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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

究極のゼリー

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折角香港に来たのであれば、お隣のマカオにも顔を出さないと。
1835年に火事で焼失した聖パウロ天主堂、唯一残った見事なファザードの前で、この港町の過去の栄華を想った。まるで清水寺の参道を思わせる細道を下ると、目の前に世界一のカジノ「グランド・リスボア」が聳えたつ。まさに巨大な黄金色のチューリップだ。
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それにしても、世界一人口が密集している地と形容されるマカオは伊達じゃない。人ごみに押され、クラクラしてきたところで尻尾を巻いて、香港へ戻った。
実を言うと、香港に来た最大の理由は、特別な亀ゼリーを食べること。中国南部の香港、広東省などで食べられる中国医学に基づいたデザートだが、15年前に上海で食べて以来、その味の虜になった。その本場では、通常の冷たいゼリーではなく、温かい生の亀ゼリーが店先で売られているというのだ。
土砂降りの中、香港屈指の亀屋「海天堂」へ入った。
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おばちゃんが、「亀か?」と言うので、もちろん亀、暖かいので、と注文。10秒後に出てきたのは、白い陶器に入れられた黒いゼリー。見た目はコーヒーゼリーとなんら変わらないが、うっすらと白い湯気がたちのぼっていた。
レンゲを入れると、プルンと弾力に跳ね返される。
さすが本場、さすが生。
味は、まるで漢方薬。それも超苦い漢方薬でゼリーが作られた感じ。亀の腹甲、土茯苓(ドブクリョウ)などの生薬で作るデザートだけのことはある。
僕は五味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)の中で、最も好きなのが苦み。だからなのか、このあったか亀ゼリーが麻薬のように美味く感じる。そして体がもっと入れろ、もっと入れろと食欲を増進させる。
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亀ゼリーのメニューに効能も書かれていた。
デトックス、便秘、解熱、夏ばて、喉の痛み、痔、美顔効果。
ふふふ、体の内面も外面も、少しは綺麗になったかしら(笑)
              ノムラテツヤ拝
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利苑

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香港駐在の友人、タイチくんの案内で、夜はミシュラン一つ星店「利苑」へ。
「ここのスープと北京ダックは香港一です」
それは、つまり世界一ということじゃ・・・
今から30年前、食在広州(食は広州に在り)とうたわれたが、中国の圧政から逃げるように、世界最高の料理人たちは南部の香港を目指した。それから、ここ香港が中国最強のグルメ都市になったと、幾人の友人から聞いた。
席に座ると、付きだしと共に極上のピータンが。
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それに合わせるように青島ビールを注文。10分ほどすると、キラキラ光る琥珀色のスープが登場。一口啜ると、丁寧に鳥からとった上湯スープに、厚みのある別の味が重なる。
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もういちど啜る。これは間違いなく、鮑のような貝を入れているのだろうな。
「野村さん、こういう薄味のスープお好きでしたよね?」
嬉しいなぁ、味覚の合う友がいるというのは。
そして、メインの北京ダックが運ばれてきた。
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皮を食べた瞬間、今まで一番だと思っていた北京、広州、ペルーの店が遠くに霞んだ。ダックそのものの味が滋味深く、噛めば噛むほど、唾液がアヒル化していくのだ。
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そして、ダックの肉も勿論レタスで巻いてパクリ。くぅ~、さすが香港、間違いなく美味しいわ。
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「2次会、3次会に行きましょう」と誘われ、九龍からフェリーで香港島へ。100万ドルの夜景と言われるだけあり、建造物もネオンの色も攻めていた。
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世界一長いエスカレーターで町を上がっていくと、若者たちが狂ったように踊り、歌い、呑んでいた。
香港、熱いわ。
四方八方からロックやパンクの爆音がはじけ、まるで龍が巻き付くように、街を覆っていた。
            ノムラテツヤ拝
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超密集住宅

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1枚の写真は、断片しか伝えることが出来ない。
だからこそ、その地に自身が立ち、フレームの外側に何かあるのかを探る楽しみがある。
羽田から香港へ飛んだ。経由地として何度も利用しているが、降り立つのは初めて。まず向かったのが、映画「トランスフォーマー」の舞台にされ、一躍世界に知れ渡った超密集した住宅のビル群。
香港島太古駅近くの巨大なイオンモールに驚きながら、そのビルを目指した。少し曲線がかった大きな高層住宅。一つ一つにはエアコンの室外機が付けられ、ぽたぽたと水滴が落ちてくる。これが現地では香港水と呼ばれているらしい(笑)。
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セブンイレブンの脇から中へ入ると、ガラス張りの警備員室があり、そこを越えると衝撃の風景が真上に広がった。
「わぁぁ」。
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それ以上、言葉が繋がらない。
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三面に連なるカラフルな集合住宅と、近代的な高層ビルのコラボレーション。超広角レンズを付けて、一歩、一歩、それらが収まる場所を探した。
ここだ。
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一階には、床屋、マッサージ屋、金魚屋さんなどがたち並ぶ。フレームの外側に広がる世界は、庶民の香りがぷんぷんと漂った。
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小雨降る中、部屋の窓から下がる洗濯物と赤い傘。そこまでして乾かせたい大切な服なんだな、と一人でクックと笑ってしまった。
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さぁ、アジアの雄「香港」を歩きまわるぞ!
ノムラテツヤ拝
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生前葬

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愛知県で一番好きな酒は今も昔も「義侠」。
毎年秋に愛西市の諏訪幼稚園で講演させてもらっているが、10年ほど前、道端に出された義侠の看板をきっかけに酒蔵へお邪魔した。それからカリスマの山田明洋社長とのご縁が始まった。
毎年秋の講演が終わると、2次会に必ず社長は顔を出してくれ、お酒の話や美食の話はもちろん、人生の理念の大切さを教えてくれた。
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今、ざっと自分の名前と義侠さんで調べてみると、以下の記事が出てくる。
義侠 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-127.html
社長のこころ 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-128.html
義侠のこころ 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-date-20091121.html
妙 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-376.html
懐かしいな。でも、山田社長との一番の思い出を記事にしていなかったことに気づいた。
2012年10月29日。僕は諏訪幼稚園で講演を終えて、食堂で山田社長の話を聞いていた。日本酒の楽しみ方、時間のかけ方でどのように変わっていくのかを丁寧に教えてもらい、皆のボルテージが上がっていく。そして幼稚園の関係の深い美香ちゃんのハタチの誕生日を祝うように、20年のビンテージ義侠が出された。
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社長自らが、ワイングラスに注いでくれ味見。
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昭和63年産の義侠は、色が琥珀。注いでいるだけで、トロトロさが伝わってきた。味は、古酒特有の紹興酒っぽさがあるが、その透明感に絶叫せずにはいられなかった。そして飲めば、呑むほど、味が舌をオブラートのように包み込んでいくのだ。
「時間と共にマリアージュしていくから」と笑顔の社長。
5分、10分、15分で完全に花が開いていく。呑むと、ぶるるっと震える味に目を細めていると、20分後から突然、味が落ちていく。
「そう、日本酒はワインと違って、花開くのが早いんだ。もう不味くなっているだろ?」
「まだまだ美味いですが、さっきよりは少し味が・・・」
「俺は日本で最も日本酒の古酒を研究してきたから分かるんだが、こんな風に味が落ちてきたら」と話しながら栓を締めた。「このまま6ケ月、蔵で管理しておくと、花開く前の最初から楽しめる。だから日本酒はワインよりも未来があるんだ!」
あの時の社長のキラキラな瞳は、今も決して忘れることのできない瞬間だ。
その山田社長の生前葬が、名古屋のキャッスルホテルで執り行われた。
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その時の模様は、イケメン息子の昌弘くんが記している。
https://www.facebook.com/masahiro.yamada.925
会場に義侠の新作のお酒が並ぶ中、拍手と共に山田社長が和装で登場。
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ステージ4の癌を患っておられるので、どれだけ痩せているかと心配したが、さすがカリスマ社長。顔はツヤツヤでお元気そうだ。
社長の闘病中、中学高校の同級生が亡くなった。通夜に出た時に、もう一度こいつと飲みたかったと想いを強くし、自分は生きている内に皆ともう一度顔を合わせ、酒を呑みたい!と生前葬を開くことにした。
北は北海道から南は九州まで、社長と関りのある人が200名ほど集まり、こだわり抜かれた生前葬が始まった。
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まず義侠のお酒は、磨きの違う2種。飲みやすい純吟と米の味がしっかりしたもの、どちらもスイスイと入ってしまう危険なお酒(笑)。食事は魚介、
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肉類、鮨、煮つけ、すきやきなどは勿論、
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酒のアテがずらりと並ぶ。塩辛や焼いたカラスミなんて涙が溢れるほど。
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その脇には、義侠のえにしをぬる燗にしてくれる場も設営されていた。
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ピアノ、チェロ、トランペットの演奏会は魂が籠り、弔辞では「来年、生前葬の一周忌をしましょう」と締められた。
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同じテーブルにいた方が言う。
「今日は生前葬という飲み会。ありゃぁ、まだ生きるぞ!。一周忌、二周忌って、それ死ぬ死ぬ詐欺だろ(笑)」
なんて素敵な縁(えにし)なんだろう。こんな事を愛情たっぷりに言い切れるんだから。
最後に社長が奥様に「今まで有難う」って照れながら花を渡すところ、泣いたなぁ。涙、涙で、肝心な場面がぼやけてしまった。
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社長、僕からのお願いが一つあります。
2年後、美香ちゃんの妹、美音ちゃんがハタチの誕生日を迎えます。ぜひ、社長に教えてもらいながら、20年もののビンテージ義侠で祝杯をあげたいです。その日を皆で迎えられるのを、心から楽しみにしています。ほろ酔い美食の生前葬、最高でした。お招き、どうも有難うございました。
            ノムラテツヤ拝
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ナゴヤナイト

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楽しみにしていたナゴヤナイト。
薄味の革命児、大将の高橋忍さんの店「魯忍」で加藤さんと待ち合わせ。
一年前、僕はこの店で、衝撃を受けた。全体的に味は極めて薄めなのに、後味が津波のようにずっと続くのだ。
それはつまり、下処理の丁寧さと、いくつもの手間をかけているということ。忍さんの作られる全てが僕の味覚にヒットした。自分と同じような味覚の料理人がいてくれる幸せを噛みしめていると、最後に鰻丼が出てきた。美味しいんだれど、もしこれが白焼きだったら・・・と呟くと
「僕、白焼きのほうが得意なんです」と、視線が重なった。
シラヤキ、シラヤキ、シラヤキ・・・、呪文のように唱え、ようやく土用の丑の日に、その夢を叶うのだ。
腹を開き、櫛を打ち、そして備長炭でじっくり時間をかけて火を入れていく。身はどんどん盛り上がり、やがてクリーム色に。
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じゃじゃーん。見よ、この厚みを!!!
皮はパリパリで、身はふっわふわ。口内でほろほろと味がほどかれ、清流の香りが広がった。藻の香り、鮎の味、それらが映像として脳裏に湧き上がった。
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忍大将と加藤さんと店の前でパチリ。
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2次会は沖縄料理屋。
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3次会は立ち飲み屋で、名古屋の有名人たちと一献。
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4次会は大人のワインバー。
時計を見ると27時半。
濃密なナゴヤンナイト。
ほんと、名古屋って美味しいわ。
大好きです。
             ノムラテツヤ拝
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