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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

大きな仕事

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全身全霊をかける、大きな仕事が決まった。
僕は100歳まで生きると決めているけれど、あと8年で折り返し地点。
現在120の国々を訪れているが、50歳到達までに世界193か国(国連加盟国)全踏破をぜひとも成し遂げたいと思っている。
「写真」という仕事はどうだろう?
15歳から撮り始め、22歳で写真家の道を選んだ。自分にとって理想の写真とは、自分自身がいなくなる写真。対象に真っ直ぐ全霊で集中していくと、ある時、自分自身がふっと消えそうになる。最初は怖くて戻ってきていたが、パタゴニアを撮影中、その怖い気持ちを手放した。
すると記憶は飛んでしまったが、大自然や野生動物の中に吸い込まれていく体験をした。そして気づくと、何枚かシャッターが押されていた。
その写真を見て、僕は確信した。これが僕の追い求める究極の写真だと。
そこには自分という個性は入らず、まっさらな無垢の世界が。まるで大自然の前に立っているような「透明感のある静謐な氣」が伝わった。
2年間外国、2年間日本という撮影スタイルで臨んできたのもそのため。撮影国にしっかりと足を付けて集中するため。でも最近、それらが少しずつ変わってきた。
初めての場所でも、自然がまるで手招きするように受け入れてくれる。そして集中すると自分が消え、「撮らさせてもらった」写真が生まれていく。
多分バランスが少しずつ良くなっているのだろう。だからこそ、僕は今、無性に撮影地の現場にいたい。撮らさせてもらえる時に、全身全霊をかけてこの美しい地球を撮影したい。
その想いが少しだけ天へ届いたのかな?
大きな仕事、ワクワクする仕事が、もうすぐ始動する。
                ノムラテツヤ拝
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生死の境

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講演、セミナー、原稿書き。
そして、また新たな講演の用意。
こんな時こそ、プライオリティを整理して、ひとつひとつ手を抜かずに。
今週木曜日の中日文化センター講座はアフリカ編。
昨日から昔の写真(スライドフィルム)を引っ張り出してきては、それらをデジタル化する。
18歳の時にアメリカ一周。19歳はアラスカとニュージーランド。そして20歳で生まれて初めてアフリカ大陸に足を踏み入れた。どうしてもこの目に見たかったケニア・タンザニアの旅だった。
僕がずっと知りたかったもの、それが死。生と死の境界線だった。
だから日々、動物たちの繰り広げられるダイナミックの生死の綾に僕の心は釘付けになった。
動物たちには、各々侵しがたい距離がある。英語で言うとナチュラルディスタンス(自然の距離)となるが、実際の生死の境目だ。
その距離よりも離れていれば、捕食者に襲われない。でも一歩でも内側に入ったら最後、その後には死が待っている。
ある日、ライオンが丘の上からジッと一頭のトムソンガゼルを見つめていた。あと数歩入れば、きっとライオンは走り始めただろう。でも、どうだろう。逃げるでもなく、ガゼルはその間合いをとったまま、ライオンの周りを優雅に歩いていく。
生まれて初めてみる、生と死の軽さだった。そこには生死だけで生きていない野生の世界があったのだ。
遠くサバンナをバックに、僕は望遠レンズを付けて、シャッターを切る。
フィルムの時代は、今のように写真の出来が現像するまで分からない。
露出は間違いなかったか? 手振れは起きてないか?
帰国して、手元にフィルムが来た時は、心臓が体の外から聞えてくるほどドキドキした。
そしてそのコマを発見して、僕は胸を撫で下ろした。
狙う者と狙われる者。そして狙われる者も生死の境を越えて遊ぶことが一枚に集約されていた。
その後の人生で、アフリカの動物たちを何枚撮影したことだろう。
でも、僕にとって、最初の旅で撮ったこの写真こそが、アフリカで最も心に残っている。
                 ノムラテツヤ拝
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箱根のゆき

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箱根は雪だった。
Aさんの別荘周りを、ゆっくりと散歩する。
水分を含んだ重い雪が灰色の空から、真っ直ぐ落ちてくる。
春、夏、秋、冬。
どの季節も好きだけれど、僕はやっぱり冬が一番愛おしい。
雪に当たっていると、心がぽわんと温かくなる。
笹原が、純白のセーターを着はじめた。
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葉っぱの上には、真綿のような積雪。
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雪の縦糸と横糸が舞いながら結ばれ、僕の上着へ付いた。
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深呼吸すると、冷たい森の青き香りが。
やっぱり、僕はこの季節が一番好きだ。
           ノムラテツヤ拝
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初詣

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ハワイ島の溶岩滝。
残念ながら数日前に、崖が崩れて消失しました。
自然は本当に一期一会ですね。
出逢えたことに、感謝して。
HIS主催で、明治神宮の撮影会。
カメラに興味のある老若男女が20人以上集まり、自分が美しいと思う光景を切り取った。
皆さん、芸術肌で、出来上がった作品に、僕の方が勉強させて貰った。
明治神宮のパワースポット。誰が言い始めたのかは知らないけれど、加藤清正の井戸は正真正銘の場だった。
静謐で、しっかり背骨が通っていて。
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僕が訪れた時は、たった一人だけ。
10分ほどそこで存分に気を感じたが、ここもまた元の気に戻すエネルギーを発していた。
世界120ヶ国ほど撮影させて貰っているが、そこへ集中すればするほど、日本の奥深き氣場に驚かされる。
日本だけが凄いなんて、決して言いたくない。
日本も凄ければ、異国も凄いのだから。
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でも、そう言いたい人の気持ちも分かるほど、この国は奥深さに満ち溢れている。
明治神宮が今年の初詣。
「今日まで生かして頂き有難うございます。貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます」
いつも通り、永久に御縁がありますようにと、105円を賽銭箱に静かに置いた。
                 ノムラテツヤ拝
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天才

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天才。
彼ほど、この言葉が似合う男はいない。
神谷隆徳。
10代の時、中華の鉄人・陳健一の元で修行し、20代にしてJR名古屋駅のセントラルタワーズ12F「スーツァンレストラン陳」のメインシェフに抜擢。その味で数多くの人を魅了した。
年が近いということもあり、すぐに友達になり、何度も足を運んだが、神谷くんの作る味は、中華の枠を超えていた。
今まで食べた焼きそばで一番美味しかったものは?と聞かれたら、僕は迷わず「神谷くんの作ってくれた焼きそば」と言う。
麺は翡翠麺。その透明感、そして真っ直ぐな味が、僕の心を温めた。
その彼が、陳を辞めて、故郷の半田で店を開くという。
無限の味を作り出すことが出来る神谷くんは、一体どんな店を味を目指すのだろうか?
JR半田駅からほど近い「中國菜 神谷」にお邪魔すると、いつもの笑顔で出迎えてくれた。
陳さんと時から、僕はいつもお任せ。
最初は鳥の肝とホタルイカの付き出しから。
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肝は完ぺきに下処理され、ホタルイカも絶妙。互いが個性的だけれど、合わせて食べるとまあるい味になる。
冷製の鯖とモヤシは薄く味付け。
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そして香辛料で味付けされた沢あんに悶絶。これって、最強のビールのアテになるんじゃないかしら?
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白菜もまた、鮮度抜群。甘味が口内で広がった。
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「これって」
「うん、半田の地元で取れた白菜」
やっぱり・・・。故郷の食材で勝負するわけだ。
以前エビチリや麻婆豆腐を「レストラン陳」で食べたことがあるけれど、今回のは味が尖らずまあるい。そして麻婆豆腐はより奥深い味。
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まさに滋味だ。カブと中国菜の炒め物も、思わず笑みがこぼれ、身体が喜ぶ味。
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神谷くんが何を求め、どこへ向かおうとしているのか、心にしっかりと伝わった。
そして改めて思う。やっぱり天才だ、と。
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若くして、もう料理人として最終の円熟の味。つまりまあるく滋味深い料理を自在に作り出せるのだ。
「生命をどうも御馳走さまでした。神谷くん、また来ますね」
世界最高の中華シェフが愛知県半田市にいる。
              ノムラテツヤ拝
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