu 11:37
![]() 「岐阜が大好きって言う割には大したことないね」 突然のメール、それも喧嘩を売られていた。 すぐさま電話し「じゃぁ、行きましょうよ」と受けてしまった。 岐阜にある日本で最も予約が取れない店。そしてここ10年食べログ1位に燦然と輝く店がある。 一見さんお断り、予約は4人以上、値段もお高い。 この3つの理由から、今まで行きたくても行けなかった。 でも、喧嘩を売って来たあんちゃんのお蔭で、スイッチが入った。 「柳家」。 現在の食べログの点数は4.89。ブッチギリ1位だ。 まずあんちゃんと日程を決めてから、電話をしてみた。 やはり一見さんお断りなのだけれど、柳家さんに行きたい想いをありったけぶつけてみた。 女将が電話に出られたのだろう、うんうんと聞いてくれ、「分かりました。どうぞいらして下さい!」と奇跡的に予約が取れた。 集合場所は瑞浪駅。 あんちゃん、ひろちゃん、加藤さん、僕の4人で柳家さんへ。 闇が夜を連れてくる頃、まるで日本昔話に出てくるような家に明かりが灯っていた。赤く色づいたドウダンツツジの道を歩き、引き戸をひいた。 柳家さんは70年の歴史を持ち、40年前から地元の肉を使ったジビエ料理を出すようになった。 従業員の女性たちは全員モンペを着て、手際よく歩き回っている。 部屋へ通されると、ヒノキの梁に杉で作った大きな戸。重厚感の中心地に囲炉裏が切られていた。 大女将が僕たちの席についてくれ、見たこともない大きさの天然鮎を丁寧に焼き上げてくれる。 プレモルを呑みながらつまみのヘボ。一口食べて、曼荼羅のような味に衝撃を受けた。ヘボに生姜と一味が加えてあるのだ。それも絶妙な配合で。 ![]() 「さすが食べログ10年1位の店だな」と静かに頷いた。 日本酒に移行する頃、鮎が出された。 ![]() ![]() 食べて、脳がボーッとした。懐かしいスイカの香り、そして身からは藻の味が立ち昇る。今まで多くの鮎を食べてきたが、これはマックス。そこに「たで酢」を付けてと促される。この魔法の酢のお蔭で、アユの甘みがより引き出された。 ![]() 最高の新鮮な食材に、至高の組み合わせ。 ![]() 大女将の足元には、肉が3段に積まれている。 鹿、熊、イノシシだという。 ![]() まずは鹿から。ヒレ肉の血が美味い。30年の秘伝のタレを少しずつ付けて焼き上げられる。 ![]() 「こいつ、本当に美味しいものを食べると泣くんですよ」 涙が頬を伝う。 ![]() 命を差し出してくれた鹿、それを丁寧に処理する料理人。そして最後に慈しむように焼き上げてくれる女将。その三位一体が体の奥底を振るわせた。 ![]() 熊のロースは脂の豊潤さ、そこにワサビを加えることで、絶叫の味。 ![]() ![]() エゾシカのロースは、ニンニク醤油と合わせるかと思いきや、ユズコショウで。 ![]() イノシシはマスタードと一緒に。 ![]() ![]() 今まで食べたことのない組み合わせに、ショックを受けた。 それは、そのまま命を真剣に日々向き合っているかということを突き付けられたようだった。 ![]() 大女将、女将、大将、そして働かれる皆さんの柔らかな笑顔が素敵。 ![]() シシ鍋は、17年ものの味噌を落とし込む。 ![]() まあるい、まあるい、味。 「女と同じだな」とひろちゃん。 「なんでです?」 「若きゃ良いってものではない!」 「若いのも良いですよね」あんちゃんの一言に、みんなで笑い合った。 大好きな人たちと、最強のシチュエーションで、衝撃の味をたいらげる。 「ここは、もう恒例としないと」 「そうだね、てっちゃん」 「あんちゃん、来年の予約も入れて良いですか?」 「もちろん。もう一見さんじゃないしね」 大女将も、力強く頷いた。 岐阜に日本一、いや世界一のジビエ料理屋さんがある。 味はもちろん、猟師たちとのネットワーク、丁寧な下処理、囲炉裏の場、考え抜かれた肉と薬味の組み合わせ、完璧な出し方。その全てが揃っていた。 ![]() いのちを、どうも御馳走様でした。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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