キスヴィン2018-05-16 Wed 20:13
![]() どうしても、会ってみたい女性がいた。 数カ月前、友人が送ってきたくれた一本の記事。それはこんなふうに始まった。 「ボトルはシャルドネが1本1万4000円、ピノ・ノワールが1万5000円と高級シャンパン並み。サントリーやメルシャンといった知名度のある大手ワイナリーの造るワインには1万円を超える高級ワインもある。しかし、4年前に醸造を始めたばかりの小さなワイナリーのワインに、数千円以上の値段が付くことはまずない。価格高騰の一因は、世界のワイン界の第一人者ジェラール・バッセ氏の「つぶやき」だった。2017年、日本を訪れた際にキスヴィンを訪問したバッセ氏は、発売前のピノ・ノワールを試飲。すぐさまツイッターで、「才能豊かな醸造家が造ったこのワインは、ユニークでセンセーショナル」と発信した。 会いたかった女性の名は斉藤まゆちゃん。僕より6つ年下のワイン醸造家だ。 アメリカとフランスで醸造について学び、それらを山梨勝沼のキスヴィン(ヴィンヤード(ワイン畑)にキスする)ワイナリーで、花を咲かせている。 「既存のものを大切にしつつ、常に既存を疑い、それらを打破していく」 僕は男女問わず、そんな人に惹かれてしまう。 富士吉田に住む友人を介して、河口湖のジビエ料理屋・トヨシマでまゆちゃんと御縁を結ばせてもらった。 キスヴィンワイナリーのスパークリング(甲州)から始まり、猪のパテやハムをつまみながら、ワイン談義。 ![]() まずは直球でまゆちゃんに聞いてみた。 「ワインはよくテロワール(土地)で決まるというのは、どう思ってますか?」 「実は、わたし、テロワールという言葉が嫌いで。最初から良い畑なんてなくて、フランス、アメリカで成功してる有名な蔵は、何世代にも渡って必死に畑に手を入れて来たからなんです。ワインを作るのは人の想い、飽くなき研究と熱い情熱なんだと思います」 くぅ~、しびれる~! ブドウの摘む時期、混ぜ方によるテクニックなどを教えてもらいながら、桜ポークとウドのピクルスに舌鼓をうつ。 ![]() そして、一本、1万4000円のシャルドネがお目見え。 ![]() ワイングラスに注ぐと、レイトハーベストのような黄金色。 ![]() 鼻を近づけると、パイナップルのような香りが漂った。 僕は甘いデザートワインが苦手。もしかしたらそっち方面なのかな?と口に含むと、驚くべきドライさ。シャルドネの華やかさとふくよかさは残したまま、後味はドライに消えていった。 「香りと味わいが、まったく違うんですね」 「わたしのアメリカの師匠の言葉なんですが、ワインの香りを超える味、というのを目指して作っています」 「アメリカ、フランスで学び、そこで醸造家を目指すという選択じゃなく、勝沼で勝負する可能性は何だったの?」 「ワインは土地ではなく人が作るもの、私がそこにいる限り、可能性があるんです。おばあちゃんになった時に、自分の納得できるワインになっていれば良いな」 キスヴィンワインの豊潤な味に皆ほろ酔いになりながらも、まゆちゃんは続けた。 「ワイン界の第一人者ジェラール・バッセ氏がコメントを書いてくれた時には驚いたけれど、実は、やっぱりわたしを見つけてくれましたか!って思った」 この言葉を言えるのは、ただの世間知らずか、誰よりも努力してきた人のどちらか。まゆちゃんは、大学生2年生の時にフランスのコルシカ島でワインと出会い、命を燃やして取り組む道を見つけたのだ。 それはなんと尊いことだろう。ワインの基本をアメリカの大学とフランスのワイナリーでがむしゃらに学び、それらを土台に日本で革新させていく。 ![]() 同世代で、また素敵な夢追い人を見つけた。まゆちゃん、今度はキスヴィンワイナリーで勉強させて下さいね。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
| ホーム |
|