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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

生前葬

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愛知県で一番好きな酒は今も昔も「義侠」。
毎年秋に愛西市の諏訪幼稚園で講演させてもらっているが、10年ほど前、道端に出された義侠の看板をきっかけに酒蔵へお邪魔した。それからカリスマの山田明洋社長とのご縁が始まった。
毎年秋の講演が終わると、2次会に必ず社長は顔を出してくれ、お酒の話や美食の話はもちろん、人生の理念の大切さを教えてくれた。
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今、ざっと自分の名前と義侠さんで調べてみると、以下の記事が出てくる。
義侠 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-127.html
社長のこころ 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-128.html
義侠のこころ 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-date-20091121.html
妙 
http://fieldvill.blog115.fc2.com/blog-entry-376.html
懐かしいな。でも、山田社長との一番の思い出を記事にしていなかったことに気づいた。
2012年10月29日。僕は諏訪幼稚園で講演を終えて、食堂で山田社長の話を聞いていた。日本酒の楽しみ方、時間のかけ方でどのように変わっていくのかを丁寧に教えてもらい、皆のボルテージが上がっていく。そして幼稚園の関係の深い美香ちゃんのハタチの誕生日を祝うように、20年のビンテージ義侠が出された。
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社長自らが、ワイングラスに注いでくれ味見。
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昭和63年産の義侠は、色が琥珀。注いでいるだけで、トロトロさが伝わってきた。味は、古酒特有の紹興酒っぽさがあるが、その透明感に絶叫せずにはいられなかった。そして飲めば、呑むほど、味が舌をオブラートのように包み込んでいくのだ。
「時間と共にマリアージュしていくから」と笑顔の社長。
5分、10分、15分で完全に花が開いていく。呑むと、ぶるるっと震える味に目を細めていると、20分後から突然、味が落ちていく。
「そう、日本酒はワインと違って、花開くのが早いんだ。もう不味くなっているだろ?」
「まだまだ美味いですが、さっきよりは少し味が・・・」
「俺は日本で最も日本酒の古酒を研究してきたから分かるんだが、こんな風に味が落ちてきたら」と話しながら栓を締めた。「このまま6ケ月、蔵で管理しておくと、花開く前の最初から楽しめる。だから日本酒はワインよりも未来があるんだ!」
あの時の社長のキラキラな瞳は、今も決して忘れることのできない瞬間だ。
その山田社長の生前葬が、名古屋のキャッスルホテルで執り行われた。
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その時の模様は、イケメン息子の昌弘くんが記している。
https://www.facebook.com/masahiro.yamada.925
会場に義侠の新作のお酒が並ぶ中、拍手と共に山田社長が和装で登場。
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ステージ4の癌を患っておられるので、どれだけ痩せているかと心配したが、さすがカリスマ社長。顔はツヤツヤでお元気そうだ。
社長の闘病中、中学高校の同級生が亡くなった。通夜に出た時に、もう一度こいつと飲みたかったと想いを強くし、自分は生きている内に皆ともう一度顔を合わせ、酒を呑みたい!と生前葬を開くことにした。
北は北海道から南は九州まで、社長と関りのある人が200名ほど集まり、こだわり抜かれた生前葬が始まった。
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まず義侠のお酒は、磨きの違う2種。飲みやすい純吟と米の味がしっかりしたもの、どちらもスイスイと入ってしまう危険なお酒(笑)。食事は魚介、
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肉類、鮨、煮つけ、すきやきなどは勿論、
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酒のアテがずらりと並ぶ。塩辛や焼いたカラスミなんて涙が溢れるほど。
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その脇には、義侠のえにしをぬる燗にしてくれる場も設営されていた。
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ピアノ、チェロ、トランペットの演奏会は魂が籠り、弔辞では「来年、生前葬の一周忌をしましょう」と締められた。
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同じテーブルにいた方が言う。
「今日は生前葬という飲み会。ありゃぁ、まだ生きるぞ!。一周忌、二周忌って、それ死ぬ死ぬ詐欺だろ(笑)」
なんて素敵な縁(えにし)なんだろう。こんな事を愛情たっぷりに言い切れるんだから。
最後に社長が奥様に「今まで有難う」って照れながら花を渡すところ、泣いたなぁ。涙、涙で、肝心な場面がぼやけてしまった。
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社長、僕からのお願いが一つあります。
2年後、美香ちゃんの妹、美音ちゃんがハタチの誕生日を迎えます。ぜひ、社長に教えてもらいながら、20年もののビンテージ義侠で祝杯をあげたいです。その日を皆で迎えられるのを、心から楽しみにしています。ほろ酔い美食の生前葬、最高でした。お招き、どうも有難うございました。
            ノムラテツヤ拝
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