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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

最強の蟹

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僕の大好物は3つ。鰻、蟹、納豆だ。
特に蟹は目がなく、日本全国を旅するようになった10歳から、海外を旅するようになった18歳からずっとウマい蟹があると聞けば駆け付けては貪った。日本国内では間人ガニやヤシガニやヅガニ、海外ではカングレッホや沢ガニなどを愛してきたが、ある時、北海道に住む巨人と出会った。
「お前は蟹が好きなんだって?どれが一番好きだ?」
「そんなの決められません。みんな美味しいんですから」
「毛ガニはどうだ?」
「もちろん好きですよ」
「よし分かった。その眼を見て決めた」
翌年、巨人は僕の目の前で、見たこともない大きな毛ガニを取り出した。
「本当に美味しい毛ガニは1キロ以上のもの。そしてこれを食べたら、蟹界のトップが何かが分かる」
巨人自ら茹でてくれ、完璧な頃合いで頂くと、それはまるでデザートだった。蟹味噌はマロンのような香りが鼻に抜け、身は濃いのに極めて上品な味。僕の体は警報を出していたのだろう。出された日本酒は一口も口に付けず、僕はただ、ただ無言で食べ続けた。1.2キロの毛ガニをたいらげると、巨人は聞いた。
「で、世界中で一番ウマい蟹は?」
「ぐぬぬ、、、1キロ以上ある毛ガニです」
あの頃を境に、僕はウマい蟹を探す旅を止めた。だって、蟹の王様と出逢ってしまったら。でも、もちろん松葉も香箱もモズクも頂きますよ。そう、比べることを止めたのだ。あの毛ガニは、別物だったのだと言い聞かせて。
仕事が立て続けに入り、さらにトンガ義援金で身動きが取れなくなり、さらに八戸講演の用意、そしてこれからラジオの収録と死にそうになっているときに、玄関のチャイムが鳴った。
「佐川ですけれど」
荷物を受け取る時に、「クール便です」と言われた。
中を開けると、驚いたことにイカツイ毛ガニが僕を睨んでいた。
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げげげっ。それも1.3キロある毛ガニだという。
こんな時間の無い時に・・・、でも、でも、とやっぱり蟹の魅力に負けて氷水で解凍。300~500gなら3時間くらいで解凍できるが、1.3キロの毛ガニだと一体どれくらいかかるのだろう?
原稿を作り、メールの返信をしながら、ちょくちょくその溶け具合を見る。八戸講演の写真選定に頭を悩ませ、ラジオに出演しながら、また蟹の元へ駆けつけてしまう。そうして、夜の9時、8時間のときを経て、巨大毛ガニに朱色が戻った。
「むははは、むははは」。訳の分からぬ声が出てしまう。
ふんどしを取って、一気に甲羅を外す。
「でたーーーーーっ」
そうそう、巨大な毛ガニは、蟹味噌が異常に詰まっているのだ。
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一口舐めてみると、やっぱり記憶通りのマロンの香りが抜けていく。あっ、あっ、あっ。蟹味噌、腕、体、爪、またしても一気に、貪ってしまう。手のひらを見ると、ギャランドゥの毛や小さな角が刺さって、血が浮いている。それでも構わず食べる。目の色が変わるとはこういうこと。
「ふぅ~食べたぁ! 長生きはするもんだ」。
目の前には、一滴も飲まれていない日本酒が、僕をジッと見つめていた。
                ノムラテツヤ拝
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突破

合掌熊

義援金は初速が大切。体に沸き上がった時に動き、道すじをつけて後は全力で走り抜ける。気持ちや想いが一番大切だけれど、それと同じくらい義援金も大切なことは皆が知っている。みんなで生かさせてもらっている地球だからこそ、地球上の何処かが被災していれば新たな関係を結びたい。
今朝10時21分、無事に義援金が200万円を突破したので、トンガのしかるべき機関へ送金させてもらった。被災した人たちが最も落ち込んでいる今こそ、送ることで何かが変わると信じている。さぁ、第二弾、第三弾と送り続けますよ。皆さま、力を貸して下さいね。明後日は八戸講演なんだけれど、バタバタしていて写真すら組めない。
https://www.kokuchpro.com/event/nomuratetsuya/ (定員300名中、参加者280名)
これはもしや、ぶっつけ本番、何もせず向かいなさいってことなのか? いやいや、八戸に集う人たちが来て良かったと思う温かな講演会に必ずしましょうね!
             ノムラテツヤ拝
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義援金の現在

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1月20日9時現在、義援金参加人数250名、寄付済み135名、合計175万5789円になっています。
皆さま、温かなお気持ちを本当に有難うございます。まずは切りの良い200万円を超えたら、トンガ大使館へ振り込みますので宜しくお願い致します。
この美しき碧き地球を、たくさんの人たちの思いやりと真心、強い想いで抱きしめましょう。そして被災されたトンガの人たちが一日でも平穏な生活に戻るよう祈りましょう。皆さまと繋がれて良かった。まだまだ、でっかく行きますよ!
PS,沢山の方が義援金希望のメールを送ってくれるのはとても嬉しいのですが、ドコモメールやauメールなどから届くと、返信しても跳ね返されてしまう事例が頻発しております。もしも僕の方(fieldvill@gmail.com)へ送っても返信が無い方は、別のメールアドレスから送って頂けないでしょうか? 送られてきたメールには必ず返信しておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
               ノムラテツヤ拝
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新世界写真94

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アラスカ、カナダ、ニュージーランド、ペルー、チリ、アルゼンチン。
今まで数多くの氷河と対峙してきた。最も蒼き氷河は、やはりチリ・アルゼンチンにまたがるパタゴニア。でも、アイスランドにそれらを凌駕する氷河があるという。早速出かけてみると、確かに今まで体験したことのない色の世界が広がっていた。
雪が圧縮されることで氷になる。その時に酸素がどんどん押し出され10%以下の酸素量になった氷、これが氷河だ。でもそれらが更に研ぎ澄まされていくと、蒼いクリスタルになる。アイスランドの氷河の末端でもある氷舌に、ぽっかりと空く黒い穴。アイゼンを付けて入っていくと、思わずうめいてしまった。青いクリスタルのような巨大なトンネル。それらが外からの光を受けて、まさにグランブルーに光り輝いているのだ。
「どうして氷河が青いか知っているかい?」
ガイドが聴くので、それらに答えると「確かにそれも一理ある。でもアイスランドでは、氷河は太陽の七色の光を封じ込める唯一のものと考えられている。だから氷河の端をアックス(つるはし)で割ると、屈折して七色に光り輝くんだ。その中の最も高貴な色、青色が僕たちを祝福するために届けられているのさ」
素敵な、すてきな話だった。圧倒的な蒼きトンネルがアイスランドにある。翌日も出掛けたが、この日は大雨で、洞窟内は3mの洪水となり入ることすら出来なかった。1月に入ってからの入場確率は40%。すべての条件が揃った時にだけ、こんな特別な場所に、人間は招いてもらえるのだ。
            ノムラテツヤ拝
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