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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

富士山の夕焼け

富士夕照(c)

感動した。
最近、天気がコロコロと変わり、富士もなかなか顔を出さない。森を散歩中、一瞬だけ頂きが見えることもあったが、あとは雲の中に隠れていた。昨日の朝も空は快晴。急いでカメラザックを担いで富士へ向かうが、残念ながら厚い雲をまとっている。難しいなぁ~と、首をかしげながら戻ってきた。
そして、その時間(とき)は訪れた。
夕食を作っていると、森が黄金色に染まっている。窓から顔を出すと、夕日が光り輝いていた。もしやと思い、家の前から富士を見ると、バッチリ顔を出している。カメラザック、三脚を担いで、撮影ポイントへ向かった。
夕方のはんなりした色に染まった富士、それに青空を見て、まずは一枚目のシャッターを切る。そして手を合わせる。「ようやく見せてくれましたね、有難うございます」
雪はほとんど溶け、中腹あたりも新緑に覆われてきていた。
残照(c)

しばらく見ないうちに、どんどん変化してゆく富士。そんな姿に自分も変化しているか?と自問自答する。
「変わる部分と、変わらぬ部分、大切なのはそのバランスだ」
やがて雲が風にあおられるように湧き上がり、そこに夕方の黄金光が差し込むと、神々しい姿になってくる。
黄金の時間(c)

パタゴニアから帰ってきて、実をいうと我を失う、武者震いするような体験があまり無い。住んでいる場所も、家も、素敵なんだけれど、でもあの圧倒的な体の芯を貫くような深い感動、その後に押し寄せる、ボーっとする時間が少ないような気がする。
富士の残照は消え、僕は三脚をしまおうとした。そして帰り道、振り返ると、また雲が赤くなりつつある。色があせたのは、夕日が雲にかかっていただけなのだ。
僕は、すぐさま走り、元のポイントへ。
日本は夕日が落ちるのがパタゴニアに比べて速い。どんどん雲色が変化し、染まる。
夕焼け(c)

さっきの僕の言葉を富士が聞き入れてくれたように、そこからは見事のショーとなった。
透明感ある紅色が、雲をひとつ、またひとつと染め上げ、富士の西側に光のリボンを作る。まるで富士山がそのリボンをストールにしているように、風になびいてゆく。
富士夕焼け(c)

富士周辺にピリピリした空気感が張りつめ、僕は日本でもパタゴニアでも同じ事を知る。
どこにも感動がある。小さな感動から、圧倒的な感動まで。
自然は全て繋がっている。心もみんなと繋がっている。
空は重厚さを増し、真紅の雲は、そう伝えてくれた。
富士で初めての圧倒的な夕日。
僕は、こんな夕日と、あと何度出逢うことができるのだろう?
自然の計らいに感謝して、僕は頭を下げた。
                               ノムラテツヤ拝
深紅(c)
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テーマ:自然の写真 - ジャンル:写真

日本 | コメント:3 | トラックバック:0 |
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コメント

感動しました! 流石プロですよね。 電信柱が写ってないから最高!
2009-07-13 Mon 07:41 | URL | 爺 [ 編集 ]
ピンク色の夕焼け空が大好きです。でも富士の夕焼けは燃えるように赤いですね!すごく雄大な感じがして力が湧いてきそう。何かが伝わる写真ってすごいですね♪
先日、大山行男さんの富士の写真もWEBで少し拝見して迫力のすごさに驚きました。素晴らしかったです。

2009-07-13 Mon 22:49 | URL | yoshimi [ 編集 ]
爺様へ
喜んで頂けて光栄です。いつも見て頂き、有難うございます。

よしみ様へ
確かに今回の富士の夕焼けは燃えていました。自然はいつもいつも違う姿を見せてくれる。それが尊くて愛おしいのでしょうね。大山さんの写真、凄いですよね。
あんな写真が撮れれば良いのですが。
                野村哲也拝
2009-07-13 Mon 22:58 | URL | Tetsuya nomura [ 編集 ]

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