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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

世界の目

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僕がまだ講演で全国を行脚し始める前、愛知県・知多半島のカフェで小さな講演会を開いてもらった。
カフェに地元の方が集まり、僕は写真を交えてアラスカと南極の話をしたと思う。持ち時間は1時間半。話が佳境に入ろうとしたところで、一人の女性Cさんが立った。トイレかな?と思ったら、「お兄ちゃん、私はこれで用があるから帰るけれど、話は面白かったよ、美味しいものが食べたかったら、ここに連絡してきなさい」と一枚の名刺が渡された。
22歳の食いしん坊だった僕は、翌日、すぐさまCさんに電話した。
「昨日、美味しいものがって・・・」
「いつ来る?」
話はとんとん拍子に決まり、5日後にはCさん宅で手料理をご馳走になっていた。料理上手のCさんは、自分の周りに集う若者たちを招き、「てつや、ここでも話なさい!」と講演の機会をくれた。
それからというもの、事あるごとに呼んでくれては、可愛がってくれた。
あるとき、僕は衝動に任せて質問した。
「どうして、そんなにも優しくしてくれるんですか?」
「先行投資」
「何の?」
「てつやは、私の目になってくれると思うから」
「目?」
「世界を見つめる目ね」
そう言われても、あまりピンとこなかった。
「分からなくても大丈夫。そのままで良いのよ」そう肩を叩かれたのを、今でも昨日のことのように覚えている。
アラスカやパタゴニアに通い続けるだけでなく、少しずつ他国に足を踏み入れていくと、世界には多種多様の面白い人たちがいた。僕はすぐさま虜になり、その人たちと多くの時間を重ねた。
そんな時、一人の女性から出版社経由で手紙をもらう。自著「パタゴニアを行く(中公新書)」の読者からだった。
「私は事故による半身不随のため、野村さんのように世界を見ることが出来ません。でも野村さんの書かれたパタゴニアは、まるで私自身が旅をしているような錯覚を起こすほど、ドキドキ・ワクワクさせられました。これが1000円以下で買えるなんて信じられません。これからも私たちのためにお財布に優しい写真家兼文筆家でいてくださいね」
最後の言葉に笑ったが、だからこそ、その後「世界の四大花園を行く」、「イースター島を行く」を中公新書のカラー版で出版し、今も「ウユニ塩湖」を編んでいる最中だ。
この読者の言葉に、僕はCさんの真意を理解した。
「誰もが世界中を旅しながら生活出来るわけではない。だったら、その体験を色々なもので還元するのが、お前の使命でもあるのだ」と。
講演、エッセー、書籍、映画、動画、SNSなどで自分の見たものを表現してきたつもりだが、これからの時代、どうしてもやりたいことがあった。それがAI(人工知能)とVR(バーチャルリアリティ)。どちらもお金はかかるが、誰も見たことのない世界を見続けられる快感がある。もし世界中の絶景や聖地、圧倒的な大自然を360度のVRで提供出来たら。
それは行けない人たちを驚かせ、圧倒されることで、やがて地球を愛することに繋がっていくのではないか?
VRのゴーグルや映写機、巨大スクリーンまで合わせると莫大な費用がかかるが、それを友人のMさんが作り上げてくれた。あとは世界中で、僕が撮影してくるだけ。出来るだけ荷物にならずに、最高画質で提供できるもの。それらを調べた結果、インタニヤの魚眼レンズが最も適していることが分かった。

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でもこの魚眼レンズがいかんせん高い。う~んと悩んでいたら、Mさんが「機材はこちらで用意するから、てっちゃんは撮影に専念してくれれば良いから」と提供してくれることに。そう、人はそれぞれ得意な分野がある。その分野で手を結び合い、世界中の人たちが幸せになることを楽しく創作していけば良いのだ。
今日、家の近くで撮影してみると、まぁ、なんとも面白い。
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これで週末からの海外撮影に出かけよう!
Cさん、これで良いんですよね? 僕はあなたの目になれていますか? 迫力を持ち、スピードを上げて、世界を、地球を突き進みます!
PS,写真をグリグリ押してもらうと、上下左右のVRを体験できます。

           ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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