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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

シアトル空港

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成田からシアトルまではANA、そこからフェアバンクスまではアラスカ航空の接続だった。
最初、航空券を発券した時は、乗り換え時間が4時間半程あったが、出発の2週間前、突如、アラスカ航空から、「使用便欠航のため、振り替える」と連絡が入った。新しい便の乗り継ぎ時間は1時間30分。シアトル空港の巨大さを考えると、ギリギリの間隔だった。
祈るような気持ちで成田空港を出発し、定刻通りシアトルに到着。皆で急いで入国審査場へ行くと、そこには、目も当てられないほどの長蛇の列が。このままでは駄目だと思い、周りの職員と話し合うが、「時間が厳しくなったら、飛行機会社の職員が迎えにくる」の一点張り。何度もそれらに裏切られたことを伝えても、「これは決まりだから」と前には行かせてくれなかった。
時間はどんどん過ぎていく。30分程列に並んだところで、気持ちを切り替えた。皆には話さなかったけれど、完全にタイムリミットが過ぎていた。
こんな時、大切なのは焦らない、怒らない、当たらない。それらをすればするほど、目の前のことがどんどん複雑化してしまう。今、出来ることは、現状から最悪の場合を想定すること。遅れた場合のフライトの時間を調べ、頼んであるバス会社に連絡し、夕食のレストランをキャンセル、そして宿へ到着が遅れる旨を連絡すること。頭の中でシュミレーションがすべて終われば、もう心がどこかにブレることは無い。
最終的に1時間20分ほど待って、ようやく入国審査。ターンテーブルで荷物を受け取り、アラスカ航空のカウンターへ向かった。
「あまりの入国審査場の混みようで、乗り遅れました。大人数ですが振り替えて頂けますか?」
「これ、全員?」
「はい、何度も職員に掛け合ったのですが、一向に取り合ってくれなくて」
「う~ん、次の便の空きは3名しかないわ」
「その次は?」
「それなら、全員乗れるわ」
「到着時間は?」
「夜の11時過ぎね」
コケそうになったが、仕方ない。ここで騒いでも、何も変わらないことは、今までの経験で分かっている。あとは粛々とアラスカの会社、レストラン、宿へ連絡し、余分にかかるお金の計算をしてもらい、すべて話が付いたのは、それから3時間後。
「どうせ、シアトルに留まるなら、みんなで呑みましょう!」と、四方山話に花を咲かせ、午後8時過ぎに搭乗。夜中のアラスカ・フェアバンクス空港は、まるで白い恋人の世界だった。
パッキーンと張り詰めた空気感、一瞬で凍る鼻毛。これは軽く-20度を超えているな。もう少しで宿というところで、一台のトラックがスリップして側道に落ち、レッカー車で引き上げられていた。
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10分くらい道が開くのを待っている間、可愛い毛糸の靴を履いた警察犬を皆で見せてもらい、イケメンポリスの話に大いに笑った。
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「人生とは、何かを計画しているときに起きてしまう、別の出来事のこと」
師の星野道夫が敬愛した、シリア・ハンターの言葉が、脳裏に浮かんだ。
それは、言い換えれば「何が起ころうとも、目の前にある『今』を楽しむこと」に尽きる。
レッカー車が無事にトラックを引き上げ、僕らは山頂にある愛すべき宿へ。
「皆さん、お疲れ様」
車内は拍手で覆われ、外に出た。
「えっ」
北の空に、オーロラが姿を現わした。
               ノムラテツヤ拝
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アラスカ | コメント:0 | トラックバック:0 |

2020年オーロラ隊発進

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2020年のアラスカ・オーロラ隊が始まった。
死ぬまでに必ず見て欲しい自然現象は3つ。間近で見るクジラ、スーパーブルーの氷河、そしてこのオーロラだ。
ギリシャ神話の暁の女神を語源とするオーロラは、アラスカではノーザンライツ(北の極光)と呼ばれ、住む人たちに希望の光を与え続けている。ひとたびそれらに包まれれば、自然からの愛に涙が溢れ、地球に抱かれるとはどういうことかを体感できるはず。僕は今までオーロラを150回以上見上げてきたが、一つとして同じ色合いや動きが無いことも、魅力の一つだ。
今回のアラスカ隊は、総勢17名。成田から飛行機が離陸し、アメリカ本土のシアトルへ。富士よりも高いマウント・レーニアが聳え、近未来を思わせるスペースニードルが怪しく輝いた。僕たちはまだ、これから続くシアトル空港の恐ろしさを知る由も無かった。
                ノムラテツヤ拝
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アラスカ | コメント:0 | トラックバック:0 |

尾道水道

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瀬戸内海で最も風光明媚な地と言えば、やはり「尾道」だろうか。
坂の多い街並みは、大林監督の三部作(転校生、時をかける少女、さびしんぼう)でも有名だ。ロープウェーに乗って見下ろすと、昨日通ってきた尾道水道が弧を描くようにして流れていく。その時、頭に弾けるものがあった。
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最高の時間帯に、しかるべき場所で、撮りきる。
すると、今まで見たことのない「尾道水道」が姿を見せた。
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写真は、想像の産物。その視点を作るために、日々の積み重ねがある。
              ノムラテツヤ拝
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日本 | コメント:0 | トラックバック:0 |

鞆の浦

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宮崎駿監督が社員旅行で初めて訪れた鞆の浦。
海と山はもちろん、古い町並みあり、人情ありのこの地に惚れこみ、その後、何度も足を運んだ。その甲斐あって、完成したのが「崖の上のポニョ」。その地を自分の足で歩いてみたかった。
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現在、新たな橋を架ける働きがあったが、鞆の浦の人たちは「昔のままが良い」と頑なに固辞。映画のシンボルだった常夜灯や自然石で海上に伸びる波止、そして匂たつ生活の香り。
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海へ目をやると、弁天島に仙酔島。昔から海の要衝として栄えた港らしく、ここはまさに海神(ポセイドン)が眠る地。細い路地を歩けば、まるで神社の境内に入ったかのよう。まさにご神域だった。
            ノムラテツヤ拝
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仙酔島

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「仙人は森の中に住み、夕陽を眺めながら酒を呑む」
だから、仙酔島(せんすいじま)。
それらを眼前で見せてくれるような素晴らしい夕日だった。
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雲が焼け、海に落ちる太陽道に、船が一艘、また一艘と帰っていく。
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夕日が沈むその瞬間、森の木々が真紅に染まり、妖艶な雰囲気が漂った。
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鞆の浦港へ戻ると、まあるい満月におおきな暈が。
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さぁ、我らも仙人に負けずに、夜中まで呑みますか。
               ノムラテツヤ拝
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