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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

無尽蔵な体力

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深夜11時、船内アナウンスが響いた。
「シロクマが現れました。3時の方向、浜辺を歩いています」
眠ろうとしていた時だったので、慌てて防寒具を着込み、カメラを手にした。
デッキへ出ると、1キロくらい先の浜辺から熊が山へ向かって歩き出している。
超望遠にレンズを付け替えて狙った。
雪原に大きな足跡をつけながら、シロクマは時折、チラッとこちらを見る。
首が長くお尻も大きい。間違いなく雄の立派な成獣だ。
それにしても、どうだろう? この涙が出るほどの、果てなき大自然は。
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山頂付近は雪が深くなり、傾斜も強くなってくる。熊はペースを落とさず上っていくが、アイスクライミングのような急傾斜となったところで、たまらず休憩。
「俺だって、体力の限界っていうもんがあるんだよ!」
まるでそう言っているかのように、口をパクパクとさせた。
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それでも、20秒ほど休むと、またブルトーザーのように勢いよく駆け上がり、ピークを越えていった。
僕はこれから起こる「奇跡の光景」を、まだ知る由も無かった。
            ノムラテツヤ拝
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ウミスズメ

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北極にもペンギンがいる。
正確には、ペンギンのような鳥「ヒメウミスズメ」だ。
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集団営巣地が湾内で見られ、
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それらが飛翔する様は、スバールバル諸島の魂と形容されるほど。
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彼らの卵を狙い、北極キツネや、シロクマが崖を降りてくる例も確認されているというから、重要なたんぱく源になっているのは間違いなかった。
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小さい翼をバタバタさせ、不格好に上がっていくが、一度宙へ浮かべば、空気を切り裂くように飛んでいく。
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グリーンランドでは、人間がヒメウミスズメを網で獲り、それらをアザラシの皮の中に詰めて保存食にするという。何でもその味は、絶品だというから一度食べてみたいな。ツグミのような味なのかしら?
営巣地を離れ、流氷の間を進んでいく。
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あっ、茶色い影が動いた。望遠レンズで覗くと、それは初めて出逢う動物、セイウチだった。
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             ノムラテツヤ拝
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プランジ

Plunge(プランジ)という英語を聞いたことがあるだろうか?
直訳すると、「浸す」とか「投げ込む」とかになる。
初めて聞いたのは今から5年前、Antarctica Plungeだった。
「南極での飛び込み」。
そう、南極の旅の途上で、やりたい奴は南極海へ飛び込もうぜ!というクレイジーな催しだった。
う~ん、どうしよう。。。もちろん、やるっ。だって、面白そうなんだもの。寒いのが好きなので、好奇心の方が勝ってしまった。
腰に縄を縛られ、カラビナで固定。船のデッキから一気に青い海へ目がけてジャンプした。一瞬で体は塩分の高い海へ浸され、顔を出した時は、こんなもんかと思った。だからそのまま戻らずに、少しばかり遊泳する余裕もあった。
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Arctic Plunge。北極海へ飛び込もうぜ! 
またしても狂った催しが開かれ、乗客120名中、19名が参加希望。目の前には氷塊がプカプカと浮いていた。
気温-1.5度。水着で踊り場で待っているだけで寒い。でも、まぁ、南極でもやったんだからと、笑いながらデッキへ降りていった。
皆がカメラを向けている。ふふふ、さぁ、行くぜ!
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海老ぞりになって、海に入った瞬間、体が突然緊急モードに。ビリビリと刺すような痛みが全身に走り、目を開けると、海面がうっすら青く見えた。
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顔を出すと、もう遊泳なんてとんでもない。慌ててデッキへ戻る。踊り場へ戻るときには、もう皮膚が凍り付き、手で擦ると細かな氷がパラパラと落ちた。
うぅぅ、南極よりも全然寒い。よく考えれば、あちらは南緯65度、こちらは北緯83度だもの。もう極点が目前なのだ。
部屋へ戻り、シャワーを浴びようと水着を脱ぐと、目が点に。僕のあそこが皮膚にめり込み、姿を無くしていた。まるですっぽんの頭のよう。「いやいや、出たくないっ」と完全防御態勢に入っていた。
常務する医師から船内アナウンスが入る。
「男性のみなさん、無くなったものは温めれば、また出てきますからご安心下さい」
シャワーを浴びながら、僕は何度も呼びかけた。
「お~い」
           ノムラテツヤ拝
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井の中の蛙

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船での滞在中は、魅力的なレクチャーを受けることが出来る。
今回の船旅は「フォトグラフィー・ツアー」なので、今日はBBCのブループラネットやプラネットアースなどを撮影した、プロカメラマンのスーさんの話を聞いた。
演題は「My life in cold place(寒冷地での人生)」。
南極の皇帝ペンギンの写真や、北極のイヌイットたちとの生活風景、シャチの狩りや、ホオジロザメの撮影秘話、シロクマの子育て風景など、ドキドキ、ワクワクしっぱなしの1時間。皆の拍手で締めくくられると共に、一つ想いが湧き上がった。
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「僕は井の中の蛙だ」。
もっと高く、もっと圧倒的に楽しんでいる人が、こんなに沢山いる。面白い人生とは、魅力的な人と出逢い、そこを追い求めることから可能性が広がっていく。それを生業にしている人は、そんなに多くない。だからこそ、動き、出会い、学び、高みへ向かって精進するのだ。
SVA-June 10, 2018,1718-KWM-1586

誰にでも、なりたい自分がいる。その自分になるために、日々という時間があるのだと思う。
乗客の一人、香港から来たエレンは50歳で早期退職して、2年間かけて世界を旅している。北極は勿論、年末には南極にも訪れるという。エクスペディションチームのチェンは、好きなところに住みたいと、旦那さんと一緒にタスマニア島に居を構え、自然の中で溶け込むような生活している。
僕は、地球のいたる所で遊び尽くしたい。いろいろな生命体と出会いたい。そこで自分が何を感じて、何を思ったのかを、後世の人が少しでも役立つ形で残したい。
だからこそ、写真絵本は、僕にとって生涯のライフワーク。未来ある子どもたちに、世界はこんなに楽しいんだ。こんなに広くて、深くて、圧倒的なことを、文章や詩、写真や動画、ブログやSNSなど使えるものは何でも駆使して、伝えていきたいと願う。
それが僕のやりたいことだし、そのために、この美しい「青き星」へやって来たのだと、北極で実感した。
             ノムラテツヤ拝
SVA-June 10, 2018,1709-KWM-1560
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シロクマの能力

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シロクマの雄は、大きい個体では600キロを超えるが、3キロ以上離れたところから、足場が悪いにも関わらず20分ほど船の真下まで来てしまう。
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その脚力は時速6キロに及び、9日間で687キロ進んだ記録もある。
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16万年前にグリズリー(ヒグマ)から進化し、頭を小さく、毛を長く白く、首を伸ばした。
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右前、左後、左前、右後と足をつき、頭をまるで舵のように振りながら、のっそのっそと歩くが、足音は殆ど聴こえない。
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この大きな肉球が衝撃を吸収しているのだ。
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氷から氷へジャンプ。
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ファサっと雪が舞い、今度は氷山をわざわざ登ってくれる。見よ、この長い脚を。
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どれだけテレビを見ようとも、本を読もうとも、この目の前で見るという体験には敵わない。それを知っているからこそ、人は旅に出るのかもしれない。
            ノムラテツヤ拝
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