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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

幻の鹿ウェムル

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中部パタゴニアで最も好きな山、それがセロカスティーヨ。城の山を意味し、ゴツゴツした岩肌は、イタリアのドロミテを彷彿とさせる。その麓を通り、現地ガイドが、「この辺りは野生動物たちの聖域だから、何か探してみるよ」と言っている矢先に、僕らを乗せたバンは急停車した。
何だ、なんだ? 
数台の車がハザードを付け、道路に何人か人も出ている。
事故か?
「テツヤ、ウェムルだ」
うそでしょ・・・
絶滅危惧種の小型の鹿「ウェムル」。僕も今まで3度ほどしかお目にかかったことの無い幻の鹿だ。車を降りると、南極ブナ林の前に一頭のウェムルが立っていた。今まで見てきたものより、明らかに小さい。迷子にでもなったのかな?
更に近づき、岩で盛られたマウンドの上に上がった時、更に2頭が見えた。その内の一頭は、立派な体躯に角が真っすぐ伸びていた。
家族。生まれて初めて、家族単位でウェムルを見た瞬間だった。
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まさしく千載一偶のチャンス。唾を呑んで、息を整える。それから望遠レンズに付け替えた。さっきの子ウェムルが、お母さんの下へ駆け寄る。それをジッと見守り、こちらにガンを飛ばすお父さん。
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毛並みは皆、艶々だ。
野生動物って、どうしてこんなに艶々で光り輝いているのだろう?それは自然の中で生き抜いているという威厳、それとも自然から常にエネルギーを貰っているからだろうか?
お父さんウェムルが、お母さんウェムルのお尻の匂いを嗅ぎ、ペロッと舌を出す。お母さんウェムルは子供のお尻の匂いを嗅ぐ。そう彼らは匂いの世界で生きているのだ。時折鼻を持ち上げるのは、風上にいる僕たち人間の匂いを確認するため。
キー、キー、と小さな声でお父さんが鳴くと、子供とお母さんは南極ブナ林の中へ。それらを確認してから、自分は悠々と砂礫の坂を登り、深い森へと消えていった。
まるで夢のような出逢いに、僕の鼓動は高鳴りっぱなしだった。野生動物たちから学ぶこと、それはとどのつまり、僕たち人間とは一体何なのかを教えてもらっている。
              ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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