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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

人生のゾーン

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夢や憧れ、心の底からやりたいと願うこと。
それらは人の一生の中で、幾度も現れない。
X軸が心の熱量、Y軸が社会の需要。それらが人生という波の中でY=Xの線上に乗った時だけに見えてくる世界。もし、その夢の輪郭が見えてきたら、大切に、丁寧に、目をそらさぬように。すると、その夢の卵から幹が生え、枝葉が伸び、花が咲いていく。
大阪にお住まいのMさんから、Facebookのメッセンジャーにメールが突然届いた。初めまして、雑誌で林遣都さんが野村先生のお話をされてますね。
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と始まる文章には、おおまかに以下のようなことが書かれていた。
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中学生の息子が、友達や先生からのいじめに耐え兼ね転校したけれど、また同じことが起こり、親として注意すると、さらに人間不信に。警察や病院の医師など世話になった人に話しかけてもらっても一向に心に響かないのです。林さんは野村先生に巡り合えてよかった。本当に、素敵な大人になれましたね。今後も、先生のお話が聞ける機会を待っています。ご活躍をお祈りしています。と結ばれていた。
「ご縁」とは一体何だろう? 4年前、僕は南米チリの旅番組(チキュウノハテ)で、写真家兼ガイドとして現地へ入った。主役は林遣都。今は誰もが知る売れっ子俳優だけれど、テレビを全く見ない僕は、初対面だった。
20日ほど撮影は続き、毎夜、遣都は自分の部屋へ遊びにきた。彼の悩みを聞きながら、昔、自分が先輩方にしてもらったように、ひとつひとつ紐を解いていった。
悩みは、大抵の場合、当事者に見えにくいようになっている。それは体が緊張で硬くなることによって、脳が一方向しか考えられなくなってしまうから。だからこそ相談される側は、別の考え方や見方を提示してあげれば良い。
でも、と思う。
あの時の遣都は、ちょうどその言葉や想いを聞くのに、ベストなタイミングだったのだ。それも一日ではなく、何日も何日も語り合うことで、お互いの絆も強く深いものになっていった。
Mさんから添付で送られてきた、女性ファッション誌BAILA12月号(集英社)に遣都のインタビュー記事があった。
「今年はドラマ4本、映画4本に出演。「いろんな役をやりすぎて自分がわからなくなってきた」と語るほど、今は充実のときにいる。ただし、20代前半は思い悩むことが多かった。「人間関係でもお仕事でも、何をやってもうまくいかず苦しい時期が。でも4年前に旅番組のロケで南米のチリに行ったとき、写真家の野村哲也さんと出会ったんです。『目の前で起きていることはすべて自分を映した鏡。他人のせいにしたり誰かと比べたりするのはやめよう。そして常に大切な人の幸せを願って生きていれば、そんなに悪いことは起きないよ』と言ってくれて。俳優の前に人としてどうあるべきかを教えてもらえた経験は間違いなく転機になったし、自分を救ってくれた言葉でした。お芝居は生き方が表れるもの。生き方を変えればお芝居でもより深い表現が生み出せると思っています」
僕も心底惚れる人生の諸先輩方たちに、沢山の真心と言葉を授けてもらった。だからこそ、バトンを下の世代へ、ご縁のある方々へ返していくのが役目なのだと思う。
昨夜、ひょんな理由で帰宅した遣都と電話で話した。
「4年前に言っていたことが叶ってるな」
「はい、有難いことです」
「今、仕事が楽しいかい?」
「今までの人生で一番」
「そっか、それなら、ひとつ心に留めておいて」
「何ですか?」
「自分の夢に命を賭けて邁進すると、何処かでそれらが認められ、任される時期が訪れる。そしてやりたいものがやれる幸福な時間が現れる。その時にどれだけ一気に登って行けるかが、その後の人生を決めるんだ。そして大切なのは、無限に思えるその時期は、決して長くないということ。通常3年~5年くらいだと思う。遣都はおっさんずらぶや、今のリーガルVを始め、ようやくそのスタートラインに立った。だから、今まで以上に時間と自分の体を大切にしな」
「有難うございます。一流の現場へ行くと、やっぱり一流の方々がいらっしゃって。特に今は高橋英樹さんから社会のこと、人生のこと、歴史や役者の表現方法まで話を聞かせてもらうのが楽しくて」と声が弾んだ。
あの南米チリにいた遣都が、今の言葉を聞いたらどう思うだろう。何だか嬉しくて心が大きく揺れた。
「ゾーンに入る」
スポーツ用語では、そういうのかな?
一所懸命、自分の人生を歩んでいる人には、必ず「人生のゾーン」がやって来る。今まで以上に他の誘惑も多くなってくるだろうが、最後に力を持つのは、「やりたい、好きだ!」と思う強い自身の幹。それがあれば、最高のゾーンにして、その後の人生を更に大切にしていける。
人生は一瞬一瞬の積み重ね。そして体という乗り物を持っているからこそ、不自由さが付きまとう。でも、だからこそ、そこに生かしてもらうという美と輝きが生まれるのだ。
遣都、応援しているよ。そして大阪のMさん、息子さんと共にお目にかかるのを楽しみにしています。
              ノムラテツヤ拝
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

日本 | コメント:10 | トラックバック:0 |
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コメント

ステキなお話ありがとうございます。

おっさんずラブで、改めて俳優「林遣都」と出逢ったのですが、彼の過去出演作やインタビューを読んでいる中で野村さんの言葉にも出逢えたことは私にとっても幸運でした。

彼が大事にしている野村さんの言葉、
「今目の前に何か悩みや問題があるのだとしたら、自分が足りていないということ。周りのせいにしたり、悪口をいうのではなく、自分の鏡だと思いなさい。周りの人の幸せを祈っていれば大丈夫だから。」は、悩み多きアラサー女子の私にもすとんと落ちてきました。
モヤモヤしたり、人を羨むだけ羨んで、そん自分に嫌気がさしたり。
でも、単純なことで、自分の今の状況は、自分が作り出したもので、周りとは関係のないこと。大好きな人たちを羨むのではなく、幸せを喜び、祈っていればいいだけなのだとこうして気づくことができました。
まぁ、それをずっと素直に思えるかはまた別物なのですが、そこはこうして成長していく遣都くんを見ていれば、とても大事なことなんだとさらに思え、やはり2人に、今出逢えたことに感謝するのです。

長々となってしまいましたが、これからも応援しています!
ありがとうこざいました!
2018-11-28 Wed 00:03 | URL | ゆきこ [ 編集 ]
近所のオバチャンのように、ず~っと彼を見守ってきたファンのひとりです。実は…今の人気に内心ドキドキハラハラ💦

しかし…野村さんとの電話での会話を読み安心しました😊

まわりの人の幸せを願って生きる…私も見習わなくっちゃね。



2018-11-28 Wed 00:14 | URL | ケントの応援団 [ 編集 ]
こちらこそ、どうも有難うございます。
人が人を羨む時、相手の外側に嫉妬します。でも当人は自身の内面を
通して眺めているんですよね。相手の内側なんて分からないのに。
チリの夜、遣都はそこが腑に落ちたのだと思います。
            ノムラテツヤ拝
2018-11-28 Wed 05:08 | URL |  野村哲也 [ 編集 ]
遣都もドキドキ・ハラハラなのかもしれませんね。
でも、彼を愛するファンがいる限り、それが推進力になって
いくのでしょうね。感謝しております。
          ノムラテツヤ拝
2018-11-28 Wed 05:09 | URL |  野村哲也 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018-11-29 Thu 06:41 | | [ 編集 ]
野村哲也様 はじめまして。

雑誌のインタビューで、遣都くんが野村さんのことを話していたのを読んで、「野村さん、この雑誌見てくれてないかなぁ」って思っていたので、ブログを拝見して、泣きそうになりました。Mさんに感謝です。

先日ご縁があって、遣都くんのお芝居を近くで拝見させて頂ける機会がありました。
『俳優の前に人としてどうあるべきか』
遣都くんはこれを忠実に有言実行していました。
野村イズムをちゃんと後輩に繋いでいましたよ。

私事で恐縮ですが、一度諦めたことをもう一度やってみようと今、軌道修正しています。自分を見つめ直せたのは、一所懸命に自分と、お芝居と向き合ってる遣都くんのひたむきな姿を見たからです。その遣都くんを奮い立たせてくれて、今もなお彼に温かいエールを送り続けてくれている野村さんに感謝してもしきれません。

遣都くんへのエールを、自分へのエールだと思って頑張ってみようと思います。

これからもブログ楽しみにしています。
長文失礼しました。

追伸:昨日アップしてくださった箱根の紅葉の写真、息を呑む美しさで見とれてしまいました。スマホの待受画面にさせて頂きました!

2018-11-29 Thu 07:19 | URL | 佐都 [ 編集 ]
人は皆、短い一生の中で大したことは出来ません。でもひとつ大きなことが出来るとしたら、それは自分の頂いたものを繋ぐという作業なのかもしれません。遣都が後輩に繋いでいたとのこと。とても嬉しく思うと同時に、当然だと思います。皆様からそれだけの愛を受け取って成長しているのですから。
2018-11-29 Thu 09:53 | URL |  野村哲也 [ 編集 ]
大切なのは、相手ではなく自分自身がどう生きるかということ。周りもしかり。自分の幹がブレなければ、それが伝染していくものだと信じています。人生の勝ちも負けもありません。あるのはただ、在るという現実だけ。それをどう受け取るかは自分自身なのだと思います。
2018-11-29 Thu 09:54 | URL |  野村哲也 [ 編集 ]
野村先生、コメントは初ですが日々の更新を楽しませて頂いています。そして林遣都くんの俳優開眼を楽しむ者でもあります。

自然のなかに生きる者として、諦めと感謝を喚起させてくれる先生の作品に大変癒されています。
真実を切り取る写真は表現の一部を諦めることで一層テーマを惹き立たせます。同じように役者もそういう媒体のひとつなのかなと思わせてくれるのが林遣都君です。

12年前のシンデレラデビューはまだ林遣都という俳優のスタートではなかったと感じています。野村先生がおっしゃいますように今年がまさにスタート。林遣都くんがやりたい表現の赦されるゾーンに突入したことを一緒に祝わせていただきます。

野村先生がこの大阪の親子さんにどのように向き合うのかを空想しながら、今後の写真の更新を楽しませて頂きたいと思います。
2018-11-29 Thu 18:55 | URL | 松熊貴代 [ 編集 ]
諦めと感謝、深いテーマですね。捨てる、引くこと、と諦めは僕の中で同義語でないような気がします。
写真は撮るものでは無く、撮らせてもらうもの。自然がここぞという瞬間にシャッターを押してくれます。
それと同じように、出会いもあるものだと思っております。  ノムラテツヤ拝
2018-11-30 Fri 00:16 | URL |  野村哲也 [ 編集 ]

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