初白熊2018-06-17 Sun 17:48
![]() ランチを食べようとしている時だった。 「ポーラーベア(白熊)を発見した」と船内アナウンスが響いた。 皆、一瞬で手を止め、自分の部屋に走り出す。カメラを持って、甲板に上がると、何処にもそれらしき気配はない。 ![]() エクスペディションチームのウェインが双眼鏡を覗いていた。 「11時の方向だ!」 船の進む方向を12時として、東西南北を指し示す。つまり進行方向よりも少しだけ左方向だ。 カメラに超望遠レンズを付け、更に電子ズームで拡大する。 どこだ? その時、真っ白な雪原にクリーム色の何かが動いた。更に拡大すると、それは寝そべりながら、頭を上げる白熊だった。 ![]() 距離にして、まだ3キロはある。昨日の船長とリーダーの判断は間違っていなかったのだ。 ここ2日、まったくと言っていいほど動物が現れなかった。今年は例年よりも雪溶けが早かったため、急遽、更に北に広がる氷床地帯を目指すことにしたのだ。今朝は北緯82度まで上がってきていた。 パックアイスが浮かび、気温はマイナス3度。風が吹いているので、体感はマイナス5度以下だ。船は氷を割りながら、少しずつ近づいていく。2キロ、1キロ、そして500mまで近づいたところで、ようやく肉眼で確認できるようになってきた。そして300mまで寄ったところで、エンジンが切られた。 ![]() 「白熊は、白くない」 これが最初に思った感想だ。 白では無くクリーム色、または生成色だ。純白の白い世界にいるから、その薄い黄色っぽさが、目に染みる。 寝ていた白熊は突然立ち上がり、こちらに向かって数歩突進。そして威嚇のポーズをとった。舌は黒色、さすがヒグマから進化しただけのことはあり、皮膚は黒色なのだ。 ![]() 威嚇はしているが、まるでぬいぐるみ。この世にこんな愛らしい動物がいるのだ。その生命と僕の時間が、今、重なった。 夢の動物は、今までどれだけ想像したよりも光り輝いていた。 ![]() 体に対しての頭の小ささ、そして瞳のつぶらさに、心を鷲掴みされる。白熊の背後に広がる、無数のパックアイス。こんな広い世界の中で生きているのだと思うと、泣けてくる。 ![]() これだけ大きな自然が無いと、1頭の白熊が生きていけないということだから。 威嚇後は、落ち着いたのか、寝転んで、座りこんで、走って、飛んで。 ![]() まるで初めて見る僕に、様々な動きを見せてくれるようだった。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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