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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

而今

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屋久島の深き森で、ヤクジカの親子と出逢った。
「お久しぶりですね」
鹿語で語りかけると、ヤクジカは目を丸くして寄ってくる。
「あら、てっちゃん、元気してた?」
「はい、この一年間、楽しくやっていました」
命は而今(じこん)いう枠で絡まり、螺旋状に巻き上がる。そう、出逢いとは光の交換、そして溶け合うものだ。
        ノムラテツヤ拝
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快晴フライト

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屋久島を訪れること15回、でも、ここまでの快晴フライトは初めてだった。
鹿児島指宿の開聞岳を越えると、右側奥手に噴煙をあげる硫黄島が見えてくる。
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機体はゆっくり最終着陸態勢に入り、屋久島の島影が。モッチョム岳が前方に聳え、後ろに九州最高峰の宮之浦岳が見える。
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右巻きに旋回すると、島の全貌がプロペラ機の下に広がった。
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1年ぶりの屋久島空港、さて今回はどんなディープツアーになるのかな? 阪根ひろちゃんと共に、全身全霊でアテンドしてきます。
         ノムラテツヤ拝
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新世界写真563

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水田に夕日が輝き、一台の車が走り去っていく。
こんな風景を見ていると、涙がこぼれ落ちそうになる。
そして日本は美しいな、としみじみと熱い気持ちが湧いてくる。
仕事を終えて、東京駅から東北新幹線で北上した。
夕闇が迫る頃、遠くに女性が横たわったような優美な山が見えてきたら、目的地はすぐそこだ。
盛岡。
この雅な町に、沢山の友人が住んでいる。そしてスーパーマンもひとり。今夜はそのお方と一献。
佐々木孝太郎さん、僕たちは「こうちゃん」と呼ぶ。
今まで自分が主催させてもらった海外ツアーは約20種に及ぶが、その中で、全てに参加された唯一の人、それがこうちゃんだった。
10年前からは「こうちゃんツアー」と銘打ち、ギアナ高地、ガラパゴス諸島、南アフリカ、ウユニ塩湖、南極、ナミビア、ペルー北部、アイスランド、とこうちゃんの行きたい場所へ。一昨年の喜寿(77歳)の誕生日には、ペルー北部の秘境、チャチャポーヤスでお祝いさせてもらった。
去年、アイスランドを旅している途中、こうちゃんから「帰国したら手術を受ける」という話を聞いた。
病名は食道ガン。
こうちゃんは持ち前の心の強さで手術を成功させ、僕もお見舞いに駆け付けた。それ以来の再会だ。
レンタカーで家へ向かうと、こうちゃんが家の脇で待っていてくれた。
「もうすぐ来るかな、と思って」
久しぶりに抱擁すると、こうちゃんは痩せていた。
「よく噛んで食べないといけなくて、20キロも痩せた」
県の文化財でもあるこうちゃん宅に上がらせてもらい、奥様の紀子さんの手料理を頂いた。フキ味噌やウルイ(ギボウシ)など春の味を楽しみ、タラやウド、コシアブラの天ぷらまで。
「これって?」
「うちの庭で取れたんだ」
まさにオラの山菜だった。
お酒を酌み交わしていると、ポツリとこうちゃんが話し始めた。
「この前、パスポートが切れてしまって、どうしようか悩んだ。でもやっぱり、旅がしたい。歩きたいって思って」
「更新されたのですね?」
「うん、10年ものを」
来年には80歳のこうちゃん。僕は自分が80歳になったとき、果たして10年有効のパスポートを更新できるだろうか?
人間は、特に男性は、年を経ればとるほど、家の中から出なくなる傾向がある。それなのに、こうちゃんは退職してからも、世界各地を一緒に歩き倒しているのだ。
今年のこうちゃんツアーは、スペインのバスク地方。
「今はなかなか食べられないけれど、少しずつ。少しずつ。必ず11月までには食べられるようになっているから、ぜひ今年もひとつ」
こうちゃんが静かに頭を下げ、僕は涙が溢れそうになった。
誰にでも頭を下げられる大人でいたい。ふんぞり返ったり、胸を張り続けるのではなく、僕はしなやかに頭を下げられる人でいたい。こうちゃんのように。
紀子さんに優しい視線を送りながら、
「ほんと、世界をたくさん歩かせてもらったなぁ。良い友達もいっぱいできたし」
その言葉を聞いた瞬間、僕は一瞬でチリの首都サンティアゴでの体験に引き戻された。
その日は昼食を食べに市場へ行こうと計画していたが、こうちゃんが熱発したため、行くのを迷っていた。気持ちを察したこうちゃんは「絶対に行く!」と皆を引っ張り、市場で静かに話し始めた。
「年になると、友達っていうのが少なくなっていく。まず定年して激減し、それからはひとり、またひとりと友達がこの世を去っていく。それは本当に寂しいもんだ。でも、俺は幸せだ。この年になっても毎年、ツアーに参加してこんな素敵な友達が増えていくんだから」
そこにいた全員が、こうちゃんの気持ちに打たれて号泣した。
僕たちは生命のバトンを渡され、次世代にそれらを渡していく役目を担っている。
年齢を重ねても外側へ出ていく人と内側へこもる人、その差は一体どこにあるのだろうか?
僕はこうちゃんというスーパーマンに出会えて良かった。
痩せてはいたけれど、顔は出逢った頃のように艶々とし、目力はしなやかで強い。
今年も、是非やりましょう。最高のこうちゃんツアーを!
ノムラテツヤ拝
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