写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

生死の境

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講演、セミナー、原稿書き。
そして、また新たな講演の用意。
こんな時こそ、プライオリティを整理して、ひとつひとつ手を抜かずに。
今週木曜日の中日文化センター講座はアフリカ編。
昨日から昔の写真(スライドフィルム)を引っ張り出してきては、それらをデジタル化する。
18歳の時にアメリカ一周。19歳はアラスカとニュージーランド。そして20歳で生まれて初めてアフリカ大陸に足を踏み入れた。どうしてもこの目に見たかったケニア・タンザニアの旅だった。
僕がずっと知りたかったもの、それが死。生と死の境界線だった。
だから日々、動物たちの繰り広げられるダイナミックの生死の綾に僕の心は釘付けになった。
動物たちには、各々侵しがたい距離がある。英語で言うとナチュラルディスタンス(自然の距離)となるが、実際の生死の境目だ。
その距離よりも離れていれば、捕食者に襲われない。でも一歩でも内側に入ったら最後、その後には死が待っている。
ある日、ライオンが丘の上からジッと一頭のトムソンガゼルを見つめていた。あと数歩入れば、きっとライオンは走り始めただろう。でも、どうだろう。逃げるでもなく、ガゼルはその間合いをとったまま、ライオンの周りを優雅に歩いていく。
生まれて初めてみる、生と死の軽さだった。そこには生死だけで生きていない野生の世界があったのだ。
遠くサバンナをバックに、僕は望遠レンズを付けて、シャッターを切る。
フィルムの時代は、今のように写真の出来が現像するまで分からない。
露出は間違いなかったか? 手振れは起きてないか?
帰国して、手元にフィルムが来た時は、心臓が体の外から聞えてくるほどドキドキした。
そしてそのコマを発見して、僕は胸を撫で下ろした。
狙う者と狙われる者。そして狙われる者も生死の境を越えて遊ぶことが一枚に集約されていた。
その後の人生で、アフリカの動物たちを何枚撮影したことだろう。
でも、僕にとって、最初の旅で撮ったこの写真こそが、アフリカで最も心に残っている。
                 ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

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