写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

伝説の編集者

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本を作るときに、一つ大切にしている事がある。
「誰に何を伝えたいか!」
そんな気持ちが湧き上がってこないと、なかなか書き出せない。
本の始まりと終わりは見えている。ではどんな中身にすれば、読者がよりドキドキ・ワクワクするだろう?
以前にも書かせてもらったが、僕のモチベーションは世界中誰もやっていないものを作ること。
適当に作っても、真剣に作っても、本作りは時間と労力がかかる。だからこそ、真剣に打ち込める、命を賭けられるものじゃないと、作っても悲しいし、紙の無駄使いだと思っている。
22歳でペンギンの写真集を作り、24歳、26歳で写真エッセーを2冊出した。そして27歳の時、僕は伝説の編集者Eさんと出逢うことになる。
「何のために作るのか? どうしてその文字を選ぶのか?」
例えば10名と10人の違いを考えて、この文字を使っているのか。ちなみに「名」の方がより個人的な意味合いとなる。
トラウマになりそうなほど絞られて、ある時、一度だけ完全に切れた。
「さっきから偉そうに言われていますが、そこまで言うなら、この原稿よりも上手く書けるのでしょうね?」
今から思えば赤面だ。
Eさんは無言で僕の原稿の裏に、黒ペンを走らせた。
「はい、これを読み比べてみなさい」
僕が苦労して得た体験を、読者に分かりやすく、より臨場感を付けてEさんの原稿は書かれていた。
「僕よりも、体験していないはずのEさんが、なぜ?」
僕はその場で土下座した。そして、めぐり合わせてもらった何者かに感謝した。
それから一緒に何冊も作り上げてきたが、いつも思うのは、その俯瞰的な視線。この文字をひとつ入れることで、全体のバランスがどうなるのか? なぜそれが必要なのか? どうやって個々のひっかけながら、完璧な球体のようなバランスを作り上げていくのか?
まるで編集者とは、本の指揮者だった。
昨日から、執筆にとりかかったものの、なんだか上手く流れない。Eさんに電話して、時間を作ってもらい、今までみっちりと薫陶を受けた。自分のやりたいことを話しながら、どうしてそれを書かなければならないのか、それらに一つひとつ相槌を打ちながら、僕の見えない全体像を多角的に見せてくれる。
なるほど、今回の作り方が、自分の中でクリアになってなかったから迷って流れないのだ。
本を作るとき、以前と同じ手法でやるなんて、勿体ない。折角作らせて貰うのであれば、毎回新たな冒険をしながら、本を作りたいと思う。
今回は写真をメインに置き、その力で目から鱗の世界を見せていこう。
僕は死ぬまでにあと何冊、本作りに関わらせてもらえるのだろう? そして何人の編集者と交わっていけるのだろう?
ある近しい人がこう言った。
「若い時から絞られた野村君は幸せだよ。だってEさんよりも厳しい編集者はこの世にいないから」
みんなで笑ったなぁ~。
でも僕の書くという心構えと基礎を作り上げてくれたのは、間違いなくEさんだ。
「私への恩返し? それは皆があっと驚くような素敵な本を作り続けることだよ」
はい、丁寧に積み重ね、14冊目を編み上げます。
           ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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