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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

初白熊

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ランチを食べようとしている時だった。
「ポーラーベア(白熊)を発見した」と船内アナウンスが響いた。
皆、一瞬で手を止め、自分の部屋に走り出す。カメラを持って、甲板に上がると、何処にもそれらしき気配はない。
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エクスペディションチームのウェインが双眼鏡を覗いていた。
「11時の方向だ!」
船の進む方向を12時として、東西南北を指し示す。つまり進行方向よりも少しだけ左方向だ。
カメラに超望遠レンズを付け、更に電子ズームで拡大する。
どこだ? 
その時、真っ白な雪原にクリーム色の何かが動いた。更に拡大すると、それは寝そべりながら、頭を上げる白熊だった。
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距離にして、まだ3キロはある。昨日の船長とリーダーの判断は間違っていなかったのだ。
ここ2日、まったくと言っていいほど動物が現れなかった。今年は例年よりも雪溶けが早かったため、急遽、更に北に広がる氷床地帯を目指すことにしたのだ。今朝は北緯82度まで上がってきていた。
パックアイスが浮かび、気温はマイナス3度。風が吹いているので、体感はマイナス5度以下だ。船は氷を割りながら、少しずつ近づいていく。2キロ、1キロ、そして500mまで近づいたところで、ようやく肉眼で確認できるようになってきた。そして300mまで寄ったところで、エンジンが切られた。
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「白熊は、白くない」
これが最初に思った感想だ。
白では無くクリーム色、または生成色だ。純白の白い世界にいるから、その薄い黄色っぽさが、目に染みる。
寝ていた白熊は突然立ち上がり、こちらに向かって数歩突進。そして威嚇のポーズをとった。舌は黒色、さすがヒグマから進化しただけのことはあり、皮膚は黒色なのだ。
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威嚇はしているが、まるでぬいぐるみ。この世にこんな愛らしい動物がいるのだ。その生命と僕の時間が、今、重なった。
夢の動物は、今までどれだけ想像したよりも光り輝いていた。
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体に対しての頭の小ささ、そして瞳のつぶらさに、心を鷲掴みされる。白熊の背後に広がる、無数のパックアイス。こんな広い世界の中で生きているのだと思うと、泣けてくる。
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これだけ大きな自然が無いと、1頭の白熊が生きていけないということだから。
威嚇後は、落ち着いたのか、寝転んで、座りこんで、走って、飛んで。
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まるで初めて見る僕に、様々な動きを見せてくれるようだった。
             ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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