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写真家・野村哲也が贈る“地球の息吹”

日本酒の宝石箱

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昨日からの続きで、今日はGEM by motoさんのことを書こうかな。
店主の千葉麻里絵さんことマリリンは、日本酒のスペシャリスト。一口飲んだだけで、どのような成分が入っているのかが分かる絶対味覚の持ち主だ。
「まずはイメージで」と出されたのは、遣都にはウィスキーの樽につけた日本酒を、僕には風の森だった。
「奈良の銘酒ですね」
「ふふふ、遣都くんの言われる通り、詳しいですね」
「詳しいというよりも、ただ、ただ好きなんですよ」
一口飲むと、冷え切った液体から、酸味がぼんわりと広がった。んっ、違う。何故だ? 僕は今まで飲んだお酒の味は、イメージで置き換えているのでほぼ覚えているけれど、この風の森は、僕の飲んだ味と違う・・・。
「風の森って、こんなに酸味がありましたっけ?」
「これ、-5度で氷温冷蔵してるものなんです。だから甘みが無くなり」
「酸味がでる」
「そうなんです」
-5度で冷蔵している、これでこの店の凄さが分かる。もうすぐで凍るという手前まで冷やすことで、酵母の動きを止め、ゆっくり熟成させていくのだ。
愛知の銘酒義侠の山田社長から以前に教えてもらった方法を、酒蔵ではなくお店でやっているなんて。ハイコスト・ローリターンにならないのかしら?
お通しは真ハタのお刺身から。
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角がピンと立ち、店名(GEM)にもなっている宝石のような輝きが、内側から発光しているよう。味はもちろん深みがあり、オリーブオイルと塩が三位一体のマリアージュを奏でる。
次はこれで。
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初めてみるラベルに、不思議そうな顔をしていたのだろう。マリリンはすかさず、「これ、うちの店と仙禽さんのコラボなんです」。
仙禽とは栃木の酒蔵の名。
「いくつくらいとコラボされてるんですか?」
「え~と、10蔵くらいですかね?」
「コラボするには最低どれくらい仕入れないといけないんですか?」
「それぞれですが、3000本くらいです」
脳内に、バシバシと電流が流れるような衝撃だった。僕は南アフリカのとあるワイナリーを購入し、オーナーになろうと思っている。でも、莫大なお金がいるので、それらを工面するのに奔走しているが、自分の好きなワイナリーに足を運び、そことコラボで作れたら、なんて楽しいのだろう。世界中の愛すべきワイナリー20蔵に絞って、それらで勝負する。単純計算で20蔵×3000本だから、年に6万本。さばき切れなくはないな。そんなことを想い胸を躍らせていると、苺と春菊の白和えが出てきた。
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苺??? でも白和えと混ざると、苺の酸味が消え、それらがまあるい深みとなっていく。さすが「絶対味覚」と心がグイっと動かされた。
そして、ブルーチーズハムカツ。
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ブルーチーズもハムカツも大好物の僕は、唾を飲み込んだ。「それにこれを合わせて下さい」。赤トンボ柄の瓶から注がれたのは、ドロドロのどぶろくだった。
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「げっ、僕、岐阜出身なので、昔から美味しいどぶろくをたらふく飲んでいて。中でも特区の飛騨にどぶろくの神のような方がいて、そのどぶろくの味が忘れられないんです。でも亡くなってしまったんですけれど」
「そうなんですね。私もコレが今まで飲んだ一番のどぶろくなので、軽く野村さんの味を越えていきますよ」
ふふふ、こういう女性、好きですよ。
一口飲んでみると、コメのふくよかな甘みと酸味が絡まり・・・。
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「どうしました?」
「いや、もう一口」
やっぱり、ふくよかな甘みと酸味の後に、今まで感じたことのない苦みに包まれる。
「この苦みは一体なんですか?」
「えっ、凄い。野村さんで2人目です。この苦みに気付かれたのは。実はこれ特別なお米で作っているのですが、米麹に含まれる苦みなんです」
「飛騨のどぶろくとどちらがと言えば、悔しいですが、こちらですね。苦みもあるし、まだこの世に生きているわけですものね」
しっかりとこの生産者の情報を教えてもらい、今度行こうと決めた。
「ハムカツの後にこのどぶろくを呑んでもらえますか?」
勿体ない・・・。でもとハムカツの後に流し込むと、なんと口内はホワイトシチューになった。どういうことだ?
「日本酒の味は、香りが8割、味が2割なんです」
初めて聞く概念だった。香りが8割? でもだからこそどぶろくがシチューに変わるのが容易に想像できた。
次はイチジクガッコチーズ。
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イチジクの甘みとクリームチーズ、そしていぶりがっこ(沢庵)のコリンコリンの触感に笑ってしまった。なんだこの犯罪的なウマさは。
鯖味噌も気品のある味付けで、
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カモと揚げ菜の花の黄身酢味噌ソースは、ぬる燗にすこぶる合った。
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そしてこの夜、僕が一番感動した逸品が目の前に。
「アボカドの白味噌酒粕漬け」。
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アボカドのクリーミーなねっとり感と漬物の味が融合して、頭が痛くなる。快楽物質のエンドルフィンが出まくっている証拠だ。
これで終わってくれないのが、マリリン。更にオカラとサバ、エシャロットと天かすで巻いたサバ巻き。
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これに樽色の付いた琥珀色の日本酒にコショウが舞っている。
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「日本酒とコショウを合わせると、あるものになるんです」
「レモンティー」
「そうなんです」
まるで魔法だった。ラストは、好みを見透かされているように、ラム肉で〆。
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お会計を済ませ、外へ出ようとすると、マリリンが「遣都くん、書いてよ」と黒ペンを渡す。恥ずかしそうにしながらも、白い壁にサインを描き始めた。
「何か、コメントも」
サインの下に記された言葉。それが「日本酒を学びます。」だった。遣都の故郷・滋賀にも、萩の露を筆頭に美味しいお酒が沢山あるものね。ひとつひとつ、共に勉強を積み重ねていこうぜ。
GEM by moto(日本酒の宝石)。店名に負けしない圧倒的な迫力に満ちていた。マリリン、また遊びに行きますね~!
ノムラテツヤ拝
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コメント

日本酒が好きで、以前林遣都さんにプレゼントで日本酒を2回お贈りした事があります。
愛知県設楽郡の蓬莱泉「美」と、三重県の「風の宮」。
遣都君は一番の親友と飲んだと言ってくれて、嬉しかったですv

ただ遣都君、飲み過ぎて飛んじゃったらしく……(笑)
その彼が、こんな素敵なお店に大事な方と一緒に行く……感慨深いです。
遣都君が日本酒好きになってくれて嬉しいです。

私は最近は無濾過生原酒にハマって、飲み比べています。
後、山田錦以外の使用米の物を。(共に純米酒で)
その土地で生まれた米と水から作られる日本酒、素敵だと思う訳で。
野村さんはどんなこだわりがありますか?

まだまだ飲んだ事ないお酒があって、日本酒の魅力にとりつかれています。
このお店もいつか行ってみたいです。(名古屋在住なので泊まりでないと行けない)

素敵な記事、ありがとうございます!!
2019-02-26 Tue 23:15 | URL | 安倍 光明 [ 編集 ]

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