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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

人生の織物

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「旅」とは、とどのつまり、縦糸が時空、横糸が出逢いで紡がれる織物だ。
生まれた瞬間から人は死に向かって走り続ける。その人生の持ち時間で誰と出逢い、何を観て、どんな体験をするのか。それらが日々連綿と織られ、やがて自分がこの世を去る時、人生という織物の模様となる。美しい織物もあれば、きっとほつれたものだってあるだろう。それらをどのように仕上げていくかは、毎日を大切にすること、日々を丁寧に積み重ねることに尽きる。別の言葉で置き換えれば、『生きていることを感謝し、謙虚に周りと向き合い、自分の御機嫌は自身で取ること』。相手に期待するのではなく、自分を信じ、目の前に現れるの大切な人が楽しめるように、笑ってくれるような時間を共に紡いでいくのだ。
今、トリエステからローマへの機上で、この文章を書いている。眼下には、朝日に染まった雲が川のように流れ、青く透明な空が広がっている。今回の旅は、ずばり三部構成にした。第一部はトルコ(キプロス含む)を縦横無尽に、第二部は北イタリア(モナコ、サンマリノ含む)を嘗め回すように、そして第三部は大切にとっておいたポルトガルと北スペインへ。言葉もトルコ語~英語~フランス語~イタリア語~ポルトガル語~スペイン語と百花繚乱だ。さぁ、機体が最終着陸態勢に入った。もうすぐ花の都・ローマです。
               ノムラテツヤ拝
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トリエステの道

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写真の師でもあった星野道夫さんから、大切な言葉を受け取った。
「これからの写真家は、写真だけでなく、文章も必要だから、毎日書き続けるように」。
20歳で出逢い、これからもその時間は永遠に続くと思っていた。その矢先、22歳の8月に星野さんはロシアのカムチャツカで熊に食べられ、天へ還られた。羅針盤を失った僕は焦り、友人の勧めで南極へ。そこで撮った写真で、処女写真集を作ったのが23歳のとき。「ペンギンがくれた贈りもの」という写真集を編集してくれたRさん。信用できる大人が少なかった僕は、Rさん思い切って聞いてみた。
「若い時にこれだけは読んだ方が良い、そんな本を教えてもらえませんか?」。なりふり構わない僕に、Rさんは的確に答えてくれた。
「野村君なら、2人の本を読んだ方が良いかな」
「誰です?」
「開高健さんと須賀敦子さん」
まずは開高さんの本を読んで、その一文字一文字をひねり出す、新たな地平を切り開く造語の世界観の虜となった。開高さんの本をすべて読破してから、今度は須賀敦子さん。その静謐さ、透明感が、全細胞に染み渡った。特に印象に残っている本が、「トリエステの坂道」。イタリアの孤高の詩人「ウンベルト・サバ」を日本語に翻訳するにあたり、彼女がトリエステを旅するという本なのだが、サバに負けず劣らず、孤高の透明感で言葉を紡ぎ出し、丁寧に結んでいた。
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その世界観に魅了された僕は、「いつかトリエステに立つ」という夢を持ち、48歳でようやくこの町にたどり着いた。彼女の本の舞台でもある、ウンベルト・サバの古書屋。ここで、書店の主人と盛り上がり、須賀さんの四方山話を聞かせてもらった。
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インターネット、ARやAI、チャットGPTなどで盛り上がる昨今、人と人が出逢い、溢れる想いが手渡される世界がある。僕は、古い人間なのかな。やっぱり人と人が出逢い、それらが渡されていく世界が好きでたまらない。ようやく須賀敦子さんの大切な場所へやって来ることが出来た。トリエステ、また、僕の大好きな町が増えました。
           ノムラテツヤ拝
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新世界写真487

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「昨日はどうしてブログを有料にしないかを教えて下さり有難うございました。もう一つだけ質問があるのですが宜しいですか? 野村さんは私が読ませてもらった限り、自由自在に生きているように見えますが、それによって何か失ったものはありますか? また若い時に何か注意していたことはありますか? Kより」
うぐぐ、また22歳の若者からの難しい質問が・・・、若い時には、そんなに注意して生きていませんよ、あっ、今もか・・・、でも、それだと納得はしてもらえませんね。質問の答えになるかどうかは分かりませんが、成りたい自分になるために積み重ねてきたことはあります。何かのきっかけとなればいいのですが。

「好きな時に、好きな場所に、好きなだけ」。これが幼少の頃からずっと思い描いてきた、僕の成りたい大人像だった。
野村家の家訓で10歳から一人旅に出させられ、18歳までには47都道府県全てに足を踏み入れた。大学生になると、自然と視線は世界へ。「男はやっぱアメリカだろ!」と訳の分からぬ妄想と共に、アメリカをぐるりと一周。20歳の時にアラスカで写真の師となる星野道夫氏と出逢い、恋に落ちた。写真家の道を歩む!と決めても、どれだけアラスカにいたい!と願っても、やはり続かないのがお金の問題。家庭教師、競輪場の警備員、ラボの写真屋さんとバイトをしながらコツコツお金を貯めては、また旅ですっからかん。帰国してからはフィルムの現像代すら無かった。どうすれば、好きな時に、好きな場所に、好きなだけ行ける人生になれるのか? それには、時間もお金も体力もバランス良く保持しなければならないのだ。時間と体力は自身の努力で管理するもの、ではお金はどうだろう? 自分がいくらシャカリキに働いたところで、たかが知れている。そんな時に、僕はパタゴニアの最南端でヤーガン族のおばあちゃんと出逢った。
「嫌いな人っていますか?」
「貯める人よ」
「何を?」
「何でも。食料を貯める人、愛情、勇気、お金、自分のためだけに貯める人を私は軽蔑する」
「なぜ? お金って貯めなきゃ貯まらないでしょ? 愛情だって、貯めなければ寂しくなるでしょ?」
「違う。血が体内を絶えず流れるように、すべてのものは止めちゃいけない。愛情もお金も受け取ったらどんどん外へ流す。絶えず流せば、より大きなものがまた別のところから流れこんでくる。地球が回るように、すべてのものは流転しているのよ」
この出逢いこそが、あの時の僕を間違いなく救ったのだと思う。お金は稼ぐものではなく、流れてくるもの。つまりお金を流してあげたいと思う人を目指せば良いのだと知った。それをシンプルに表すのなら、稼ぐことを目的にするのではなく、人の繋がりや信用を大切にする生き方にシフトすること。目の前に現れてくれた一期一会の相手を、出来る限り大切にする。人の噂話や悪口は決してしない。もし言いたいのなら直接本人に言う。周りが幸せになるために自分が何をすれば良いのかを常に自問自答する。僕たちはこの世を一人だけで生きていくことは出来ない。だったら周りにいてくれる人たちが、世界で一番幸せであって欲しい。48歳になった今、それらの道は、僕の原点に繋がっていることに気付かされる。
「好きな時に、好きな場所に、好きなだけ」。
最近は、人生の先輩方から、「てっちゃんも40代後半になったんだから、自分の本当に好きなことを、より迫力を持って、スピードを上げて取り組みなさい」と言われている。何もしなければ、何も生まれない。今と同じ場所にい続けるなんて器用なことは出来ない。であれば、僕はどんどん時代の風を掴んで進んでいきたい。
南アフリカのワイナリーのオーナーになる。昔からの夢だった飛行機のパイロット免許を取る。今154カ国渡航しているから、残りの39カ国を訪れて世界193ケ国すべてに足を踏み入れる。そして大好きな場所で、世界中の仲間達と一緒に笑い合える空間と時間を創る。人生とは不思議なもの。見方を変えるだけで、結果が180度変わっていく。その鍵となるのが、「周りの幸せを想うこと」、そして「自身のご機嫌を自分でとること」に尽きるような氣がする。

こんな感じで、少しは何かを感じてもらえたかしら? 若い時は迷うもの、でも、僕らも日々迷ってるんですよ。安心してください、迷いや悩みが全く無い人なんて、この世に1人も存在しませんから。
             ノムラテツヤ拝
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