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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

ヒグマとの再会

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知床にやって来た目的、それは今秋50名ほどをアテンドするので、そのロケハンと最新カメラ&レンズのテスト撮影。対象は、もちろんヒグマだ。
今までアラスカで50頭以上、知床で20頭以上と対峙してきたが、出逢うコツはひとつ。春先から初夏にかけての気候、天気や気温、湿度などから得られる様々な情報を加味してシュミレーションを繰り返すこと。
「もし自分が熊だとしたら、いつ頃、どんな場所で、何をしている?」
前日までにありったけの妄想を膨らませ、日の出前の午前3時から探し始めた。一昨年、去年と出逢った中で、僕は1つの場所に当たりをつけていた。
宇登呂から知床峠を上がり、そこからちょっと森の分かれ道を行く。ここにいかにも熊が好む斜面がある。それを見渡せる丘を登って行くと、突然腕の毛が逆立った。この近くに何かがいる。野生の気配がどんどん強くなり、舌がカラカラに乾き始める。息を呑んで気配をひそめ、周りに注意するが、僕の存在に気づいたのか、野生の氣がふっと消えた。
目的の丘まで登りきると、対面のフキの茂みがザザッと揺れた。望遠レンズを付け、焦点を合わせる。腕の毛が逆立つと同時に、黒い影が動いた。
間違いない、ヒグマだ。ジッと身を潜めていると、熊が斜面を下りてきた。大きな倒木の前で座り込み、フキの幹から水分を口に運んだ。背後から風が吹く。風下の熊は、僕の匂いを嗅ぎ取り、頭をグッと持ち上げた。
目は穏やかだ。
こうであれば、熊は目の前のことに集中しているので、襲ってはこないが、しばらく森の中にいると距離が縮まってきた。その時、ヒグマの方から「もう少し離れろ!」と目で合図された。
人間と野生動物が決して冒してはならない距離(ナチュラルディスタンス)がある。僕は頭を下げ、静かに山を下りた。
              ノムラテツヤ拝
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シリエトク

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「シリエトク」、アイヌ語で大地の突端を意味し、これが知床の語源になっている。
今日は、宇登呂港からまさにシリエトクの知床岬まで、船に乗った。まず目を瞠るのが、水の王国と呼ぶにふさわしい滝の多さ。鉱物を含んだカムイワッカの滝は、滝つぼがエメラルドグリーンに染まり、日本に2つしかない(もう一つは屋久島)川が海へ直接落下する「海岸爆」は、陽光を受けて虹色に光る。
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エゾシカの群れの前を、一頭の熊が横切っていく。
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最強の熊とは言えど、リスクのある狩りは余程のことがない限りしないのだ。
去年の冬生まれた小熊は、少しだけ大きくなってきた。お母さんの後をついて、ひとつ一つ学んでいる最中。全てのものがキラキラと輝く季節。知床にようやく初夏がやってきた。
           ノムラテツヤ拝
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