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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

そらのちから

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空を見ていると、心が中性(元気)に引き戻されていく。
昔から言われる叡智だが、もし自分の心の投影が、外部の世界に映されるのであれば、空の景色とは、自身へのアドバイスなのだろう。太陽光の屈折率で、雲に虹色が付くことを彩雲と言う。湿気のある空には、七色の雲が踊り、別の空にはマトリョーシカのような女神が太陽を抱く。
「どうしてこんな光景を見せてくれるのか?」
その疑問を持つか、持たないだけで、人生は少しずつ変わっていくのだと思う。その時の自分が、その時の迷いが、大空というキャンバスに描かれる芸術でほどかれていく。
          ノムラテツヤ拝
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真鶴

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熱海に1年住んでいたというのに、どうして僕はこの半島を探検しなかったのだろう。
この頃、特に想う。人間は見たいものだけしか見ないし、知りたいものだけしか知らないと。
日本47都道府県に足を踏み入れ、世界150カ国を撮影してきた。でも、僕らは常に灯台下暗し。
コロナ禍で、地元を歩くと、あれも、これも知らなかったことにゾッとする。
熱海周辺の海岸部を眺め、突端になるのが真鶴半島。陸側からでは不便なところも海側からはゲートウェイとなり、当然神々を迎える聖域となる。古今東西、世界中に共通するこの事実を知っていれば、間違いなくこの真鶴は探検する地となるのだ。
僕は100歳まで地球を遊びきると決めているが、それでも残り54年。自分の足で自在に動けるのが80歳だと仮定すると、たったの34年しかない。世界の残り43か国に足を踏み入れることと共に、僕がやらなければならないことは決まってくる。
勉強だ。もっともっと学ばないと、目の前の風景の奥が見えてこない。時間がまったく足りない。ソフトバンクの孫さんが言うように、僕らの時代は人生200年時代になるのかな? そうすれば少しは余裕が出てくるのに。
風景をただ綺麗なだけでは終わらせたくない。僕はその奥に潜む歴史、記憶、命の本質を感じたい。地球は美というカケラの集合体。だからこそ、一景ずつ心の栄養にしていくのだ。
          ノムラテツヤ拝
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絶景世界51

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地下鉄に乗ったときのこと。
椅子に腰掛けるお兄ちゃんと弟、そのお母さんらしき人の前で立っていた。メキシコの地下鉄は予想以上に混雑し、中では色々な物売りが歩いていた。弟が恥ずかしそうに、僕のほうをチラチラ見ては、お母さんに耳打ちしている。サングラス越しにそんなやりとりを見ている内に、突然お兄ちゃんが話しかけてきた。
「どこから来たの?」
「んっ? あぁ日本だよ」
すると後を追うように「どこに住んでるの?」と弟。
2人とも坊主頭をつき合わせ、瞳を輝かせながら聴いてくる。サングラスをかけていては失礼だと思い外すと、「あっ、お兄ちゃん素敵!」なんて、からかわれる始末。
「住んでいるのも日本だよ。今、メキシコを旅してるんだ」
弟が少し頭をかしげ、お母さんに小声で言う。
「あのお兄ちゃん、どうして日本に住んでいて、僕たちと同じ言葉が話せるの? どこかに先生がいるのかな?」
「聴いてごらんなさいよ」
褐色の肌のお母さんが、弟の背中を押す。
「お兄ちゃん、言葉の先生はいるの?」
「数年前から南米を旅していてね、そこで色々な人と話すことで言葉は覚えたんだ」
「それだけ?」と今度はお兄ちゃん。
「うん、それだけ。でも話したいっていう想いが強かったから」
2人の瞳はさらに煌めき、まるで宝石のようだ。
「何処に住んでいるの?」
弟は興奮してしまって、心と記憶と言葉がうまく繋がらない。同じ質問を何度も繰り返してしまう。
「日本っていう国に住んでいるよ」
「ふ~ん。どんな国、綺麗?」
「うん、メキシコも綺麗だけど、日本も自然が沢山あって綺麗だよ」
アニメの面白さ、日本人の習慣、経済のことまで話しが及んだ。
きっとこの子たちは、生まれて初めて日本人と直に触れたのだろう。ひしひしと興奮が伝わってくる。こんな子供たちを見ていると、どうしても期待に応えたくなってしまう。それはきっと、自分の過去と深くリンクしているのだ。
僕は幼少の頃から、岐阜の山の中に住んでいた。父の職場が岐阜ユースホステルということもあり、そこに家族みんなで住んでいた。その頃、うちのユースは外国人の旅行手引き書「ロンリープラネット・ジャパン編」にこう書かれていた。。
「面白いペアレント(ユースでは支配人の事をペアレントと言う)のトークと、絶景の夜景は筆舌に尽くしがたい」と。
そのせいか、毎日代わる代わる多様な国から旅人がやって来た。そして夕食時には、食堂で一緒に母の手料理を食べた。僕は外国から来たお兄ちゃん、お姉ちゃんと話したくてしょうがなく、モジモジしながらも常時、動きを目で追っていた。そんな姿を見つけられては、父に背中を押され、ワケのわからぬ怪しい英語や今も変わらぬ大きめのジェスチャーで少しだけ話し、また恥ずかしくなって戻ってくる。あのドキドキ感は、今も僕の魂に宝物のように深く刻まれている。
子供にとって何を質問するかはどうでもよく、あの人と話し時間を重ねたという事実がとびきりの嬉しさとなる。僕と目を見て話してくれたこと。それが何よりも大切なのだ。あの時の自分が、椅子に腰掛けるお兄ちゃん、弟のような気がした。
「今度、僕、日本に行くね!」
「僕も~」と弟が続く。
「いつでもいいよ、待っているからね」
僕も何度、外国から来たお兄ちゃんお姉ちゃんにお願いしたことだろう。
『世界は広大だ。そして足下の世界は、もっと深遠だ』
そのことを感じる、学ぶためにも、どんどん外の世界へ旅立って欲しい。大切なのは、とにかく一歩あゆみ出ること、進み始めること。
「じゃあ、またね」
兄、弟、お母さんと握手をし、最後にまた手を出してきた弟の手をギュッと握った。彼らはこちらを振り返り、振り返り、出ていった。
地下鉄が動き出すと、兄弟は、ブンブンと手を振って見送ってくれる。旅人が現地民とふれ合い、笑い、触発される。異国という距離の遠さが、お互いの心を近づけてくれるのだ。
                           ノムラテツヤ拝
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