黄泉比良坂2018-03-28 Wed 17:10
![]() リマ空港隣接のホテルで一泊して、翌日フリアカへ飛んだ。 予定ではリマ~ラパス(ボリビア)に飛ぶ予定だったけれど、乗り遅れたことによって、大幅に旅程を変えることになった。 朝まで雨が降っていたフリアカは、白い霧にけぶり、そこへ揺れながら着陸。バスで一路、琵琶湖の13倍もあるティティカカ湖へ向かった。 ![]() ここは定期巡行船が通る、世界一高い湖であり、プレインカ文明発祥の地とも称えられる聖地だ。 ![]() 道脇にはもうすぐ収穫を迎えるキヌア(アカザ科)が、たわわに実を付けていた。栄養価の高いスーパーフードは、ここが故郷なのだ。 ![]() 走り始めて3時間ほどで、ゴツゴツした岩の連なりが見えてきた。まるで、シャスタのような風景に見惚れていると、ひろちゃんがポツリと呟いた。 「この近くに、昔から大切にされている次元の扉があるんだけれど、寄ってみる?」 「次元の扉ですか?」 「うん、俺はよく分からないけれど、そう言われているんだ」 急遽、行き先を変更できるのも、我らの旅の強み。皆も行きたいと同調してくれた。 今日、僕たちのガイドについてくれたのは心優しきウィリー。博学なのは勿論、スピリチュアルな世界にも精通していた。 「この遺跡は昔からシャーマンたちが集う聖地とされ、ティティカカ湖の中で最も大切にされてきた」 連れていかれた場所は、大きな一枚岩に、自然に彫られたという石の扉。その両脇に縦に走る溝があった。 ウィリーから祈り方を教えてもらう。 ![]() 真ん中の扉に一人が入り、両脇にも立つ。すると何かが起こるという。 ![]() 扉の中には、更に四角に彫られ、中央にくぼみがある。おそるおそるそこに額を付けた瞬間、僕の目の前に母方のおばあちゃんの顔が浮かんだ。 ![]() ビックリして額を外すと、何も見えなくなり、また付けるとおばあちゃんが向こうからこちらを見ている。 これって、もしかして。次元っていうのは、現世と黄泉のこと? おばあちゃんは僕をじっと見つめ、あの優しい笑顔でほほ笑んだ。その瞬間、嗚咽と涙が溢れ、僕は崩れるように岩にしがみついた。 大好きだったおばあちゃん、その向こうにはおじいちゃん、父方のおばあちゃんの姿、更に向こうには光の玉がいくつも並んでいた。 「生命の樹」 親の2乗の先祖がいて、自分は現世の代表者。その先祖たちが、ずっと奥に続いている。 皆が逢いにきてくれているのだろうか? 涙をぬぐい、額を離すと、額の中央に穴が開いたような感触が。ここは次元の扉ではなく、まさに現世と黄泉を繋ぐ目だ。窪みをよく見ると、向こうから人が覗いているように見えてくる。 ![]() 次の瞬間、プレインカ時代の風景が浮かび上がった。シャーマンたちはここで祈りを捧げることで、黄泉との繋がる道を額に作ったのだ。 天から雨がポツリと落ち、ズボンにシミが残った。それは不思議と冷たくなく、暖かな涙のようだ。 パツパツと、その涙は大地を濡らした。 「てっちゃんの言うのは、まさに黄泉比良坂(よもつひらさか)だな」 ひろちゃんが背後から声をかけた。 「よもつひらさか」とは、日本の神話において、生者の住む現世と死者の住む他界(黄泉)との境界を指す。 ![]() いっぱい泣いたからか、無性に小便がしたくなった。アンデスの草むらで、用を足すと、暖かな雨が更に強くなった。 それは天からの声、いや、現世、黄泉、そして来世から届く伝言だった。 ノムラテツヤ拝 ![]() ランキングに参加しています。“地球の息吹”を楽しくご覧下さった方は、ぜひ1日1回「人気ブログランキングへ」ボタン ![]() ![]() |
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