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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

天気の子

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今まで何度、この人に助けられただろう。
パタゴニア、マチュピチュ、ウユニ塩湖、アイスランド、イースター島。いつも、困った時は、傍らに「ひろちゃん」がいた。
今から10年前のパタゴニア旅で、ひろちゃんはある神秘体験をした。それ以降、不思議なことに、「天気」を自由自在に動かせるようになった。
「そんな馬鹿な」
今までどれだけの人々が、そう言って疑いの目を向けながらひろちゃんと旅したことか。でも、旅が終わる頃には、99%の人が、その力を目の当たりにして頭を垂れた。
グアテマラの活火山Pに登っているもそうだった。麓からはまるで屋久島のような深い霧に覆われ、1m先が見えるか見えないほど。口数が少ないまま、一歩一歩登っていくが、誰の目にも今日の登山は失敗に思えた。僕の後ろをヒーコラ登ってくるひろちゃんは文句たらたら。「なんで俺がこんな辛い思いをして登らなきゃならないんだ・・・」
「ひろちゃん、頂上で天気の子を見せるチャンスですね」
「うるせぇっ」
そんなやりとりを経て、なんとか頂きへ。相変わらず濃霧に覆われ、皆の顔は落胆した。
ひろちゃんを見ると、天へ手を高々と上げ、祝詞をあげている。拍手を4回ほど打った1分後、雲間から薄い光が差し込んだ。
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「みんな、来ますよ、空を見ててください」
雲はまるで神々に指令されるように、一気に動き、谷間を流れ始める。
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ものの30秒もたたないうちに、すべての雲が消え、目の前にP火山が雄姿を現した。
「みな、ひろちゃんに盛大な拍手を」
「おぉぉ~」、登頂した面々、ガイドたちからも拍手喝采だ。
「おいテツヤ、見たか。おれって、本当に神様に愛されているよな」
自信満々のドヤ顔で、ひろちゃんは、僕を見下ろした。
「だって、神様なんでしょ」
「おっと、忘れてた。そうだ、俺、神様だった」
               ノムラテツヤ拝
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さくらのきせつ

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僕の故郷は岐阜県なので、有名な淡墨桜がある。
散るときに薄い墨を引いたような色から名づけられた、日本で2番目に古い老桜だ。
幼い頃から、何度か連れられる度に、「どうして薄墨桜には、こんなにもおじいちゃん、おばあちゃんが集うのだろう」と不思議に思っていたが、45歳にもなってくると、その気持ちがほんの少しだけ分かってくる。
桜のつぼみが花開き、人生を謳歌して、散っていく。それを自身の人生に重ね合わせているのかと思っていたけれど、違う。おじいちゃん、おばあちゃんたちが見ているのは、もっと深いところ。満開でもなく、散り際でもなく、きっと葉をつけ、紅葉し、落葉した後の姿。骨格だけになった冬、じっと静かに次の春のために準備している姿に、心を揺り動かされるのだと思う。その先の満開は、おまけみたいなもの。でも、不思議。樹皮に手を当て、「冬を越してお疲れ様」と呟くと、風が吹き抜け、桜が話しかけてくる。
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「命に境はなく、多動しながら、全体で生きている」
そう、聴こえたような気がした。
               ノムラテツヤ拝
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