エゼキエルのこころ2016-01-26 Tue 10:43
![]() フィッツロイトレッキングのガイドは、エゼキエル。 まだ20代の若き青年だった。 「このグループはどんな集まりなんだい?」 「みんな仲間たちだよ」 「こんなに年齢差があるのに」 「うん」 エゼキエルははにかむように微笑んだ。 そして、トレス湖までの急斜面を登っているとき、突然コンドルが目の前 を飛翔した。 「うわぁぁぁぁ。うぉぉぉぉぉ、すごーーーーい!」 みんな、思い想い感嘆の声を上げると、エゼキエルは、また笑った。 「今まで沢山の日本人グループをガイドしてきたけれど、君たちのような のは初めてだよ」 「どういうこと?」 「日本人は、スペイン語や英語を話さないっていうこともあるんだろうけ れど、僕たちからはシャイに見える。日本はテクノロジーのとても高い国、 コンドルが出ても、あぁ、コンドルなら知ってるよってな顔をする人たち が多いんだ。でも君たちときたら。まるで子供のようにはしゃぐように喜 ぶんだから。こんなハッピーなグループを見たことがないよ。有難う、色 々な日本人がいるんだね!」 氷河湖畔で泳いでから、絶景の展望地へ。 ここで僕は、愛すべき男、フージオの散骨をした。 ![]() フィッツロイとトレス湖が展望できる奇跡のような一角に、遺骨を蒔いた。 「今日も生かして頂き有難うございます」と手を合わせると、風の中にフ ージオの声が混じった 「∞の∞の感謝だよ」 ![]() 頭を下げてザックを背負おうとすると、エゼキエルが話しかけてきた。 「何に頭を下げているんだ?」 「フィッツロイの山とか、大空とか、湖とか」 「あぁ、そうか、それなら僕たちの国にもある。アルゼンチンの北部は、 大地などに祈りを捧げる」 「インカ文明圏だものね、アプ(山)、パチャママ(大地)、ビラコチャ (インカの創造神)とかに」 「そうそう、僕もその思想を支持している。ところで白い粉のようなもの を蒔いていたけれど、あれは?」 「秘密」 「そっか、それなら良いんだ」 その話し方があまりに自然体だったから、僕はフージオのことを話した。 大好きだった男のことを。 エゼキエルは、黙って僕の話を聞いてくれた。 「僕はガイドとして、2日に一度はここにやって来る。今回こんな素敵な グループと出逢ったのも何かの縁、そして君が愛する男が、ここに眠ると いうのであれば、僕は毎回、この地に来るたびに、今日を思い出しながら 手を合わせるよ」 涙が溢れそうになったけれど、僕は天を見つめた。 「フージオ、良かったね。いかにもあなたが好きになりそうな男と友達に なったよ」 暖かな七色の光が降り注いだ。 それがフージオの言葉だった。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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