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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

誰よりも早く

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誰よりも早く、どこよりも先に。
これがサガリバナツアーを成功に導くための鉄則だ。
総勢17名はまだ夜空に夏の大三角が輝くなか、現場へ到着した。
前夜から17人分のカヌーを浜に並べ、準備は万端。パドルのレクチャー、カヤックの注意点を知らせて、後はとにかく凪いだ海に入ってやってみる。キャッキャ言いながら、前へ、後ろへ、左右へとカヤックを滑らせる。大体感じを掴んだところで、いざ川を遡上する。煌々と輝く月が川面に映り、目を凝らすと星々も水面に揺れた。
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パドルを上げてもらい、皆でその星々の映る様を共有する。きっとこんな場面が、後から振り返った時に、思い出として深く刻まれるのだ。
ヒョロロロロ、漆黒の森からアカショウビンの声が響き、ポチョン、ポチョンとパドルが水面へ入る音が重なり合う。
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夜のマングローブ林は、皆の冒険心を掻き立て、この先にある天界へ想いを馳せる。世が白み始める頃、僕らは目的地に着いた。バニラとクチナシを足したような香りが充満し、気持ちが高ぶってきた。
             ノムラテツヤ拝
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圧倒的な星空

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サガリバナ隊が始まった。今回集ってくれたのは総勢17名。
コロナ禍にも関わらず、沖縄の非常事態宣言にも関わらず、よくぞ集まってくれた。
まず、最初にお連れしたのは、一年に一度だけ開けてもらえる秘密の森へ。
ここは西表島の長老の私有地なため、なかなか夜の許可をもらうことは難しい。
今回は宿の社長も含め、交渉を重ねて、ようやく開かずの扉が開いた。
見て欲しかったのは、サガリバナは勿論だけれど、この圧倒的な星空。西表島は日本国内で最も空が暗く星が美しいとされる場所。
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地平線に寝そべる巨大な北斗七星やポラリス、心臓の赤いサソリ座などが天空に輝く。
「てっちゃん、わたしコロナ禍で忘れていたわ、星ってこんなに美しくて、沢山あるものなのね」
1人の女性は、この星空を見上げて泣いていた。
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そう、僕らはこんな圧倒的な光景を見上げ、自分を見つめる時間を作るべきなのだ。
最初は騒いでいた仲間たちも、一人、二人と静かになり、星空を通して自分を見つめている。
巨大なシダの森に入れば、星々はさらに宝石のように煌めく。その光を映して、仲間たちも輝いた。
                 ノムラテツヤ拝
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絶景世界104

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深夜3時。
バチッと目が覚めた。
「来なさい」。
そんな声が闇の中から響いてきた。
僕は慌てて飛び起き、カメラザックを背負って外へ出た。
気温は10℃を切っていて、風が吹くと肌寒いほど。
いつものポイントへ行くと、マッターホルンは闇の中で浮かんでいた。
「来なさい」。
もう一度、頭の中で確かに声が鳴り響いた。
撮影地へ着くと、今までで一番晴れ渡っていた。
マニュアルで焦点を合わせ、長時間露光で撮影すると、マッターホルンの奥に無数の星々が流れ、登山家たちのヘッドランプが光の道を作った。
周りには誰もいない。
目の前のマッターホルンだけ。気高く、孤高で、色に例えれば濃紫、ディープパープルのエネルギー。その氣を浴びた。
初光がマッターホルンを照らし始める。
赤い。深紅の光がゆっくりと輝きながら落下していく。
30分後、全てが輝きに包まれ、朝日のショーが終わろうとしていた。
でも、僕は蛇につままれたカエルのように、何故かそこから立ち去ることが出来なかった。
南側から一条の黒い雲が現れた。一本、また一本とまるで意思を持ったかのように、流れてくる。
そして遂にはマッターホルンを影絵のように浮かび上がらせる。
シャッターを押しながら、僕の意識は飛び始めていた。
ものの1秒くらいだったろうか?
縦雲と横雲が重なり格子を作り上げた。まるで御簾の間からこちらを見透かしているよう。
気付いたら、その格子は崩れ、真っ黒い雲が全てを覆い尽くしていった。
光と闇、そのバランスこそが写真の神髄。
静と動、そのバランスこそが自然の神髄。
僕はマッターホルンとなり、マッターホルンが僕となった瞬間だった。
ようやくシンクロ出来た嬉しさに、僕はありったけの大声をあげた。
                ノムラテツヤ拝
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