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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

写真の不思議

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相手に敬意を込め、感謝して写真を撮影する。気持ちは変わっていないのに、その中で妙に売れる写真と、全く売れない写真が出てくるのは何故だろう?。
僕たち写真家がベストショット、または自信のある写真というのは、大抵思い入れが強い写真だ。何年もかかってようやく撮れた写真、奇跡に成功したショットなど。でも、写真家という職業を長年させてもらっていると、その乖離に悩む時が訪れる。
「どうしてこの自信のある写真ではなく、こちらのカットを選ばれるのか?」と。
21歳の時の処女写真集出版を皮切りに、エッセーや写真絵本などを14冊編む中で、巻頭グラビアを担当する中で、様々なクライアントたちと共に仕事をする中で出た答えが、僕なりにある。
よく写真家志望の若者たちから受ける質問に、「良い写真はどうやったら撮れますか?」がある。断言する。良い写真、または悪い写真など無い。写真自体に優劣など1㎜も存在しないのだ。
ただし、撮影した人が、どうしても伝えたい、と強く想う写真はある。それが世に出る写真・・・という訳ではなく、後世に残っていく写真というのは、その一枚後に撮った写真になることが多い。
ここだ、と思った時には、きっと体に力が入っている。でもそのショットを押し込んだ瞬間、脳には快楽物質のエンドルフィンが溢れ、恍惚状態となる。その次、またその次と、押し込んだ写真は、大抵記憶がない。
その無意識で撮影した写真こそが、伝わる写真になるのだ。だって、自分という我が無くなり、透明人間になる。「風景」→「写真家」→「鑑賞者」の写真家という部分が消え、「風景」→「鑑賞者」となる。つまり、その風景の「氣」が誰にも邪魔されることなく、ダイレクトに相手の心へ振動していくのだ。
ベネズエラのギアナ高地を空撮していたこの写真もそうだった。カレンダー、高校の教科書、雑誌の表紙、テレビ番組、今まで使われた機会は数知れない。大切なのは、「力を抜くこと」、そして「無意識に繋がること」なのかもしれない。
              ノムラテツヤ拝
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ベストショット

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イースター島には、かれこれ20回ほど通い続けているが、初期に撮影したモアイ像の写真が、とても思い出深い。
フィルムのカメラを使い、何度も通った海辺のモアイ。今のように誰もが写真を撮る時代でなかったので、撮影はいつも僕一人だった。
良く晴れたある日、満月が昇ってから海へ落ちていくまでを、ずっと撮影していたことがある。20代の僕は、バイトをしてはお金を貯め、それらをすべて旅につぎ込んだ。帰国したら、またバイトをして、そのお金で現像するという日々を送っていたので、今と比べてシャッターを切ることにとても集中し、1シャッターがとても重かった。
「これは本当に撮るべきなのか?無駄にならないか?いつもそんな風に迷っていた」。
通常、月が沈む時は、海に水蒸気が上がり、見えなくなることが多いが、この夜は、最後まで四方八方に美しき光が降り注いだ。黄金色に浮かび上がるモアイ像の神々しさに、息を呑みながら、シャッターに手をかける。
露出計で光を測り、フィルムの感度は50なので、シャッタースピードは20秒。あとは無事に映り込んでくれ、と祈り続けるだけ。画角を変えて、撮影位置を変えて、1枚、また1枚と手を合わせた。
そんな光景をモアイは見ていてくれたのかな? 帰国後、現像されたスライドフィルムには、あの時の空気感までもが映り込んでいた。
「イースター島の写真の中で、ベストショットはどれですか?」
誰かにそう問われたら、僕はきっと20年以上前に撮らせてもらった、この2枚を挙げるだろう。
               ノムラテツヤ拝
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